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蓮花祝の大権現   作者: 終わり
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三十八話 超新星



 静謐な洞窟の中、数人の男女が歩いていた。


 強固で傷だらけの鎧、警戒の怠らない様子、なれた様子でダンジョンを巡る感じから、その高い実力を伺える。


 それらの中、全身に重鎧を着用した男が一列前にでる。周囲の扱いやその威容から、その男は集団のリーダーとしての役割を果たしているのだろう。それは、壁から一つの隆起を見つけ出し、押した。


 壁は音を立てて開き、彼らは一瞬の逡巡の後、内部に入る。彼らの目的は、その中にいる怪物と手合わせをすることだった……







 

 ということで、ミノタウロスを倒しにきました。と言っても、わたしじゃないよ。シロウたち。


 わたしが面倒を見ていたシロウたちには、あれからも変わらずダンジョンに潜って能力を鍛えてもらっていたわけだけど、最近成長が著しく。そろそろ二階層に行ってもいいんじゃないかということで、わたし立ち会いの元ミノタウロスを倒してみることにした。


 シロウがミノタウロスを倒すためにチョイスしたのは四人。普段はシロウリーダーで他の冒険者候補のレベル上げをしているのだが、しばらく前から攻略用のチームを組んで、集団戦闘の練習を積んでもらっている。今回は特に、それらチームから選り抜きを引き抜いてきての討伐チャレンジだ。


 シロウともう一人がミノタウロスの前に立ち、他は後ろに下がっている。彼ら自身の協議の結果の戦闘スタイルがこれだ。


 ミノタウロスが雄叫びをあげ、戦闘が始まった。


 わたしの時と同じく、ミノタウロスは蹴りを放ってくるが、シロウはそれを華麗に盾で受け流す。


 シロウの役割は【騎士】。騎士は体力と防御力、筋力に優れた役割で、戦闘の際には主に前衛を担当する。


 この中では最も冒険者歴も長く、【槍術】のスキルをわたしと会う前から持っている。レベルも最も高く、全体のステータス水準も高い、と、あの冒険者連の中では最も能力的に充実している。その歴を見込んで、今回は、長槍と盾を持ち、防御も攻撃もできる前衛としての役割を期待している。

 

 ミノタウロスは、片方への攻撃がうまくいかなかったと認識し、もう一人の前衛に目が向く。比較的にさっきより距離が近いのもあり、今度は戦棍を振り下ろした。


 その戦棍は巨大な盾に阻まれる。先ほどとは違い、正面からその威力をすべて受け切った上で、その受けたものは動じることもない。


 この子はポルタ。わたしがこの元冒険者連を指導し始めてからの最大の掘り出しものだった。


 役割は【荷物運び】。これだけを見ると戦闘には向いていなさそうに見えるし、本人も以前冒険者だった時代にあまり戦闘はしていなかったそうだが、ステータス補正を見ると、わたしがこれほど重宝している理由が分かる。


 補正は体力と筋力。防御力がそれほどでもなく、素早さに著しい負の補正がかかるという欠点こそあれど、相手と戦法を考えれば十分【騎士】に近い防御型の前衛の役割を果たせる。上昇する値の種類が少ないだけあって、一つ一つの上昇値は著しい。


 性格も負けん気が強く、将来的には本格的に火力役として運用することも考えているが、今は武器系のスキルの無いことがネックなので、大楯を持って防御型の前衛として活躍してもらっている。


 今回の戦法では、二人に攻撃を受けてもらって、そのうちに後衛が仕事をするという取り決めになっている。


 ミノタウロスはさらに攻撃を重ねようとするが、そこで若干の違和感を感じたようだ。足元をみると、地面に異様な形の鉄の何かが……それからほどなくして、ミノタウロスは息を若干荒くする。


 それは、各面を著しく凹ませた正四面体のような形に何か。わたしたちがよく知っている言葉で言えば、撒菱であろうか。表面には毒が塗ってあり、致死に至らせることこそできないが、即効性があり、行動には支障をかけられる。もちろん前衛の二人は厚底のブーツを履いており、その刃は足裏にまで届かない。


 これを撒いているのが、そこの部屋内を駆けているティルダだ。冒険者の講義に集まった【盗賊】。


 【盗賊】は素早さにステータスの補正があるが、どちらかといえば【開錠】や【感知】など幅広い特殊スキルに適正があることが本領だ。こう書くと、またしても戦闘向けの役割ではないように思えるが、【罠作成】、【銃火器】などにも適性がある。絡め手として幅広い活躍ができると考えてのことだ。


 彼は普段、シロウのように彼だけが実力の突出しているパーティで活動しているため、【短剣術】での接近戦など、適正の合わないポジションにいることになってしまうが、同水準のメンバー同士で攻略すると、非常に高い素早さ、【罠作成】のスキル等、戦闘役のみで構成されたパーティとはまた一段違った戦略を提供できるようになる。


 二人の前衛、あちこちを走り回る【盗賊】、それらが作った隙を突く役が、後衛で構える【射手】のフレッタ。これでパーティメンバー全員の紹介が住んだ。ここまで説明すれば、おおまかな戦術が分かっただろう。さて、どうなるか……



 

 おっと……前衛がうまく攻撃を凌いでいるうちに、ミノタウロスはワイヤーで足を取られたようだ。もちろんティルダの罠。


 それをきっかけとして、一気に大量のワイヤーが巻きつき始める。


 あちこちが壁につなげられており、適切に固定されているが、これでは投網にかかったようなもの。その程度で拘束されるミノタウロスではない。


 ワイヤーを解こうと暴れ、近くにいるシロウを攻撃する。強力な蹴りは盾で受けるも、体勢を崩してしまう。続いて下から戦棍を振り上げるので、それをなんとか槍の柄で受ける。






 シロウは大変劣勢だが、ミノタウロスはワイヤーが巻きついているという事態を目の前に、前衛がシロウしかいないことに気がついていない。そう、ここで……


 ミノタウロスに絡みついたワイヤーが一気に引き締まる。


 ポルタがワイヤーが発射された瞬間に、その手元へ向かって、ワイヤーを引き締めたのだ。


 ポルタの怪力を、壁に設置された滑車がより強力にして、ミノタウロスは強力に締め上げられる。両腕ごと縛り上げられ、その場から動くことも出来なくなった。


 そして、その首に矢が深々と突き刺さる。ポルタの筋力とワイヤーで縛り上げるこの瞬間が、当パーティで想定していた最大の隙だ。


 前衛が隙を作ったとしても、その時前衛が前にいたらミノタウロスの前にどちらかに当たってしまうだろう。そのため、十分な時間か、ちゃんと射線を開けられるタイミングでないと、弓は撃てないのだ。こうすれば、密室での混戦でも矢を当てる隙を生じさせられる。


 


 首に深々と矢がつき刺さり血が噴出している。通常の人間であればこれで終わりであるが、ミノタウロスはこうでは済まない。痛みにより尚もミノタウロスは暴れつづける。


 シロウは槍を持ち出して心臓か脳を破壊しようとした、その瞬間。




 



 壁に固定させていた器具が外れ、ワイヤーの緊張が解けた。


 それにより自由になったミノタウロスはワイヤーを解くと、そのままの勢いで、近くにいるシロウに襲いかかる。槍でトドメを刺そうとしていた最中だったため、不意をつかれたシロウはなんとか槍で受け流すが、それにより体勢を大きく崩し、続く素手での殴打を受ける。


 シロウはそこから二メートルほど吹き飛んで倒れる。撒菱がそこに無くてよかった。それにミノタウロスが近寄り、踏みつけようとするも……


 ポルタが大楯を持って間に挟みこみ、その踏みつけを受ける。ポルタは二、三回蹴りを受け続けて時間を稼いでいるうちにシロウは立ち上がり、体勢を整える。槍で不意打ちをしようとするも、それをミノタウロスが気取った瞬間にシロウの方を向き直す。また二人とミノタウロスは元の体勢に戻った。


 だが、ポルタの大楯は蹴りを大量に受け、かなり損耗している。これ以上蹴りを受けるのは避けたいな……


 また振り出しに戻り、ミノタウロスが攻撃を始める。最初と少し違うのが、ミノタウロスの攻撃のテンポと威力。わたしの時もそうだったが、ミノタウロスは命の危機を感じると、攻撃性とフィジカルがアップするのだ。


 その分隙も多いが、攻撃力は増している。ポルタは蹴りをもう受けられないので、その分がシロウに向かう。


 シロウの盾は片手持ちのためポルタより小さく軽い。あまり強い攻撃を受けられる想定ではなく……


 回避し損ねた殴打が、腹部にあたった。なんとか転倒はせずには居れたが、大きく揺らぎ、歩幅を大きくして二、三歩後ろに下がる。ミノタウロスはそれにすぐに追撃にかかる。


 補足だが、シロウたちは緻密に計画を練っていた。ワイヤーを使ったものはプランA。パーティ内会議で最も確実でありかつ有効と見なされ、戦闘のメインとして狙うに足るものだと言って、合意がとれたものだ。実際、ワイヤーの拘束により首に大きいダメージを与えることができた。


 これは、()()()F()()()()

 

 突如、ミノタウロスの足元が爆発する。不意の痛みと爆音で、一瞬意識が混乱する。


 これは、当初の案がうまくいかなかった場合のサブプラン。【盗賊】が地雷を配置し、ミノタウロスの足にダメージを与える。撒菱により、元々足の表皮が酷く傷付いていることもあり、無防備に直撃すれば甚大なダメージとなる。


 プランFでは、ティルダの準備ができた瞬間に、ミノタウロスの後ろから合図を送る。そして、それに合わせて地雷を相手に踏ませるストーリーを作る。なかなか、名演だったんじゃないか。打撃を喰らって、苦し紛れに大きく逃げたようにしか見えなかったものな。そして、条件を満たした。






 ミノタウロスの無防備に開いた胸の中心に、矢が突き刺さる。


 心臓に至ったのだろうか。血を口から噴出させて、足元をふらつかせる。

 

 そして、その次に、シロウの槍が腹部にもう一度刺さる。これにより、ついにミノタウロスは膝を着く。最後に、そのミノタウロスの頭部にポルタは巨大な大楯を振り下ろし、頭蓋を破綻させた。


 ミノタウロスは地面にうつ伏せに倒れ、ぴくりとも動かなくなった。二階層への扉が開いたことにより、皆が絶命を確認した。








 

 「ふー、どうにかなったな。一時はどうなることかと思ったが、ポルタに助けられたな。」


 「いえいえ。私がちょっと離れるも、ずっと前衛してくれてたんですから。このくらい……」


 「ワイヤー罠、設計が甘かったな。壁の方の強度が足りないとは、予想外だった。」


 「……うん。」


 



 みんなそれぞれ反省点もあるようだけど、とりあえずミノタウロス討伐おめでとう!

 

 このまま二階に行ってもいいけど、大楯もボロだし、今日は帰って休んで、装備が整ったら次に行こうか。


 多分このパーティならティルダが感知役も果たしてくれるだろうし、多分二階の雑魚程度ならなんとか倒せると思う。いやー、もうわたしの手は離れたかな。ここから、各自でゆっくり成長していってほしい。


 

 わたしの方は、どうしたらいいかな……

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