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「それでいいじゃん」
「いや! これはない!」
三号の言葉をすぐさま否定する。一号は冷ややかな視線を向けてくるが、なにも言わない。
「もっとましなのないのか……?」
思い浮かべても違うものが出てくるとはどうなっているんだこれ。とりあえず別のものを思い浮かべていく。頭は軽くなったが、今度は首元が暑苦しくなった。
「な、なんでマフラー?」
これを頭に巻けとでも?
しかもすごい長い。なんだこれ。
「おー! なんか四号かっこいいよ!」
「いや、邪魔だってこれ」
「口元それで隠せばいいんじゃない?」
「せめて一号と同じような……サングラスじゃ隠れないな、この髪……」
もういいかこれで。マスクが出てきても微妙だし。顔をうずめるように、マフラーを巻きなおす。しかしすごいなこれ。変身、と言うには確かにその通りだ。
「能力とか言ってたけど、それってどうやったらわかるんだ?」
「虚獣と戦えばなんとなくわかる」
……一号に訊くんじゃなかった……。なんでそう、実践派なんだよこの人は。
「わたしに追いつけなくても、三号についていけばいい」
置いていく気満々じゃないか、このリーダー……初心者にやさしくない。二号と三号はよくやっているほうだ。
「一号は速すぎるんだよ。って、もういない!」
忽然と姿を消している一号に、三号がキーッと声をあげていた。その気持ちはよくわかる。
「よし、行こう四号!」
「え、っと……普通に走ればいい感じ?」
「そうそう。一号は速すぎるから、追いつこうとしたらダメだよ。無理したら完全にこっちが潰れるから」
確かにここまであっという間だった。どうなっているんだ、あの女は。
「ナナサン、案内よろしくね! 行くよ、四号!」
初陣に不安しかない。ナナサンが残っていたのはやはり理由があったか……。彼は空中に浮かび上がる。同時に三号が地面を蹴った。え、ちょ、ちょっと!
慌ててこちらも地面から跳躍する。ひっ、な、なんでこんなすごい跳べる……バランスとるのが難しい!
ぐるんと視界が回った。その自分の手を、ナナサンが引っ張る。うわあ、いきなり迷惑かけてる……。というか、三号の姿がない。ナナサンがぐいっと強く引いた。途端、景色が急激に変わる。う、あ、これ、よ、酔う!
片手で口元をおさえて、空中を必死に蹴った。速度がどんどんあがっていく。ひえぇ、元の姿だったら風圧でおかしくなっていそうだ。そもそも人間は浮くようにできていない。自分は悪くない。絶対に悪くない。
こうして沖田悠一の初めての戦闘は、移動酔いによってズタボロな結果となることを……この時のオレはまだ知らない。




