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「あまりあいつにこの世界に興味を持たせるな。難しいかもしれないが、それはあの見た目のせいだ。線引きをしておけ」
「なんでそこまで……」
「あいつの話をある程度真実とするなら、虚人に成りえるからだ」
俺はびくりとした。やっぱり一号は知っていたのか。よくわからなかったあの話を、理解してるってこと……だよな。
「キョジンってなに? 虚獣とは違うの?」
五号が戸惑いの声をあげる。それはそうだ。見回せば、みんな不安そうな顔をしている。
「……わたしが予想しているというか、あいつのわけのわからない話を総合的にまとめたものになるが……ナナサンは今は人畜無害に見える」
ん? わからないの? え?
「あいつは猫とまたたびの化身らしい」
えぇ!
俺を含めて全員驚きすぎて止まってるじゃん! 一号、口下手だとは思ってたけどさぁ……。絶対にみんな、狐とかが化けてるとか思ってるんじゃないか? 妖怪みたいな表現するとかどうなの。
「何度か殴ってみたが、どう見ても人間の外見だ」
おいおい! この人やっぱ無茶苦茶してるじゃん! 暴力反対!
「出会った頃はもっと人間みたいな反応をしていた。だが今は、なんというか……ぼやっとしてる。
本人は意識とか意志とかが希薄になっていると言っていた。その代わり、こちらの世界のことをやたら訊いてくるようになった。しつこいから殴って聞き出したんだが、一時的なものだと言っていたが、その時に虚人の話も聞いた」
殴り過ぎだと思うんだけど……誰もツッコミ入れない……命は惜しいしね。わかる。
「意識が薄まってくると、濃くしようと勝手にそういう行動に出るらしい。あいつは大丈夫だと言い切ったが、それが信用できるかどうかは別の話だ。絶対に大丈夫なんてことは、ない。
この世界に興味を持てば持つほど、この世界に居ようと執着するはずだ。そういう、なんというか、強い感情に揺さぶられるとか言っていた。そういうものが、魅力的で……空腹なところで目の前に食事を出されたようなものなんじゃないか」
???
「そうだな。それがしっくりくる。あいつは腹ペコで、食事をしようとしてる。だが、わたしたちはそれを阻止してあいつを餓死させる」
なにを納得顔してるんだよ! めっちゃ怖いこと言ってるって自覚してくれよ!
「猫とまたたびを食べただけでは満足できないし、消化するから、別の食べものに手を出す。どんどんエスカレートしていき、満腹状態になったやつが虚人だ」
…………え? ちょ、え? 全然わからないんだけど!
「え、と……つまり、質素な野菜サラダからどんどん食事のグレードをあげるってこと?」
四号が必死に考えてる!
「で、えーっと、結局その虚人ってどういうもの? 満腹ってことは、食べるってことだよな?」
「味が濃いものに手を出すということだ。この場合は、感情、ということだったが……複雑で強い感情を持つのは」
一号がこちらに視線を戻した。
「『人間』だ」




