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21話 どこまで知ってるんですか?

「……で、シエル。お前はどこまで掴んでいる?」


 先に尋ねて来たのはGillyさんであった。俺は今知っている、少なくともおおよその確証が得られている事柄を彼に話した。



①ゲームの中の世界は夢幻(ゆめまぼろし)……なのかもしれないが確実に存在し、自分達が何らかの原因で連れて来られ自分の作ったキャラクターと同化している。だが、全ての人がそうではないっぽい。


②この中に入るのは寝ている時?昼寝とかでも入れるのかは解からない。


③このゲームの中で怪我を負っても、現実世界には持ちこさない。だが、死ぬとどうなるかは解からない。


④現実世界で目覚めると解放される?


⑤おそらくこのゲームが原因で現実に死んでいる人がいる。



「こんなところですかね……まだ確証が得られてないことばかりですが……」 


「このゲームが原因で現実に人が死んでいる、というのはどうしてそう思った?」


 俺は友人の伊藤の事について話した。年齢20にも満たないのに、朝眠ったまま脳梗塞で死んでいたこと。彼が死んだ日に、市内で似たような死に方をした人達(それも若者)が2人もいること。そして、彼と組んでいた人たちが前日にこの現象の存在をほのめかすようなことを尋ねて来たこと……など。この夢の内容といい、単なる偶然とは思えなかったのだ。


「なるほど……で?こうなったのは何回目だ?いつからお前もこんな風になった?」


「2回目です。1度目は単なる夢だと思っていたんですけど……流石に同じ夢を、記憶をそのまま引きついでってことになっちゃ……」


「と、いうことは昨日……月曜の夜に初めて入り、そして今、火曜日の夜に2回目のトリップ……ってわけか?」


「はい、そうです」


 Gillyさんは軽く腕組みをして「ふむ」と考え込む。


「今のが何か?」


「俺がここに来たのはこれで3度目なんだ。つまりは日曜の夜からだな。そして俺が調べた限りでは、この現象は日曜の夜から始まっている。お前はその時は何も無かったんだよな?」


「……はい」


 と、いうことは、昨日のサイトさんの発言もつじつまが合うな。この現象が日曜から始まったと言うのなら、彼らや伊藤もその日の晩に同じ夢を見て……翌日心配になって俺に尋ねて来たということだ。ゲームの世界に入ったなんて話、普通信用しないしな。


「となると、何で俺は日曜日はトリップしなかったかって話になりますね」


「シエル……お前男か?」


「あ?え、いや、その。中身は……そうです」


「……まぁ、そんなことはどうでもいい。とにかく、お前の話で大体の仮説は出来た」


 あーあ、つい『俺』なんて一人称使ってしまった。長年の癖を直すのはやっぱ無理ですよ。性別的にも。いやいや、今はそんなことよりもGillyさんの仮説とやらだ。


「今の時点で俺が集めた情報をふまえて、まず1つ。どうやらこの世界で死ぬと現実世界でも死ぬらしい。絶対、とは言えないがほぼ9割がたな」


「マジっすか……」


「他に取りこまれたらしい奴らの話も盗み聞きしての結論だ。1日目にこの世界に取り込まれモンスターに殺された奴が、翌日からログインもしなくなったらしい。もちろん、この世界にも存在しなくなっている。おまけに月曜の朝から火曜にかけて脳梗塞による若者の死者が続出している。不自然なくらいにな」


 確かにそれは絶対……とは言えないが真実味を帯びている。というか他の所でも若い人が脳梗塞で死にまくっている時点でほぼ限りなくクロに近いんじゃないのか。


「マスコミや警察は取り上げたりしないんですか?」


「事件性はないからな。地区も全国的に広がっているし、どれもこれも朝眠ったまま……まぁ現代人の不養生に対して注意喚起をする程度に留まるくらいだろう」


 だよな。

 朝眠ったまま死ぬ、眠ってから死ぬということによって、死者の共通点がこのゲームのプレイヤーだと気づいてくれる可能性も期待できないし……


「2つ目。この世界に取りこまれるには何らかの条件があるみたいだ」


「条件、ですか。ランダムって可能性は?」


「それも否定できない。だが、今まで俺が見た同じ境遇の奴らにはいくつか共通点がある。……シエル、お前はこのゲームを始めて何日だ?それと今のレベルは?」


「11日目……ですね。レベルは30です」


「お前の友人の伊藤って奴は?」


「詳しい日数は解かりませんけど、始めたのは俺より遅かったはず……プレイ時間は俺より長いと思いますけど。カウントされてないので何とも。レベルは最後、日曜日が終わった時点で見た時は35でした」


「……ここに取り込まれているのは全員高レベルのプレイヤーだ。俺が見た分では、レベルは今のところお前が最低だな。少なくとも30以上」


「れ、レベルですか?」


「プレイ時間の線も疑ったんだが、調べた限りではどうも違うみたいだ」


 待てよ、たしか日曜日の時点では俺はレベル29。しかし、月曜日には30に上がった。なるほど、これだとぴったりだ。それだったらレベル30未満の俺の他の仲間が取り込まれていないことにも合点がいく。

 YASUさんもプレイ時間は俺より長いと思うし、レベルという線はかなり濃厚だ。


「ってことはレベルが低いと、こっちには連れて来られない。死ぬ危険性が無いってことなんですか?」


「これも確証は無いがな。だが、もしレベルの低い奴までこっちに来ていたらもっと派手に死人が出ているだろうよ」


 このゲームのプレイヤー人数はおよそ3万人ちょい……難易度はかなり高いし、全滅した経験の無いプレイヤーはまずいないだろう。ってことは、下手したらかなりの大惨事になるんじゃないかこれ!?



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