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30話 それがメリットだとでも?

 今日も今日とてゲームの世界。


 今回は運よく仲間と合流することなく、すぐさま宿屋へと向かう。酒場での中で目が覚めると言うのも変な感じだが。まぁいい、ラッキーくらいに思っておこう。

 Gillyさんとの待ち合わせは時間指定こそしていないが、おそらくこの世界基準での夜だろう。それまでに適当に時間を潰しておくか。この世界で出来ることといったら情報集め程度くらいだからな。


 日中はとにかくシエルを鍛えた。レベル上げには掲示板のメンバーも協力してくれたので、おかげさまで今のレベルは35。新しい魔法も欲しい所だが、結構限られてくるしなぁ。反発する属性の魔法を覚えるとやや威力が落ちるという点も難しい。今度にぃにぃさんに相談してみるか。

 

 そしてレベルが30に達していないメンバーたちには、近々運営から低レベルのプレイヤーの救護策として、何か特典を付けるみたいだと嘘を言っておいた。本当に適当な嘘だが、これ以上にいい案が思い浮かばない。赤の他人にゲームを止めさせるって中々難しい。

 もしもこっちの世界に来てしまったら……その時はその時だ。ちゃんとしたコミュニティも出来ているので、彼らなら事情を説明すれば大人しくしてくれるだろう。

 

 で、だ。

 

 今日はやることはやったのだ。やれるだけのことはやったのだ。後はGillyさんと会うことぐらいだろうか。しかも昨日俺が付け回されていたとなると、下手に外を出歩くのもあまりよくない。昼間はじっと部屋に籠ってくのが得策だ。どうせこの世界での行動は反映されないんだし、間違ってはいないはず。

 うん、暇潰しなら何をやっても構わないさ。人に迷惑かかるわけでも無し。




 ……と、いうわけで、今からシエルちゃんの体を存分に堪能したいと思います。うへへへへへ。


 当然の権利だ。G行為限定だというのが悔やまれるが。

 出来ることなら俺がシエルとやりたいわ。


 この容姿ならこっちの世界の人間もメロメロ、寧ろブヒブヒだろうが、もちろん男とやるのはNG。可憐な少女の純潔は死守が基本。

 さて、如何にしてこの穢れを知らぬ少女の肉体を、ひぃひぃあへあへ言わせてやろうか。言うのは自分だけど。そう思うとなんか悲しい。

 でも折角じゃないか!まず始めはやっぱ風呂だよな!御丁寧に個室にはシャワーまで付いていやがるぜ。こいつを利用しない手は無い。それに案の定残っていた謎アイテムもあるしな。「龍のあばら骨」を使って何か独創的なプレイは出来ないものか。

 ……いや、待てよ。前が駄目でも後ろはありかもしれん。自らの純潔を必死に守り続けつつも(中略)何とも儚い乙女。いいね、何とも燃えるし萌えるシチュエーションだ。俺が童貞ってことには変わりないのだが。……あぁ、駄目だ駄目だ。こんな自虐的になっては。やるんだったらひと思いにやるしかない!


 いざ行かん! まだ見知らぬ夢の桃源郷の地へ!






(少女18禁行為中……)






 夢の中で夢心地のような一時を過ごし、俺は出かける準備を整えていた。現実世界で夢精していないことを祈る。しっかし、女の子の感じ方って男とは大分違うんだなぁ。始めの方はかなり違和感を覚えた。脳のつくり云々とは聞くが、肉体転移というのがこんなに刺激的なものであったとは。そりゃAVとかエロゲにもなるのがわかる。体にもまだ余韻が残っているし。顔は未だににやけているんだろうが、この体だとそれすらも可愛い。


 さて、キモいことはこのくらいにして。そろそろ真面目モードに切り替えよう。装備は皮の帽子に短刀っと、あとは伊達眼鏡。ソーサラー用の装備をほとんど外し、変装は完璧なはずだ。外からではとてもソーサラーには見えないはず。うし、行くか。


 夜の町を少女が一人行く。襲って来そうな奴がいたら、速攻でラピッドを叩きこもう。ウィザードロッドが無くても殺傷力がある物は一応撃てる。

 俺は人通りの多い道を選んで歩いた。途中でパーティーの仲間とも会ったが、誰一人として俺に気づかない。変装の効果は抜群のようだ。さらに人混みの多い道を歩くことで更に人を巻くという寸法だ。途中で防具屋に入り服と帽子をさらに着替える。頭にバンダナを巻き傍から見ると女シーフの様にも見えるな。念を押しに押して通常の3倍の道のりを通り、俺は武器屋「アニムス」の裏手へ。もちろん一ヶ所に留まらず、ぐるぐる動き回る。



「今日は随分念を押したようだな」


 思わぬ方向から声がかかる。つーかよりにもよって上からかよ。

 眼前にふわりと人が飛び下りて来る。


「今日はつけられて……ないですかね?」


「大丈夫のようだ」


 Gillyさんはいつもの格好だった。本職だけに見つからない自身はあるのだろう。建物の上を跳び乗って行くとか、テンプレ通りの怪盗だ。


「今日のニュースは見たか?」


「有名人や政界の大物がガンガン死にまくっているという奴ですか……」


 Gillyさんは軽く頷く。


「で、この状況を見て……俺が昨日教えようとしたことは分かるな?」


「はい、もう大体予想ついてます」


 あまりにも不自然すぎる『病死』の多発。それにこの世界の疑問を重ねれば自ずと答えが浮かび上がって来る。


「精神が取り込まれた俺達だけじゃなくて、ゲームプレイヤーで無い人はそのままの姿でこちらに……何て言うか投影っていうんですかね? コピーが送られているというか……そしてここの世界の人達と現実世界の人達の命は繋がっている……」


「ん、まぁ、大体そんな所だな。俺達はこの世界に来てから死ぬリスクだけではなく、人を違う世界から殺せるというとんでもない力まで持たされたみたいだ」


 Gillyさんは両手を上げて肩をすくめて見せる。


 彼は軽く鼻で笑っているが、この世界の事を知れば知るほど危険な事態になっていることがわかる。こっちではモンスターとやり合える剣技とか…… 広範囲を焼き尽くす魔法とか……とにかく人なんて簡単に殺せるんだ。これじゃあ完全犯罪を大安売りしているようなもんじゃないか。



「さて、どうする? こっちの世界からならムカツク野郎も殺したい放題だ。汚職まみれの政治家、悪徳業者、暴力団、生活保護ニート……世の中のウジなんて腐るほどいる。現実では一億人のうちの一票の選挙権しか持たない人間でも、幾分か世の中を変えることが出来る、な」


「……やるつもりですか?」


「お前はどうかと聞いている」


「やりませんよ……何の罪も無い人を巻き込まないとは限らない…」



 こちらの世界に持ち込めるのは現実の記憶だけだ、メモ一つ持ち込むことが出来ない。世の中の悪人どもの顔と名前が全部割れているわけじゃないし、そしてそれを全て正確に記憶し殺害できるとも思えない。そっくりさんだったら洒落にならんしな。


「それに……この状況が『人』によって持たされたものなら尚更です」


「慎重なのか臆病なのか……どちらにせよちゃんと頭は回っているようだな。まずは、そこの大本を何とかしないと行動は出来ない」


 どうやらGillyさんは俺と同感みたいだ。悪い反応には感じられない。


「じゃあ、問題はどれだけの人間がこの事実を知っていたかだ」


「みんなも薄々勘付いていたかもしれませんが、おそらく今日のニュースを見て確信してるでしょうね」


「そうだな。だが、考慮すべきはそのことを人に教える前にあんな粛清めいたことをやってのける奴がいる、ということだ。俺みたいに実験的に一人殺るくらいならともかくな」


 おいおい。


「誰か殺したんですか!?」


「ああ、外国人団体からの違法献金疑惑のある議員……疑惑っつってもほとんどクロだがな。あまりにも特徴のある顔だったんで、サクッと」


 Gillyさんは自分の首を切るようなジェスチャーをする。


「本当はそいつが死んだニュースを見せてお前にこのことを伝えようと考えていたんだが、思いのほか同業者がいたようで」


 まさか大臣含め50人以上も殺されるとは思わなかった、というわけか。これじゃあ議員一人死んだところで全く驚かない。しかし、相手が悪人(?)とはいえよく平然と殺せたものだ。


「で、だ。そこまで解かっているのを前提にしての忠告。お前や俺が何もしなくても、誰かがこの世界を利用して殺人を犯すだろう」


「悪人を狙って殺している辺り、本人はよかれと思ってやってるんでしょうけど」


 本当に死のノートの世界だなこりゃ。


「それにこれは俺の勘だが、一昨日の総理大臣を殺した奴が昨日になって大量に殺人をやったんだと思う」


「同一犯……? どうしてそう思うんです?」


「都合良く条件にあった人間を一晩であれだけ殺れるなんて、この世界の仕組みを理解してないと無理な話だろう。俺が昨日殺した議員だって、歩いていてたまたま出会っただけだ。一人殺って確信し、翌日に計画的な犯行を行った、と考えるのが結構自然なところだがな。もちろん労力的に一人とは限らない、寧ろ複数でやった可能性が高い」


 仮説ではあるんだろうが、この人が言うと説得力あるんだよな。


 しかし訳の解からない力を使って殺人だなんて…… これは人の考え方にもよるのかね。


「あの、それじゃあ忠告というのは?」


「ああ、この調子だと殺人はしばらく続くだろう。警察も捜査のしようがないしな。だから少なくとも殺されるのが悪人だけであるうちは…… 黙認しておけ。くれぐれも止めさせようなんて考えは起こさない方がいい」


「対象がヤクザとか悪徳政治家なら無理に止めるつもりはありません。でも無関係な人が殺されるのも黙って見ているのは……」


 彼の言いたいことは解かる。俺だって相手が滅茶苦茶強かったら、自分の命欲しさに黙って逃げるかもしれない。ここは、まぁ、自分の中に僅かに残された正義感というか。犯人の良識を信じて、そうならならないことを願うしかない。


「……モラルや信条なんて、一度、(たが)が外れれば案外脆いものさ。もしも無関係な奴を殺すことに慣れてしまったら、いや自分の中で正当化させちまったら、こっちでも何か対策をとるしかない」


 自分の顔にリアルに冷や汗が流れるのを感じた。

 初めての体験だった。こんなに冷たいもんなんだ。

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