三十九話 常白変事回峰行 1
(ねえ、機嫌、治った?)
(またまた。ね、三階層に先に行っちゃったのは謝るから。それに、ここなら龍とはたくさん戦えるでしょ?)
(それに、ここ、綺麗でしょ?探したんだよ。ここの中でも一番綺麗に見えるとこ。どう?)
(これも、用意したから。今日は一緒に楽しもう?)
…………
いやー。この三階層。綺麗でいいなあ。周りは雪で全面覆われている。わたしたち以外には人もいないから、他の人の足跡すらない。全部新雪だ。
年中こうなのかな?今、外も冬だけど、夏に来たら、爽快感すごいだろうな。
うん?あんなところに人が。かなり小さい。小学生……?
近寄ってみると、8歳?くらい?だろうか……淡い桃色の髪をした子。薄手のブラウスの上に薄目のアウターを羽織っていて、下はチェック柄のプリーツスカート。マジックテープタイプの子供用のシューズを履いていて、全身全て桃色で揃えている。こんなとこに居ていい子じゃないでしょ。迷い込むにも難しい場所だし、まさか誘拐?
どうしたの、こんなところで。迷子?
その少女は全く反応を見せず、ただぼーっとどこでもない場所を見つめている。あれ?もしもし?
もしかして、低体温症とかか?急いで治療しないと……
「おーい祝子、ごめん、それうちの子!」
向こうから人が走り寄ってくる。ヒトカ。三階層に居たんだな。手になにか妙な赤い杖を持っている。
目の前の少女は、ヒトカが目に入ると彼女のもとにすぐに駆け寄り、後ろに隠れてしまった。ヒトカの知り合いかな。ちょっと不用心な気もするけど……
そう思っていたわたしの気持ちはすぐに切り替わった。それより気になることが発生したからだ。
ヒトカの周りに、それと全く同じ見た目の少女がさらにもう二人いる。何?これ。
ヒトカは、それらの少女を引き連れて、わたしの近くまで走り寄ってきた。
「ありがとー祝子。いつの間にかいなくなっててさあ。探してたんだよね。」
それより、この子らは、一体?
「ああ、この子たちが私のパーティメンバー。実際はもう一人いるんだけどね。ほら三人とも、挨拶して。」
「は、はてなです……」
「ぽぷりだよ〜。よろしゅう。」
「……のいず」
ぱ、パーティメンバーぁ?こんなにちっちゃいよ。ここにいる魔物が倒せるの?
「一対一だと厳しいね。でも、この子たち、全員魔法使えるから。それに、もう十二だよ?」
え、十二!?わたしと同い年。いや、十二でもやばいでしょ。
それに、薄いブラウスに薄手のアウター。すごい寒そうな格好してる。ちゃんと見てあげてるの?
「あー、……この子たちは大丈夫なの。体質的に寒さには強いの。雪国出身でさ。ちゃんと、装備はみんなつけてるよ。ほら、アイゼン。」
のいずの足を指差して言う。足になんかついてるな。アイゼンって確か、ピッケルみたいにとんがってるスパイクが足についてて、凍ったようなところでも滑らず歩けるってやつか。
「それに、祝子も十二でしょ。ほらのいず。この子、でかいけど同い年なのよ。仲良くしてよ。前出て前。」
確かにわたしは170あるけど……でかい、って。
ヒトカにそう言われると、のいずはゆっくりとヒトカの後ろから出てきて言う。
「フッ、こんなのが到達できるなんて、三階層もレベルが落ちたものね」
何だこいつ。口悪いなー。
でもヒトカ、こんなちっちゃい子とダンジョン潜ってるんだから、目ぇ離しちゃだめだよ。
それにしてもこの三人、ほんとに似てるね。
「そうだよ。見た目だけじゃあないからね。ぽぷり、やってあげて!」
「りょ。」
?
「フッ。こんなことも分からないなんて、才能が無いんじゃないかしら?」
「どう、似てる〜?」
うわ!こっちがのいずだったっけ?どっちが…
まあいいや。可愛いし。
誇らしげに顔を見せてくるから、ほっぺたをつまむ。柔らかーい。顔をぐにぐにとほっぺたを触っていると、ぽぷりが何か喋り出した。
「祝子〜、くじら、どこいると思う?」
くじら?ああ、ヒトカがいってた、もう一人のメンバー?
「そう〜。いつの間にか、二人ともいなくなってて……急いで飛び出してきたんだ〜。」
ヒトカ、探してたのはのいず一人じゃないんだ。ヒトカ、子供を信頼するのはいいけど、さすがに早く助けにいった方がいいと思うよ。さっさと行きな。
「え?何?」
ちょっと遠かったかな。ヒトカに近づいてもう一度言おうと思うと、その後すぐ横殴りに雪が降り始める。一瞬にして全く視界が効かなくなった。
「みんな、落ち着いて!離れずに一箇所に集まるのよ!ほら!そこの!」
痛いって。パニックを起こして暴れるのいずの背中をつかみ持ち上げ、はてなとぽぷりを横向きに抱っこする。
そうしてから避難場所を探そうと思うと、さらにもう何人か周りに気配を感じる。あれ?取り忘れたかな……と思ってその二人も抱え上げる。
そうこうしているうちに吹雪はやんで、周囲にはわたしたちがいるだけとなった。
「ひ、ひとかは?いないの?」
ヒトカが居ない。子供じゃないんだから、自分から離れることは無いだろうし。何かあったのか?
子供達を下ろすと、目の前で、のいずたちが見つめあっている。何?お互い珍しいものでも無いだろうに。ほらのいず、……あれ?のいずはこっちだったっけ。
これがのいず、これが………!?
………!!五人に増えている……!!
ちょっと、ごめん。各自名前を言ってくれる?
「ふん、改めて確認をとらないと、まだわたしたちが分からないのかしら?のいずよ。」
うっせーな、わかんねーよ。そっくりじゃんお前ら。
こいつがのいず。
「改めてよろしく〜。ぽぷりだよ〜。」
はい。物分かりが良くてよろしい。ぽぷりがこいつ。
それで……
「は、はてなです……」
はてな。で……
「初めまして!くじらです!」
吹雪に乗じて現れた、もう一人の少女はくじらと名乗った。のいずたちに確認しても、正しく自分たちのパーティメンバーだと言う。信用していいだろう。
それでこっちが……
「初めまして!くじらです!」
はあもう。何なんだ。




