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蓮花祝の大権現   作者: 終わり
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四十一話 常白変事回峰行 終



 

 ヒトカが戻ってきて。今度はくじらたちは四人になっている。


 見たところ、全員揃っているようだけど……?



「いや、のいずが二人居る。それに、ぽぷりがいない。」


 いやわかるか!


 ヒトカに、簡単にいない時に何があったかを伝える。今から、こののいず二人のうちどっちが本物かを調べなければいけないんだ。


 ただ、のいずが二人になったら、それどころじゃないぞ……


「ちょっとみんな。わたしが本物に決まってるでしょ?早くそっちの偽物を片づけなさい!ほら、さっきみたいに!」


「そんなわけないでしょ!?見ればわかるじゃない。明らかに、わたしが本物よ!みんな、こっちを捕まえなさい!」


 あーあ。やっぱりこうなったか。もう収拾がつかないぞ。どうなっちゃうんだ。


 比較的真面目に近いくじらでさえああなったのだから。諦めに近い態度で喧嘩を眺めていると、ヒトカの様子が少し変なことに気がついた。

 

「のいず、黙れ。」


 ヒトカから突然、普段から全く想像できないような冷たい声が飛び出ると、のいずはその瞬間に沈黙する。

 

「はい、のいず。手を出して。」


 ヒトカは自分の元に、のいず二人を呼び寄せると、ガムテープを切って、ペンでA、Bと書いた。そして、それぞれののいずの手に、テープを巻きつける。

 

「いいなー。わたしなんて額に貼り付けられたのに……」


 それはお前たちが暴れるからでしょ。全く……


 しかし、ヒトカ、ちょっと怖かったな。しっかりする時はしっかりするんだ。


 テープを貼り終えた後、二人を前にしてヒトカが話し始める。


「警告しておくけど、完全に真実を話すようにね。供述が真実かどうかで本物か偽物か判断する。供述が虚偽だった場合にはあなたを殺すから。それをよく考えて、慎重に話すように。茶目っ気や冗談は一切通用しないから。」


 のいず二人は、ヒトカの発言を受けて怯えている。あの普段の様子で、これだもんなあ。

 

 ヒトカは、のいずのAとBのする話を全く分けて話させるらしい。これでお互いがお互いの真似をできないようにすると。じゃあ、Bの話はわたしが聞くよ。お題は、『わたしと会った時のこと』。わたしと会った時のやつだね。これはのいずとわたししか知らないだろう。


 じゃあ、話して。


 「あなたと会った時のこと?……………じ、実は、怖かったの。あなた大きいし、急に知らない人に話しかけられて……」


 「ただでさえヒトカがいなくて不安だったから、無視してたの。その後は、ヒトカが来たから急いで逃げた。」


 え。わたし、怖がられてたの?


 知らなかった……



 話の終了後、ヒトカから、Aの話を聞く。


 Aが言うには、

 

 「そんなの、決まってるじゃない。無視してたのよ。ヒトカがいないからって、こんなのが話しかけてくるなんて。最悪だったわ。」


 とのことだった。

 

 いくらなんでも酷くないか?なんで無視なんてするのよ。


 ヒトカはAをこづいて、わたしの疑問に答えるように促した。疑問、というか文句だったんだけど……

 

「何って。わたしは精神年齢では成人にも近い大人のレディよ。ヒトカともわたしは同じ年齢だと思っているわ。そんなわたしが、ガキと会話なんてするわけないでしょう?」


 はー、ほんとひどいねえ。


 あ、そうそう、最後に、両方にさっきの話をもう一度念押ししてくれる?


『先ほどまでの会話は全て真実で、いかなる箇所にも虚偽は含まれていない』と。


 二人ののいずに、ヒトカからその文章が伝えられる。


 二人とも、静かに首肯した。全く、真実のみを供述していることが確認された。



 そして、残りの二人にも、上記の意見が知らされる。


 「え?のいず、怖かったの?」


 「そ、そうだったんだね……」


 「クソ。だから言いたくなかったのに。いい二人。このことは他言無用。それに、今後絶対に言わないこと!これは、事件の解決のために仕方なく言ったことなんだから、目的外での言及は禁止。いい?」


 ぽぷりがいなくて、本当に良かったな。真面目なくじらとはてなはぽぷりに言わない可能性がある。

 



 

 本当に本当に最後、確認するけど、Bの供述は、『わたしがガキだから、仲良くなるつもりはなく、無視した』、ってことでいいんだね。


「ええ。警告通り、真実のみ発言したつもりだけれど?」


 後ろでヒトカがあっ、と驚いた顔をしている。ヒトカは気がついたみたいだ。


 わたしを一目見て、ガキだってわかったんだね。わたし、身長が170センチ以上あるのに。


「あ……」


 顔立ちは多少子供っぽいけど、でもこの身長の人間をガキだと一目で判断するのは不可能じゃない?


「うん。顔も、私の目から見ても十二には見えない。ちょっと童顔だけど、二十代って言われたら信じちゃうかも?」


 老けて見られるのはちょっといやだけど、初めて役に立ったな。

 

「う……」


 矛盾を受けて、Aは返す言葉もないようだ。

 

 「処理を行います。準備はいい?」


 観念したようだ。Aは黙って諦めたように目を瞑る。


 ヒトカは赤い宝石のついた杖を振り下ろし、のいずAの頭を叩いた。のいずAは前のめりに倒れ、体は透けて消えていった。


 『偽物は、のいずAだった』みたいだね。


 再び吹雪が吹き荒れ、またしても一度視界が完全にリセットされる。




 






 そして再び、ヒトカたちが視界に入る。次は…?


「こっちは全員揃ってる。」


 よし。全員いる。ヒトカも、わたしもいる。となるとー……


 どうなの?誰かが変わってるとか?でも、そうだったとしたら区別の仕様が無いよな。本物がいないんだから。


 ヒトカ、朝何食べた?


「パンとビーフジャーキー。祝子は。」


 トーストにベーコンエッグを乗せたやつ。

 

「うわ……いいもん食ってんね。保存とかどうしてるの?」


 今日来たからね。今日中に帰るよ。


 あとは……のいず、最初わたしと会ったときどう思ったんだったっけ……


「ちょっと!」


 のいずが、袖に隠した手でポカポカと叩いてくる。


 ぽぷりは何があったのか、くじらやはてなから聞きだそうとしたが、どちらも拒絶しているようだ。のいず、良かったな。


 ぽぷりが聞き出そうとして、はてなを追い回している。はてながわたしに助けを求めてきて可哀想なので、はてなをだき抱えてぽぷりの手の届かない場所に上げてあげることにした。


 すると、ぽぷりがわたしの足を踏んでくる。こら、やめなさい!




 

「あ!」


 こっちでわちゃわちゃやっていると、ばちん、とくじらの靴が音を立てた。どうやら、アイゼンが外れてしまったようだ。


 「ああ、外れたの。しょうがないね。ちょっと祝子、これ持ってもらえる?」


 そう、ヒトカに白い球のついた杖を手渡される。はてなと杖で両手が忙しいな。はてながちくちくして痛いと思ったら、毛糸のカーディガンを着てるのか。あったかそうでいいな。


 「ついでに、靴紐も結んでおくね。また解けたら言って?」


 ヒトカはくじらの靴を直し終わった。まあ、これ以上することも考えられないし、間違いは無いということでいいのかな。


 「ところで祝子、それ、変わった靴ね。」


 ああ、のいず、これは……。あれ?わたし、今日黒い靴履いてきたと思うけど。白い靴になっている。それに、足裏の器具が無い。





 

 ……まさか。強めに引っ叩くと、白いのが薄れてきて、黒くなる。


 これ、各自の服装が変わっているのか。ちょっと、確認して。







 

 ヒトカ、……杖の球の色が違う。赤だったでしょ。


 はてな、やっぱり毛糸のカーディガンじゃなかった。みんな一緒の服だったし、寒そうだったのを覚えてるもん。


 くじらは……ああ、マジックテープの靴だったじゃん。靴紐はなかったよ。


 ぽぷり、いつの間にアイゼンをつけてないね。


 のいずは袖が長い。ジャストサイズだったはずだ。

 







 『服装が違った』のか。全部、引っ張ったり軽く叩くと、一瞬で元のものになる。……よし!これで先に進めるはずだ。


 また吹雪が降りはじめる。……






 

 よし。さっさとやるぞ。そろそろ帰りたくなってきた。いいかげん長いからな。


 メンバー確認!ヒトカ、のいず、くじら、ぽぷり、はてな、よし!


 服装確認!よし!異常なし!ぽぷりたちは服装が一緒だから、見比べればわかりやすいな。


 何か、別に確認することはあるかな?見たところ、異常はないが。


 ぽぷりが話しかけてきた。

 

「ふーん。祝子にしてはよくやっているようね。」


 ええ?ひどい。さっきまで、そんなこと言わなかったじゃん。


 まあ、でも特に異常もないんだったら、もう行っちゃって、いいんじゃないかな。この雪を適当に歩いていけば、元の場所に帰れるのかな。


 どう思う?ヒトカ。




 


「祝子、その子はぽぷりじゃないよ。のいず!」


 あれ?でもこの子、ぽぷりじゃん。


「あーごめん。その子はぽぷりだった。でも……ぽぷりでものいずでも、関係ないよね?」


 え?関係ないって……?






 

「そうよ。祝子、わたしたちのこと、全く見分けつかないじゃない。」


「ちょっと見分けができたとして、わたしが声真似できるっていうのは事前に祝子も知ってるけど〜、それで別人だって断言するのは無理だよね〜。」

 





 ああ、そうだよね。『わたしが偽物だ』。


 わたしは、右手の人差し指をこめかみに当て、【火魔法】を発動する。


 火球がわたしの指から発射され、祝子夢の頭部は完全に破壊された。









 

 お。ヒトカ。


 急に周りが真っ白になったかと思ったら、だれもいなくって。わたしがいない間、大丈夫だった?


 ……

 

 うん?なんか、変だな。わたしのことをジロジロ見てさあ。


 もしかして、わたしの偽物がいた?


「祝子の偽物、一番わかりやすかったよ。すぐわかった。」


 ち、ちょっと。なんか恥ずかしいなあ。


 ……


 まあいいや。で、次は。一応揃ってるみたいだけど。ヒトカ、確認して。全員いる?


 ……

 

 なんで笑うのさ?


「うん。全員いる。なんか変なことある?各自、なんでも気づいたことが有ったら言って?」


 それぞれがあたりを見渡して確認するが、だれも特に言うことはないらしい。


 服装の確認もみんなお互いするが、そこにも異変はみあたらない。


 なんの異変もないし。不安だけど、もう行っちゃうか?



 

 

 一応もうちょっとみんなの確認時間を取って、全員このまま進行するという意見で一致した。

 

「いやー。最初はどうなるかと思ったけど、どうにかなったねえ。頭使って疲れたよ。」

 

「そうだね〜。のいずのびびりもわかったことだし〜、成果も有ったよね〜。」


「ちょっと。二度と言うなって言ったでしょ!」


 ははは。一生言われるぞ。



 




 しばらくしても何も起きないためにまっすぐ進み続けると、そのまま元いる場所にでた。


 「祝子、またどっか行ってたの?もう。」


 ごめんごめん。実は、変なことに巻き込まれてて。


 「早く続き!ほら、行くよ……」


 ということで。ヒトカたちと別れ、グラントとのスキーを再開した。



 


 

なんかおかしいな、と思った方は、明日を待ってください

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