表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/65

3話 それはある意味運命の出会いでした

【クエスト】

 『サンマイト遺跡深層(地下50F)にある「ミュールの赤石」をゲットせよ!』


(攻略のヒント)

 「ミュールの赤石」の前には強力なボス、ワイバーンが立ちはだかる。炎耐性の装備は必須だろう。また40Fに続いて状態異常攻撃を仕掛けてくる敵も多いので要注意だ!

 




シエル「いや、無理ですってこれ!全然レベル足りてませんから!」



 サンマイト遺跡というのは割と序盤からお世話になるダンジョンだ。俺も何度も通ったことがある。遺跡自体は果てしなく下の階層まで続いているらしく、レベル=攻略出来る階層というのが今のところ知られている大体のバランスである。

 ちなみに今の俺のレベルは16。この前パーティー4人の力を合わせて何とか20Fのボスを倒して、みんなで画面越しに祝杯をあげたばかりだ。うん、50Fとか普通に考えて無理。

 そう言うGillyさんのレベルは……31。俺よりはやりこんでいるみたいだが、それでも全然足りない。ましてや戦闘能力の低いシーフでは。むしろよくここまで育てたものだ。



シエル「他にレベル高い方がパーティーにいらっしゃるんですか?」


Gilly「いや、俺一人。ちょうど単騎のソーサラーを探してたとこ」


シエル「どう考えてもクリアできる気がしないんですけど。遺跡50F制覇とか、掲示板で普通に自慢出来るレベルですよ?」


Gilly「まぁ聞けよ。まともにはクリアしないし、ワイバーンとやらと戦う必要もない」



 彼の戦略はこうだ。シーフの特殊スキル「戦闘回避」を駆使して、ミュールの赤石だけ取って帰る……というもの。なるほど、確かにクリア条件は「赤石の獲得」だから、無理してボスと戦う必要も無いということだ。彼はこの方法を駆使して既に40Fまでは単騎でクリアしたらしい。クエスト達成でボーナス経験値を獲得できるから、彼のレベルはそれで上がったものだろう。すげぇ、本当の話ならもはやプロの領域。ボス回避なんて誰が考え付くんだ。



シエル「それに何で私が必要なんですか?」


Gilly「流石に50Fともなってくると、戦闘回避だけではきつくてな。撹乱要因を探していたとこ」


シエル「撹乱、ですか」


Gilly「ああ、まだ稼働したてだからレベル50近い奴なんてほとんどいないし」


シエル「いないことはないでしょうけど」


Gilly「シーフは戦闘でははっきり言って足手まといにしかならないからな。パーティーに加えてくれる奴がいないんだよ」


 確かに、シーフは攻撃力低いし、他に戦闘に役に立つような能力は見つかっていない。レベル30まで上げた彼の言の限りではおそらく存在すらしないのだろう。初期の特殊能力『鍵開け』は一見魅力的だが、鍵のかかった宝箱はあまり見かけないし、入っている物も(序盤のダンジョンでは)そこまで大した代物ではない。

 なので掲示板でもボロクソに言われていたのだが……なるほど、単騎での低レベル攻略向けの職業だったのか。パイオニアマジパネェッす。


シエル「でも撹乱って……できますかね?」


Gilly「そのレベルだともう広範囲魔法(ファイヤウォール)は覚えてるだろ? だったら大丈夫。作戦はちゃんと練ってある。なぁに、失敗しても経験値がちょっと減るだけ。成功したら互いにガッポリだ。悪くない話だろ?」


 流石は盗賊。口も上手い。このゲームの序盤はパーティーを組んでないとほとんど死にゲーとまで言われるバランスだったため、いまさらクエスト失敗なんて気にもならないし。


シエル「わかりました。協力しましょう。今からでも行くんですか?」


Gilly「おう。助かったぜ! そんじゃ準備が出来たらすぐにでも遺跡の前に来てくれ。それとアイテム欄は可能な限り空けておいてくれよ。回復アイテムもいらないぞ。どうせ敵の攻撃くらったら即死だしな!」


 なんと物騒な。だが、これはこれで楽しくなってきたぞ。


 俺の頭の中で若かりし頃の記憶が蘇って来る。小さい頃はレベル上げとか面倒くさくて、とにかく無闇に突撃していたものだ。低レベルでのギリギリのボス戦。あれこそが本来のRPGの楽しみではなかったろうか。最近はちょっと詰まると攻略サイトに頼ったりして……今思えば本当に損してるよなぁ。先が見えない展開を開拓するのがゲームの楽しみだろうに。ネタバレされると面白さは半減、いやそれ以下だ。


 だからこそ、彼の話に乗ってみたくなったのだ。まだ日本中の誰もが知らない作戦。提案した本人も知らない成功率。少なくとも何度かは失敗しているみたいだし。これから二人で新しい遊びを開拓してくのだ。


 くぅ~ たまらない。男の子だねぇ!(アバターは幼女だけど) これぞRPG! これぞゲーム! アイテム整理をしながら俺のテンションはかなり上がっていた。

 

 ほんと一人暮らしで良かったと思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ