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14話 一体何が起こったのやら

「……さん。…エル…さん!」


 ……ん。若い男の声。 誰だ? 聞いたことのない声だし。

 おう、体が何か揺さぶられている。それに頬のあたりにひんやりとした感触。

 何だ俺、いつのまにか机の上で寝ていたのか?


「シエルさん! 起きてくださいよ!」


 ぼんやりとした視界の向こうには3人の人影。

 ……ってあれ? ここ俺の部屋じゃないの?

 


「あ……!? え……!? えぇっ!?」


「どうしたんですか? シエルさん。まだ寝ぼけてるんですか?」


 目の前には銀色の甲冑に身を包んだ若い男。誰……? いや、見たことがある。


「あの……YASU……さん?」


「はい、どうしました?」


 男は軽く笑いをこらえながらこちらを見ている。

 ……っていうか何でYASUさんのキャラが目の前にいるんだよ!?

 いやいや待て、ということは……?


 右手には犬の顔にふさふさの体毛の剣士。左手には法衣に身を包んだ男。


「Pon太さんに……まるちーさん?」


「はいはい」


「どうしちゃったんですか? シエルさん?」


 え……あ……な、何が何だか分からない。どうなってるんだ……?

 おい、もしかして今の俺って。


「シエルさん。帽子踏んづけちゃってるよ」


「大丈夫ですか? これから晶霊の洞窟に向かうってうのに。顔でも洗ってきたら?」


「そ、そうします……」


 足元にずり落ちていたのは魔導士の三角帽子。地面に立ってみて解かるが視点が妙に低い。むしろ、さっきから俺の声が違う。完全に女の子の声だ。



 もしかして今の俺って…… シエルになっているのか!?



 何だよこの悪い夢は…… と、とにかくまずは顔を…… トイレどこだ…… 寧ろここどこだ……

 あーいや、見たことあるぞ。店の内装といい、このテーブルの配置といい、あの筋肉モリモリマッチョマンのアッチ系のマスターといい…… 良く来たことがある。

 ここはモナドの酒場だ。ってことはゲームの世界? 何この使い古された展開!?


「ちょっとお嬢ちゃん、そっちは男子トイレよ」


「!? す、すみません……」



 バタン。


 トイレの中は外界と完全に隔絶されたパーソナルスペース。ここで頭の中を整理しよう。

 そう言えばゲームの中ではトイレの中とは入れなかったっけ。なんかここだけ妙に現代的なんだな、水洗式だし。普通に水道あるし。


 ……うん、鏡を見て確信した。今の俺は完全にシエルだ。

 こうして見るとやっぱり可愛いな。

 


 お兄さま~ だーいすき! にゃんにゃん。キラッ☆


 

 ……やっとる場合か。

 とにかく一体何なんだこれは。いつの間にか俺がシエルと同化している。これは夢なのか? とりあえず顔に冷水をぶっかけてやろう。


 バシャバシャ……


変化なし。



 頬を思いっきりつねってやろう。


 ぷにぷに、ふにふに。


 幼女の頬ってこんなに柔らかいんだ~ 現実でやったら間違いなく捕まるけどな。



「じゃねぇぇぇぇーーっ!!?」



 覚めないぞ、全然夢から覚めないぞ! 下! 下はどうなってる!?


 ……ああ~ 男の勲章が綺麗さっぱり無くなっております。つんつるてんだ! うわー これが女の子の割れ目? すっげー こうなってんだ。ココにアレが入るんだ! へー!

 

 すっかりR-18な気分を満喫していた俺はドアのノックの音で我に帰る。


「お嬢ちゃん? 随分長いけど大丈夫?」


「あ、はい。大丈夫です!」


 いかんいかんいかんいかんいかん。夢だからって遊んでる場合じゃない。いやでも、覚めない夢は夢じゃないわけで…… 単に俺がゲームの世界にトリップしたと考えればそれで説明が付くわけで……


「付いてない! 全然付いてない!!」


 よし、ノリ突っ込み完了。私は冷静だ。とりあえずこれだけやって夢から覚めないんならどうしようもない。もう少しこの状況に身を任せるとしよう。


「シエルさん、もう目は覚めましたか?」


「あ、はい。もう大丈夫です。お騒がせしました」


 いや、覚めてないんですけどね。とりあえずはあなた達に付いて行きます。

 

 俺達4人は酒場を出る。外は思っていた通りゲームの中そのものの風景が広がっていた。ヨーロッパの古い町並みを思わせるレンガ造りの家。車一つ通っていないだだっ広い通り。馬車や馬は通っているけど。そして、皆思い思いの装備に身を包んだ冒険者たち。

 

 これは…… とんでもないことになっちゃったぞ。


 夢で終わって…… くれないのかな。

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