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残念系就活生★★☆(星2つ半)

作者: 瀬田一
掲載日:2026/02/27

 就職試験が始まった。大学生の大半が通るあの儀式だ。内定を獲得するために繰り広げられる血で血を洗う就活戦争だが、私は目的が違った。金だ。私の通う大学では合格すると報奨金がもらえる試験がある。私と友人は「行くっきゃない!」と試験を受けた。


 筆記試験と論文試験を受け、迎えた面接。


 待合室には就活生がひしめき合い緊張感が漂う。


 受験番号ごとに座席が決められており、私は1番後ろだった。つまり主人公ポジションだ。漫画やアニメでは背景の描写が少なくなるように主人公は1番後ろの席になることが多い。合格に近づいた気がして幸先のいいスタートを切ったのだが、試験官は残酷な真実を告げた。


「面接は前の席の人から始めます」


 前には10数人の学生。面接時間は1人20分から30分。朝早くに家を出て満員電車で潰されながら来たのに、待ち時間という虚無に放り込まれた。面接が始まる前に心を落ち着ける時間は必要だが、数時間待たされるのは落ち着くどころか緊張感がきれいさっぱりなくなる。


 どうしようもなく手持ち無沙汰になったので、寝た。


 面接官よ、見ているか。多くの学生が面接対策の本やノートとにらめっこしている中、私は夢の中だ。こんな胆力のある人間を見逃すべきではない。


 30分ほどで目が覚めて、まだまだ暇。スマホの使用は禁止されていたから僕は本を取り出した。


『僕は友達が少ない』


 カバーをかけずタイトルをさらしているから自己紹介もできている。


 ちなみに友達が「少ない」のであって「いない」わけではない。読者諸兄と同じにしてほしくない。


 刻々と時間は過ぎていき、ついに私のターンが回ってきた。


 面接室は待合室とは別の階にあり、1人が面接を受けている間、1人が面接室の外にあるイスで待つ。


 私の前の人の面接が終わり、部屋から出てくるところ凝視する。面接官の顔や人数が気になる。しかし、面接室は2重扉になっており、扉を開けると小さな空間があってまた扉がある構造だった。「よし、1個目の扉をノックしても反応がなくて恥をかくぞ」と心の中で注意喚起をして面接に臨む。


 1つ目の扉を開け、2つ目の扉の前に立ち、


 まずはノックからはじめていきましょう。失礼します!


 コンココンコンココンコンコン~♪


「どうぞー」


 面接官の間延びした声を受け、ドアノブに手をかける。


 が、開かない。びくともしない。


 扉は「どうぞー」と言ってくれない。


 ガチャガチャガチャ、ドアノブをどんなに捻っても、押しても引いても押し倒しても動かない。まさか、試しの門なのか? ここはいつからゾルディック家になったんだ?


 手汗で扉が湿っていき、私の視界もドアノブ一点に集中し、とにかく開けようと必死になっていたところで、もう1つの扉から面接官のおじさんが現れた。


「大丈夫ですか?」


と声をかけたおじさんは必死に別の部屋の扉を開けようとしている滑稽な私の姿を見た。


 実はこの面接室、1つ目の扉を開けた小さな空間には2つの扉があり、私は面接と関係ない鍵のかかった部屋のドアノブをずっと開けようとしていたのである。


「あ、そっちだったんですね。全然気づかなかったです~笑」


 全身が沸騰しそうなくらいに熱くなった。


 うわづった声と苦笑いの私の対応を受けて面接官は何事もなかったかのように仕切り直した。


「では、入室から始めます」


 これまでの試験勉強、長時間の移動、退屈な待ち時間を乗り越えたことがどうでもよくなるくらい羞恥心が頭を占めていたので、退室させてほしかった。帰りたくなった。


 面接のトラブルって始まる前じゃなくて面接中に変な質問を受けたり、緊張して変な答えをしちゃったりするもんじゃないの?


 波乱に見舞われた入室だが、面接自体はつつがなく終了した。志望動機やガクチカなどの本格的な質問が始まる前の質問、アイスブレイクでは当然のように、入室態度をいじられた。


 結果については控えるが、お金はコアラとカンガルーの餌になった。

皆さんの就活の失敗や面白エピソードを教えてください。

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