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五話 異変


 さてと。今日もダンジョン探索に勤しむか。昨日はそのまま帰って遊んでたけど、いつまでもこうしているわけにはいかない。


 メムからもらったのが、五万ゴールドで、そして鎧類で使ったのが一万ゴールド。昨日稼いだのが三千ゴールド。


 昨日色々物価について聞いたが、おおむね元の世界と同様の物価らしく、外食すれば、一千ゴールドか、かからない程度ということだった。さらに、まともな宿に泊まろうとすれば一泊一万ゴールドはするだろうと。


 昨日は結構稼いだと思ってたが、バイトよりも稼いでいなかったわけだったか。失敗した。


 それに、ここの衛生基準は向こうより結構低いだろうから、わたしの要求する水準のものは元の世界でいうスイートホテル並みの可能性すらある。そうなると、もうここから石油王を目指すしかない。


 今は上海の好意でギルドの寮を借りているものの、数日間と言われているのだから、そこまで長居することはできないだろう。それに、実は戦闘ができるとわかった今、すぐに追い出されても不思議ではない。ということで、一刻も早く、まとまった貯金を集める必要があるということだ。


 目標金額は、仮定宿費一万+三食食費三千の一万三千ゴールドを一ヶ月分。つまり、一ヶ月なにもせず過ごせる量の、一万三千掛ける三十で、三万九千。日々の消費に加えて、三十九体の魚人を狩らなければいけないということだ。


 もちろん、別の魔物を倒した方が割がいいならそっちに変えるというのも視野に入れるべきだが、昨日の感じでいうと一日十三体というのもまあ不可能ではないかもと思ったためだ。


 というわけで。今日もダンジョンに潜る。では行こう!








《 ハフリ ユメ のレベルアップを確認しました。》


《 スキル【剣術】のレベルアップを確認しました。》

 


ハフリ ユメ

職業【神巫】

Lv:3→5

HP60/60 →70

MP60/60 →70

筋力:60 →70

魔力:60 →70

速度:60 →70

防御:60 →70

抵抗:60 →70

【スキル】

:【剣術】Lv.2→3【経験値アップ】Lv.1

 

 

 お、レベルアップ。それも二つ。


 振り返って見ると、わたしは相当レベルが上がりやすいようだ。それに、スキルのレベルも。


 噂で聞くところによると、一般的な冒険者は、毎日のように潜って、数ヶ月もかけて一上がるかどうか、という感じらしい。わたしはもう五レベルになっちゃったよ。まあ、この【経験値アップ】のおかげなのかな。

 

 ここまでで、ダンジョンに入ってからまず五体ほど屠った。ステータスの上昇と、慣れとで、もう魚人は群でもなんとかなるようになった。ただ、このダンジョン魚人がなかなかいなくて、探し回らないと行けなかったため、五体しか倒せない。昨日もそうだったけど、五体を倒すのにかかった実時間は大したことはないのに、その道中に三時間以上かかっている。


 完全な未経験者を含め、大量の人がダンジョンに入っていると聞くので、入り口近くの魚人はかなり減っているのかもしれない。

 

 ずっと歩き回って、たまーにいる魚人だけを討伐するとか、実力のある冒険者の人はやってらんないよな。どうしているんだろうか?


 そう考えていると、昼食用に用意した時計が12時を示している。休憩に入るか。





 適当に見かけた岩場に腰掛けて、昼食を摂る。


 ギルド近くのパン屋に売っていた、ただの肉サンド。


 かじると味がしない。ちゃんと肉まで食っているが、肉の味もあんまり……。ギルドの食堂もだが、ここの料理って味がしないんだよな。地味にこれも死活問題だ。最悪は自分で作るか……?


 自慢ではないが、わたしは家と学校で、「家庭科室の絶望」と呼ばれるほど、料理の腕前で鳴らしている。その腕を発揮する時がついにきたのか。


 ……来ないことを祈る。




 

 食べ終わって、バスケットをしまう。午前のことから考えると、五体掛けるニで十体。朝言った通り、一万三千ゴールドを一日で稼ぎたいから、午後であと八体欲しい。



 まあ今は、ただ歩いて魚人を倒すしか無い。また徒歩か……今度は何メートル歩けばいいんだろうな?お腹が空く前に会えるといいが。






 十分ほど歩いたところ、黒塊を見つけた。早速、……と思ったが、静止されてしまう。


「この獲物は、私たちが先に見つけたんだ。譲ってもらうぜ。」


 ふむ……まあいいが。


 五人のグループで、全員が鎧や剣等をびっしりと装備している。あの二体の魚人を追って、不意をつけるタイミングを見計らっているようだ。


 後ろから魚人に、そろりそろりと近づいていく。ちょうど魚人の片方が岩か何かに足を取られてつまづいたタイミングで、突撃していった。


「うおお!」


 声を上げたら意味ないと思うがね。 

 

「そっちに一体行った!倒して!」

「無茶言うな!こっちにももう一体いんだぞ!」

「蹴り飛ばして距離をあけろ!」


 五人の集団と魚人たちが衝突すると、あたり一帯に、集団の怒号が飛び交う。これがパーティ戦闘か。五人で魚人二体……?まあ、そういうもんなのかな。採算は合うのか?


 なんか気になってちょっと見てたが、結構長引くみたいだ。なんかうるさいし、もう、行っちゃおう。




 


 三十分ほど彷徨ったあと、また魚人を見つけたが、今度は今まさに交戦中のようだ。ここから離れているところなのでよく見えないが、戦っているならわたしが行って詳しく確認する必要も無いだろう。ここもハズレかあ。







 また十分ほど歩いたところで何かが会ったと思ったら、今度は魚人の死体であった。頭部が激しく損壊していて、どうやって倒したんだろうか疑問に思う。


 「おや、悪いね。獲物を探してるのかな?」


 見ると、頭の左右に大きいツノが生えている女が立っていた。手に巨大な(ハンマー)を携えていて、これまた見たことない見た目だな。この魚人を倒した冒険者かな。


 わたしはちょうど、魚人の当てが外れたところだが、お前は?


「わたしも今日はそういうのばっかで。ようやく倒したところだから許してくれ。さっきも他のパーティに取られたし。」


 こういうの、よくあるんだね。参るよ。午後はまだ一体も倒せてない。





「そういえば、お前もパーティメンバーが見当たらないが、もしかして一人なのか?」


 ん、ってことはそっちもか。珍しいの?


「珍しいなんてもんじゃないよ。少なくとも、わたしは初めて見た。基本は三〜四人くらいで組んで攻略するんじゃねえの?なんで一人?」


 お前もそうだろうよ。ベテランなのに、一体なんで一人で攻略を?



 

 

 一人で潜っているというこの珍しい女は、グラントというらしい。白髪に大きいツノを備えていて、いうには龍人族(ドラゴノイド)というらしい。持っている大槌で獲物の頭を叩き潰すのだとか。 




「実際、最近のダンジョンは酷いね。初心者以下みたいなのが多くてさ。ただ、魚人だと適当なやつでも倒せちまうから、入り口近くだと、ロクに魔物もいやしねえって感じ。」


 だよね、だよね。さっき、五人で二体の魚人狩ってるやつがいてさあ。しかも、気になって見てたけどいつまで経っても倒せてないし。


「まじかよ。それ、食っていけるのか?草でも食ってんじゃねえの……」




 


「……おっと、結構話し込んじゃったな。わたしはこれでもう行くよ。一人パーティの仲間ができてよかった。」


 わたしも色々話ができて楽しかったよ。また、この中でも地上でも会えたらいいな。


 グラントと名乗る彼女は、手を振ってこちらに返してきた。いやあ、冒険者仲間ができたみたいで、嬉しいなあ。また会いたいが、この広いダンジョン内では、偶然でくわすことはなかなかないだろう。


 気を取り直して、わたしも……


「おっと、そうだ。一つ、耳寄りな情報がある。」


 ?


「近々、魔物の大溢流(スタンピード)が起きる可能性がある。わたしも体験したことはないが、少なくともそん時は魔物の討伐対象に困ることはないだろうさ。」


 

 大溢流(スタンピード)?……魔物が大量に現れるイベントらしい。それ以外はグラントも知らないと言っている。


 まあ、一応期待はしておこうか。


 グラントと別れ、さらに深部に進むと、そう時間もかからず魚人とまた会うことができた。しかも、四匹も!吉兆だな。


 初めてダンジョンに潜った昨日は、二体でもちょっとギリなぐらいだったが、今はもう違う。レベルアップによる【筋力】の上昇と、スキル【剣術】のレベルアップにより、魚人の討伐ペースには革命が起きた。


 陣形は、前に一体、後に円弧状になるように三体だ。




 まず、前の魚人に斬撃を加える。前の一体の頸が落ちる。

 

 それに気づいているのかいないのか、後ろからくる魚人は崩れる魚人の死体に構わず突っ込んでくる。


 円弧状になっているということは、進むにつれ前に二体、後ろに一体という形になる。離れて立っている二人の頸は切れない可能性が高いが、それは頸の話だ。下段を切り、前の二体の中心に位置する二本の足を切り取る。


 前の二体は転倒し、その体が邪魔になって最後の一体が転倒する。転倒したそれは滑り、わたしの足元へ差し出されるように届く。頭部はわたしのすぐ手に届く位置にある。そのまま、その頭に刀を突き立てた。



 簡単簡単。知能がないから、ある程度まで数が増えると、逆に色々と使えて都合がいい。四体も稼げた。

 


 さ、次……



 今度は五体!素晴らしい。


 前三体に後ろ二体。


 まず、左の一体の懐に入り込み、至近距離から上向きに刀を振う。眼球と前頭葉を巻き込んで、頭を冠状断方向に切り取った。


 力の抜ける魚人の体を妨害にして、真ん中の魚人や後列の魚人は一瞬動きを止めるから、その隙に、その二体の足を切りさる。


 あとは一対三か。例の通り、片方は頸を切って、あと二人は、…まあ適当にひっぱたいてやるか。上手くすれば簡単に切れるだろう。




 うん……?一対三?わたしの勘違いでなければ、わたしは三体倒したと思うんだけど。それで、最初五体いたんだから、五引く三は?


 目を擦ってみても変わらない。どこかから混じってきたのか……


 まあいいや。魚人は増えれば増えるほどいい。このまま全員倒してしまおう。


《 ハフリ ユメ のレベルアップを確認しました。》

 

 ハフリ ユメ

職業【神巫】

Lv:5→6

HP60/70 →75

MP60/70 →75

筋力:70 →75

魔力:70 →75

速度:70 →75

防御:70 →75

抵抗:70 →75

【スキル】

:【剣術】Lv.3【経験値アップ】Lv.1


 ……レベルアップしたのはいいが、終わらないな。



 これは、明らかに魚人が増えている。もう4−5体は倒しているというのに、数が減っていない。


 どこかから増援が来ているのか?


 戦闘しながらこの部屋の入り口を観察していると、ちょうどその時、そこから魚人がニ体入ってくるのが見える。


 う……これは。外からどんどん入ってきている。ペースも上がってるのか。このまま捌き切れるか……?

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