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蓮花祝の大権現   作者: 終わり
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四十話 常白変事回峰行 2



改めて聞くけど、あなたたちのパーティは、ヒトカ、のいず、ぽぷり、くじら、はてなの五人なんだよね?


「うん。ついさっきまで一緒にいたの。」


 だよね。だから……


「はいこいつ嘘ついてます!」


「は!?嘘つくなよ!ちがうから!」


 あああ、ガキども。いや、同い年だったか?くじら二人が暴れて喧嘩を始めてしまう。


 ちょっと、やめなよ。のいずもぽぷりも二人を面白がるだけで止めようとしない。それどころか茶々を入れるので、更にヒートアップされていく。


 あーもう。落ち着いて……ヒートアップしたくじらの拳がわたしの顔に当たる。やめろ!!


 二人のくじらとのいずに一つずつ拳骨をお見舞いすると、二人は痛みでうずくまり、ようやく静かになった。


 はい。では、整列!


 お灸が効いたか、多少は真面目に横に並んでいる。


 しかし、本当に似てるねー。全員装備まで全く一緒ってこともあって、本当に区別がつかない。特にくじら二名は同一人物ということもあって、頭から足まで、何の違いもない。


 号令!右から順に、自分の名前を発言せよ。


「のいず!」


「ぽぷり〜!」


「は、はてな!」


「くじら!」


「くじら!」


 おーけー。左二人が、くじらなわけね……

 

 荷物からガムテープを取り出して二枚切り、それぞれ大きく「A」、「B」と書く。そして目の前のくじら二人の額に貼り付ける。


「こ、これなんですか!?」


「こんなこと、許されませんよ!」


 ふー。なんかせいせいした。


 さて。

 じゃあ、二人とも。これまでどうしていたのか、一人ずつ語ってもらおうか。それで、発言から本物を判断しよう。

 

 まず、Aから。

 

「う……はい。まず、わたしたちは、ここの休憩所にやってきました。知ってるかわかりませんが、簡単なテントのような布がはってあって、床には岩が敷いてある場所で。文字通り、そこでわたしたちは休憩していました。」


「それで、わたしはヒトカに薪を集めてくるように指示されたため、一人で休憩所を出て、少し歩きました。しかし……」


「木にも辿りつかないうちに、金縛りに……金縛りというか、手を強烈に引っ張られているような感覚に襲われ、そのまま移動して……」


「さっきまでは、周りが全く白い空間にいました。ようやく周りが見えるようになったかと思えば、今になりました。」


 なるほど……ヒトカは、休憩所から出て、薪を拾ってくるようにいったんだね。


「ちょっと、疑問があるのだけど。」


 待った。Bの発言が終わってからにしよう。次!

 

「はい。わたしはそんなことありませんでした。休憩所にいたところまでは同じですが、休んでいるとき、急に手首を掴まれたんです。見えない何かに……」


「それで引っ張られて、休憩所から出て……」


「それで。歩いているうちに、周りが真っ白になって、今です。」


 なるほど。


「はい!はい!はーい!おい!」


 体罰ってあんま効果ないのかな。


 まあいいや、終わったんだし。のいず、どうぞ。


「Aなんだけど、ヒトカは薪拾ってこい、なんて言ってないよね?」


 ふむ?


「わたしも聞いてな〜い。」


 それは、どういう?


「ひ、ヒトカさん、こっそり耳打ちで伝えてきたんです。たぶん、雪でうるさかったから、そうやって伝えてきたんだと……」


 ふぅん。納得いくかな。性格的には……


「そもそも、ヒトカはそんなひどいこと頼まないけど。悪口?」


「お願い自体は、結構するかも〜。意外とキチクだから、あのひと。」


 まあ、半々といったところか。わたし的には、ちょっとキャラクターに合ってないような気もするけど、わたしよりこの子らの方がよく接しているだろうし、どちらとも言えない。不自然さはないけど、こんな嘘吐く理由もないんだし、現状は保留かな。


 

 ほかー。ほかないかー。どっちにでもいいよー。


 ほかなかったら、わたしいくよ。B。


 「は、はい。」


 B、手首を掴まれて連れて行かれたとき。すぐそばにヒトカたちが全員いたんでしょ。助けを求めたりしなかったの?


 「それは……」

 

 「あ、それは説明できるかも〜」


 うん?


 「休憩所は椅子が固定だから、みんながいる場所は椅子の場所なの。くじらは端っこのちょっと離れた椅子に座ってたと思う。だから、みんなから見えなくても不思議じゃないと思うな〜。」


 声を出せば聞こえたんじゃないの?

 

 「ゆ、雪が結構降ってたので。テントに雪が当たると、相当うるさくなります。Aも、「耳打ちしないと会話できないほどうるさかった」と証言していますよね?」


 のいず、ぽぷりも頷いている。なるほどね。妥当ではあるか。


「は〜い。そういえばわたし、くじらが出ていってるの、見たかも。」


 え?


「くじらとのいずを探そうってなったとき、休憩所のテントが豪雪で倒壊したの。それで、外してた装備とか回収しなきゃでバタバタしてたから、うやむやになっちゃったけど…」


「その上で、わたし、くじらの後ろ姿を見たの〜。倒壊する直前だったよね。位置的に立ってたと思うんだけど、くじらの後ろって外だから。それが休憩所を出る前だったんじゃないかって。」


 ほう。後ろ姿。


 それはAの話とは一致するように思えるけど、Bの話とは一致しないように思えるな。そこはどうなの?


「それは、説明できます。わたし、両手首を掴まれたんです。その状態で外にでたので、ぽぷりからは背中からしか見えないです。それなら、自分から出ていったようにも見えるとも思いますし……」


 ザクザクと地面を踏みながら、その時の再現を行う。まあ、そうか。決定的な証拠にはならないな…

 

「それより、一つ言われてないことがありますよね。わたしから、いいですか。」


 B、どうぞ。


 「ヒトカさんたち、わたしたちを探してたんですよね?Aの言う通り、ヒトカさんが薪を探すようにわたしに言ったのなら、ヒトカさんがわたしを探すのはおかしいです。」


 「!」


 「た、確かに…それなら居場所は大体わかるはずですし、くじらの性格なら休憩所に戻ってくるはずなので、探す必要はないです…」


 「それなら確定じゃない。Bね。」


 くじらAはオロオロしている。ヒトカたちが休憩所を出てからのことをくじらは知らないので、その様子なのも無理はない。


 でも、残念だけど、尚早だね。それで、偽物が確定したわけじゃない。

 

 「なんで〜?わたしたち、休憩所から、くじらを探しにきたんだよ?ヒトカが依頼したことなら、探すわけないじゃん。」


 あそこには、のいずを探しにきたんでしょ?くじらじゃなくて。


 「いや、それは二人を……」

 

 わたしがいなかった時のことはわからないけど、わたしはヒトカの口から一度もくじらとは聞いてない。ヒトカが、くじらを探したって言った?


 ……


 ぽぷり、はてなからの回答は無い。どちらかの確信は無いのだろう。


 「わ、わたしはわかりませんけど、それは詭弁じゃないですか?あそこまで来て探してたんですから、普通わたしも探しにきてたって解釈でいいんじゃないですか。のいずは探してたけどわたしは探してなかったかも、っていうのは可能性の話で、Aの方の話の方が正しいって根拠にはなりませんよね。」


 まあ、そうだね。Aの話もBの話も矛盾してないけど、Aの話が確実に正しいという証拠でもない限り、Aの話はあまり考えられないと思う。

 

「そ、そうですよね。Aの話に証拠がないんですから。それこそ、ヒトカさんがわたしに薪を探してきて欲しいという方が信憑性がありませんよ。」



 

 …それが、あるんだよ。


 ところで、ぽぷり。わたし、ずっと言ってるけど、みんなそっくりだね。


「うん。わたしたち、四つ子だから〜。それがなんか……」


 格好までそっくりじゃん。ヒトカに買ってもらったの?


「三階到達時、全員で買ってもらったので。なんなんですか?証拠があるなら、早く…」


 なんでお前の靴にアイゼンがついてるの?


 「あ……」


 五人の服装は、全く同じだった。そう、くじらBの足にも、刃のついている靴装具がついている。

 

 「え!?……いや、それは雪が凍り気味だから、みんな履いて、」


 Bの話では、休憩中に突然連れてこられたということだったが、休憩中ならアイゼンは外していただろう。それなら今アイゼンを履いているのはありえない。

 

 Aの状況なら、自分で出て行ったんだから、履いてから出て行ったんだろうということで説明がつく。


 Bは説明がつく?







 

 全員がBの方を見る。


 Bは顔を青くして、出る言葉も無いといった様子だ。


「バレてしまっては仕方がない。死ねぇ!」

 

 苦し紛れにBがわたしの方に飛びかかってくるが、なんともかわいらしい、子供っぽい攻撃だ。魔法は使えるが、フィジカルは大してないのだろう。

 

 頭に多少力を込めて拳骨を入れると、倒れて痛がり、そのまま透けて消えてしまった。


 倒した後透けて消えてしまったということを考えても、『偽物は、くじらBだったようだ』。


 その後、また吹雪が降りしきり、周りが全く見えなくなる。


 吹雪が明けると、今度はそこにはヒトカがいた。



 

 

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