二十五話 新生祝子の引越し祝い
さて。そろそろ、家を直さなくっちゃ。いままでやってなかったけど、さすがにそろそろやらないと、後回しにしていつまでもやらなそうだ。えーと、とりあえず……
こないだのデパート。前来た時にざっと全体を案内してもらったので、おおまかにどこに何があるかは分かる。
一階の外と広く繋がっているスペース…ここのスペースが、確かホームセンターになっているんだ。
さて、何から買おうか。まず、洗剤は必要だろうな。洗剤、洗剤…
なんか色々あってわけわからん。うーんと、とりあえず、強力なやつを買おうか。強くて悪いことはないだろう。
あとは?えー、ゴミ袋とか、雑巾とか、モップとかかな。ああ、ゴム手袋、マスクとかもあるといいね。
色々買い込んだ。こんくらいでいいか。足りなかったらまた後で買いに来よう。
両手に掃除用具を抱えて家に帰宅すると、すでにグラントが家の前で待機していた。家をリフォームするから手伝って、と声をかけていたのだ。グラントは先にちょっと中を見たようで。
「それにしても、ずいぶんと汚いねえ。土まみれじゃん。」
そうなんだよな。言っておくけどわたしのせいじゃないよ。シロネのせいだからね。
「ああ、あの子か……。まあ、そういうところはあるよね……」
お互い同じ鍛冶屋を行きつけにしているので、否応なくあの子のことがわかってしまう。愛想良くはできるが、どうしても元来の乱暴さとがさつさが見えてしまうのだ。正直、人柄を知ってからこの家を見ると、納得って感じ。
じゃ、さっさとやってしまおう。まずはゴミ捨て。
一階と二階と、合わせて7つも部屋があるから、二人でそれぞれ手分けしてすることにした。シロネにも事前に確認したが、特になかに必要なものは残っていない。わたしとしても必要なものがないから、グラントにもわたしに確認は取らないで全部捨ててと言ってある。
わたしは一階を担当しよう。一階は、全フロアまとめて調理を行うためのキッチンがあり、それ以外に客室が五つある……とシロネからもらった間取り図には書いてあるが……
前来たとき通り、わたしの目には部屋は一つしか見えていない。おそらくそれ以外の部屋は、ごみで隠れてしまっているからだろう。なんてことを……
ゴミは、ゴミ袋に入った何かと、木材と、得体の知れない金属の工具類?これ、家の部品じゃあないよな……
これはなんだ?えーー、丸太?なんていうか、ありとあらゆるものが捨ててあるな。なんでこんなことするんだ。だらしないで済む問題じゃあないぞ。
これを運びだすと、部屋のドアは一応開くようにはなった。入ってみると外と同様、中にも大量のゴミ袋が。最初は外に見えないように客室の中に入れていたんだろうか?
ゴミ袋をいくつか運んで床が見えるようになると、ベッドやテーブルなどの家具がようやく顕になってきた。……ゴミだらけになっている家具なんて正直使いたくない。何がついているかもわからないから、家具やカーペット、カーテンなど備品は全部捨ててしまおう。これも捨て。
後は雑多な小物類が残った。ゴミ袋から溢れ出たであろう腐れ林檎や、コップなど私物類、何かのパッケージやらわからないものを集めてゴミ袋に入れて一部屋が一旦終了か。ゴミ袋、足りるかな…
床は一面妙な色の液体やら何やらがへばりついているが、これはモップを使った方がいいな。道具を持ってこよう。
と、いったところで、二階から悲鳴が聞こえてきた。なんだ?
二階に行くと、入り口の部分から廊下がびしょ濡れになっている。向こうの一室から水が溢れ出してきていて、そこからは水飛沫が見える。どうやら、水道管が破裂したようだ。
「ごめん祝子……つまずいたとこにパイプがあったっぽい。」
いや、パイプを見ると、あちこち錆や凹みだらけだし、時間の問題だっだんだろう。そういえば、シャワー室は二階にあったから、そこの水道管なのかな。こんなボロ家を素人が改装するのはやっぱり無謀だったかなあ。
飛沫はさらに増し、だんだん一階にも垂れてくる。
だめだ。業者を呼ぼう。
メムに相談すると、付き合いのある業者を紹介してもらえることになった。早速きてもらい、水道管の前まで連れて行って、様子を見てもらう。
「あー行けますよ。破裂してるとこは一個なんで、そこを交換するだけで大丈夫でしょう。元栓閉めて、一時間程度っすかね。」
よかったー。いやー、やっぱり素人だけじゃ厳しかったな。
「まあ、しばらくは大丈夫だと思うっすが、他も全体的に劣化してて、なんか硬いものとかにあたればすぐにでも破損しますし、そもそもが旧式なんで、近いうちに全部直した方がいいと思うっすよ。」
ほいっと水道管修理代金の見積書を渡される。えー、三千ゴールド。優良業者なのかな?多分、結構安いよね?全部の交換もここでやってもらおうかな。
「しかし、失礼っすけど汚いっすね。何やってんすか?」
あん?実は、ボロ屋買ってDIYしようと思ってて。
「ふーん。…でも、結構大変っすよね。別料金はいただきますけど、全体、今風に作りましょっか?今風、というか、外来風ですけど。」
フローリングとか、電気とか。簡単に内容を話してもらったが、確かに元通りの木造よりそっちの方が良さそうだな。おしゃれだし、清潔そう。
「人員的にこっちのみでは無理なので、お客さんにも結構やってもらうことにはなりますけど。電気とか、水道系の修理はわたしたちでできますよ。」
家の各箇所を見回ってもらって、暫定の見積もりを作ってもらうが、貯金は足りる。結構痛いが、家がいつまでもこの調子じゃあやっていけないし、この値段でやってもらおう。
というわけで、業者主導で改装を行うことにした。
「まずなんすけど、でっかい物はまず片付けちゃってください。それが、あらかた終わったらですね……」
と言って、メモ帳を渡される。
「全体の損傷部位を探して欲しいっす。あとでまた直すんで完璧にする必要はないっすが、あちらこちらで腐れてる木とかよく見かけるんで、そこを交換しちゃいましょう。」
「木材とかは、こっちで在庫があるんで、そっちから持ってきます。ちょっと電話かりますね。」
……まだ通ってないです……
「……ギルドから借りてきますっす。」
すんません、こんな家で。
着替え終わったグラントと一緒に戻ってきて、問題のある木材をカウントし終わったちょうどそのころ、一人の人間が台車を引きながらやってきた。
「お疲れ様です。えっと、ここの家主の方ですか?」
業者さんか。はい。祝子です。あの人に言われて傷ついてる木材をチェックし終わったところなんですけど、次ってどうすればいいですか?
「あ、そしたらですね。そこにちょっと案内してもらえますか?」
台車からバッグを二個取り出して言う。はーい。
まず、二階の廊下の奥。真ん中の木材がどす黒く変色してしまっている。
「あー……これはひどい。そしたらですね。」
押したり引いたり、機械を木に押し当てたりして一通り検査すると、持ってきたバッグのなかからのこぎりを取り出して、いきなりその木材をギコギコと切り始める。
二箇所を切断し、その箇所を木片として切り出した。その木片を拾ってさらに二つにして、断面を指さす。
「これ、見えます?この跡。これがやばいんで、これが出なくなるまで切ってください。」
と言う。断面には、確かに良い黒いような跡がついている。
その後、手持ちの袋から補修用の木材を取り出して、欠損箇所に合わせて手際よく削り、何本かのチューブを出して断面部に塗布しておさめる。そして、上面と下面の双方にシートを貼りつけて、
「これで、一時間は触らないでください。他も同様です。」
補修って、こうやってやんだね。
「じゃ、私は電気関係の配線を任されてるので。木材の修繕はそちらで。」
え。今のって、説明?ぜ、全部やんの?大丈夫?できる?
「できますできます。じゃ、お願いしますね。」
こわー……
「祝子、マジで出来んの?」
わたしに聞かないでよ。自信ないよ?
とりあえず、失敗してもわたしが落ちない一階をまずするか……
床面の木の、腐食部位を全て含むようにカットする。断面を見てみると……
うわっ、ここで終わってない。まだあるぞ。結構マージンとったはずなんだけど……今度はもうちょっと長く見積もって木材を切り取る。
断面に腐食の要素はない。今度は全部切り取れただろうが……
「さすがに取りすぎじゃない?」
グラントが、次に切り取った木片を千切りながらいう。その断面には変色は見られない。やっぱそうかなあ……
とりあえず、木材で補修して詰める。
断面がこれだから、えーと。
こんくらい?彫刻は苦手だったけど、【筋力】が上がっているから、結構楽になったな。
床の木材の欠落にそれを当てがうと、はまらなかった。ちょっとでかいか。
もう一度切り取ると、今度ははまったが、大きい隙間ができてしまった。
……大丈夫かなあ?業者の人に確認してもらおう。
「あー、」
「………ま、大丈夫っすよ。そのためのものもあるんで。」
先ほどの薬剤を木材に塗りつけた後、補修用具のバッグに入っている瓶を数種類混ぜ合わせて穴に流し込む。
「これで、シートを貼り付けておいたら後は同じで大丈夫っす。ただ、触らないようにはお願いしますね。」
よかったー。
「木工はちょっと難しいかもなんで、似たようなことが有ったら同様にしてくれたらいいんで。よろしくお願いしまっす。」
ちょっと良くない。
また仕事が増えたじゃんか?これが上手くいかなかったらどうすればいいの?
どうする……グラントの方をチラッと見るが、これができそうには思えない。料理できるのが結構不思議なくらい不器用だからな。
一か八かやるしかない。もう一度、意識を集中して木材に刃を入れると、
《 スキル【木工】の獲得を確認しました。》
持ち手が軽くなる。なんとなく、鋸をどう切るかも直感的に理解できる。
そのままサクッと腐った木材を切り落とす。その断面には腐敗跡は見えない。
「おー、うまーい!一発じゃん。」
へへ…【木工】をもらったから、もうなんでもこいだ。自然とどうすればいいかが手でわかる。
ン、こんくらいでいいか。
木片のサイズを切り揃えて、木材の陥凹に嵌め込む。ちょうどピッタリだ。
グラントが、手をぱちぱちとさせて褒めてくれる。ちょっとズルしてるから、罪悪感があるな。
そのままの調子で全ての木材の補修を完了した。
終わりました!全部。
「あ、はっやいっすね。まだ配管終わってないんで、各部屋の掃除しといてもらえますか?」
はーい。
というわけで、今度は以前買い揃えたモップとバケツを持ってきて、まずは一階のリビングとキッチンの掃除を始めた。部屋の床には表面に著しい量の汚れがこびりついており、モップだけでは落ちきらない。
「はーい!どいてどいてー!」
グラントがブラシを持ってきてくれた。擦るとどんどん落ちていく。いいな。もう一本確か買ってあったと思うから、それでわたしも掃除しよう。
数時間ほどの掃除で、とりあえずは普通の建物になった。まだ変色やしつこい汚れは残ってはいるが、これはわたしたちでは無理だろう。まあ、一旦完成といったところか?
「祝子さーん、今大丈夫ですか?」
どうしたのかな。
見違えたように綺麗になった部屋を見て、業者は目を丸くしていた。
「よくここまでしましたねー。」
業者の人も汚くなる前を見ているので、感慨深いようだ。それで……
「電気系の整理を終わらせたんで、コンセントをどこにつけるかの相談をしたくて。」
あ、はいはい。リビングは広さ的には二個は有ったほうがいいかな。掃除機のリーチを考えても、結構広いしな。
あとは……各部屋に一つかな。まだ家具も置いてないし、位置についてはよくわかんないんで、普通の位置につけてください。
キッチンか。どうしようかなー。グラント。
「え、わたし?うーん、キッチンは二個はあった方がいいんじゃないかな。冷蔵庫と、色々家電も電力食うし。」
じゃあ、その通りで。
「はーい。じゃ、引き続き。」
はーい。グラント、じゃあまた元の部屋に戻って……
「祝子さん?ちょっといいですか。」
今度は別の業者さん。はい。なんですか。
「水道管、交換終わりました。こんな感じで……」
さっきまで全部分サビだらけ、凹みだらけだった水道管は、金属光沢の目立つピカピカのものに換えられていた。
おー!さっきも思ったけど、作業めっちゃ早いよね。
「それでなんですけど、屋根裏を見てたらですね、虫が結構湧いてまして。」
うわ!最悪!
「私ら、虫の駆除は専門じゃなくて。業者を頼んでもいいんですが、この程度なら素人でもできそうなんで……」
こっちを見る。
わたしは嫌だ。わたしはそのままグラントを見るが、グラントも首を振っている。普通に嫌だよな。もう一社業者をよぶか。と考えているところで、表から声がする。
「おーい…来たよぉー…」
この声は。
やっぱり猫耳か。前によかったら来てって話はしたんだよね。
「暇だから来ちゃった…これが祝子の家?買ったんだー。」
そうだよ。買ってずっとほっといたから、結構前から持ってはいたけどね。
「あ、すいません。こっちのあれどうします?」
そうだった。業者の方でやってもらって……待てよ。
猫耳が家の中に入ってくる。先回りして、一階まで降りる。
「どうしたの……祝子……?」
猫耳って虫嫌い?大丈夫?
「んー全然…嫌とか無いけど…」
じゃあこれお願い!屋根裏の。
「え…え?」
業者からポーチを受け取り、引き連れられて屋根裏に行く。
まあ、ちょっと騙したみたいで悪いが、協力してもらおう。
さ、あとは……
「あとは、全体的な材質の強化と塗装ですね。祝子さんたちは、掃除とか……」
わたしたちができそうな範囲のは終わらせたよ。見たところとくに汚い場所ももうなくなってて……でも今はやることないか。そっか……
あ!じゃあ、家具買いに行こうよ。全部捨てちゃったから、もう無いんだ。一緒に選ぼう。
というわけで、例のデパートへ。
家具屋で……ベッドと、……ソファーと、あと何が必要か。わたし、そういえばほとんど家で何もしないから、買うものがないな。
何買おう。グラント、普通部屋って何があったっけ。
「うーん。包丁とか、冷蔵庫とか………」
お前もお前で、料理しかしないからな。でも、そうか。冷蔵庫は普通あるよな。
家電買おうか。家電類のコーナーに行く。
新型テレビのポップが目に入る。テレビかあ。電波は通ってないらしいが
、ゲームとか映画とかは暇つぶしにいいかもしれない。一つ買っていこう。
電気掃除機。今は埃どころじゃあないが、掃除が終わって改装も終わったあと、普段使いにはいいだろう。
それと。おお、これは冷蔵庫。調理関係の家電は全てここに集まっているようだ。グラント、何がいい?
「わたしに聞くの?お前の家じゃん?」
どうせ家にキッチンがあっても、料理するのは大概お前だろう。
「はあ。少しは料理しなよー。」
ワハハ。お前がいるんだからいいでしょう。ええ、冷蔵庫にレンジに……。よし。これでいいか。
さ。行こう。台車に乗っけてわたしの家に搬送する。
戻ってくると、みるも無惨という感じだった外壁が綺麗に塗装されている。業者も増えていて、本格的なリフォームといった感じだ。
家の中に入る。ビニールシートや加工が目立ち、いよいよ大詰めなのかな。さっき木工したところはちゃんと固まっているようだ。もうビニールシートも取ってあって、区別もつかない。
買ってきた冷蔵庫やらなにやらは一旦ダンボールに入れておいたまま外においておくが、多分ここら辺にこう置くのかな……。
そういえば、カーペットも欲しいな。リビングに人がいるなら、ここにこう座るだろうが、地べたはちょっと……その上でクッションがあってほしい。あ、カーテン……
それと、そういえばクローゼットも無いな。忘れてた。それに、モニターを地面に直置きというのもよくないだろうから、なんか棚とかほしい。
ソファーももう一個欲しい。この広さの家のリビングに一個だけだと、ちょっと寂しそうじゃない?
なんも買うもの無いと思っていたが、意外とあるもんだな。また買いに行くか……?
「おーい。来たよー。」
お!メム、キララ。それにシロネも。一緒に来たの?
「そこで会ったの。鍛治屋の子でしょ?」
おお。一応声はかけたが、来るとは思っていなかった。
「まあ、一応元わたしの家だからな。結構綺麗になったな。」
シロネさあ。もうちょっとどうにかならなかったのか。家、きったなかったぞ。
「まあ、あそこに暮らしてたからなー。自分の住居と貸家を兼ねるというのはすごい発想だろ?」
自慢気に語るが、そういう宿には泊まりたくないでしょ。なんで潰れたか、すごいよくわかる。
「へー。元がわからないけど、結構綺麗になったんだ。」
うん。元はいつ倒壊するかわからないような家だったからね。
シロネはまだ仕事が終わっていないらしく帰って行った。結構遅いが、忙しいのかな。また来るらしい。
メムたちは、手伝ってくれるつもりらしいが……どうしようかな。やることはまだもうちょっとあると思うが、結構しっかりとした服を着てるし、あまり過酷なことをさせるのは申し訳ない。
そうだ!さっき考えてた、足りない分の家具を買ってきてもらおう。ずいぶん足りなかったからな。メモと財布を渡す。
さて、あとは……何かやる事ありますか?
「はい。大詰めなんで、じゃあ塗装を……壁とか。」
はいきた。業者の人が一人でしているらしいので、その人にやり方を教えてもらって、わたしたちも壁を塗装する。
えー、このペンキを混ぜて、ロールをムラの無いように塗りつけて……
塗るだけだと思っていたが、意外と時間がかかる。ざっと塗るだけだと変になっちゃうらしいから、丁寧に塗らなきゃ。
一面、一面丁寧に塗って、最後の一枚を塗り終えたというところで、皆の作業も終わったようだ。
やった!終わった………
「壁はまだ乾燥してないと思うんで、シートは張ったまま一時間ほど待ってください。」
お、そういえばそうだった。業者は数人だけ残り、わたしたちは乾くまで一時間ほど待った。
そこで、上階の方から人が降りてくる。
あれ。猫耳?
「終わったよ…もういないと思う……」
(ああ、そういえば虫退治を猫耳に任せてたんだった。忘れてた。)
あ、ありがとー。シャワーはもう完成してるけど、一回浴びとく?
「うん…あと…浴び終わったら…ちょっと出るね……」
あ、はい!行ってらっしゃい。もうすることも無いから、ゆっくり行ってきていいよ。
うむ。暇だな。猫耳と一緒にどっか遊びに行くか、とも思ったが、もう行ってしまった。
まあいいや。大人しく待とう。
む。あれは。
メムたちが戻ってきた。巨大な荷台に荷物を積んできている。ちょっと多くないか。
「ユメちゃん、家具買ってきたよ。」
ありがとー!今ペンキの乾き待ち。あと数分で済むと思うから、一旦そこに置いておいて。
「それと、これ。デパートで色々買ってきたからさ。一緒にお祝いしない?」
おー!いいね。ピザやハンバーガー、いろんな惣菜類を買い込んである。
と、それを見ていると、業者の人から声が掛かった。
ちょうど乾いたようで、部屋の中に入る。
おおーっ。元のオンボロ木造がわからないくらいだ。全然ギルド寮とは比較にならないほどだ。新しい家、買ってよかったー。
さあ、買っておいた家具をみんな入れよう。リビングに、テレビを入れて、それの前にソファーをおいて、その中心にテーブルを……そうだ。カーペットを敷かなくては。そいで……
よし!時間がなかったから簡素だが、まあ最低限よしだろう。
リビングのテレビの前に設置したテーブルに、惣菜類を広げる。
「じゃ、これで終わりっす。うちらはここでお暇させていただきますっす。」
業者さん、どうもありがとうございました。
「えー、いいだろ。もっといろよ。」
「……ふふ……」
と、入り口から帰ろうとしていた業者に、ある人間が声をかける。
シロネと、猫耳!一体何をしていたんだ。
「え、えーっと、まだ仕事あるんで……」
よく見ると、シロネが猫耳に肩を借りている様子で、すでにめちゃくちゃ酔っ払っているようだ。えーと……
「ほら。お前も一口……」
ああ、もう。業者さんに迷惑かけない!ほら、ピザあるよ。
誘導して押さえている間に、業者さんには帰ってもらう。案の定だが、シロネは酔うとひどいようだ。
「は、祝子も飲むか〜?これ…」
飲まない。未成年なので。グラントも確かそうだったよな。
シロネは仕事が終わってすぐこちらに来たようだが、猫耳と出会って意気投合。先に別の店で飲んだ後にこちらに来たらしい。何やってんだか。
ということで、メムが買ってきたピザを開封する。ピザはあっちのと同じようになっていて、ナイフを使わずとも一切れ取れるようになっている。
適当に一つとって食べる。美味しい!このピザ、どこのなの?
「デパートに入ってるチェーンの!よかったー!」
「ん……うまい…」
へー。あのデパート、そんなのも入ってるんだ。安そうだし、今度行ってみようかな。
「そういえば、ここ、前結構汚かったよね。綺麗になったねー。」
あ、そうそう。こいつが汚してたから。
「ここに住む、ってことは、ユメちゃんとあう機会も少なくなるねー……」
あー、そっか。まあ、結局わたしはギルドに行くから。結構な頻度で会うよ。多分。
それに――、たまに遊びに来ればいいじゃん。
「ほんと!?遊びに行っちゃおー!」
この発言が欲しかったのか。たまに狡いところがある。
「そういえば、この間二階層にも行ってたよね。それのお祝いもあるか。」
ああ、そうそう。でも、感知系のメンバーがいないから、まだ先には進めてないんだ。魔道具を作らなきゃなんだけど、お金がねー。
「そうなんだ。魔道具かー。その解決方法は聞いたことないなー。」
最近、猫耳との賭けにも負けたし。ダンジョンで攻略できなかったらご飯奢るってのでいうので、十万ゴールドも……
「え!?猫耳って、ろ……ちょっと!」
メムが唐突にいきり立ち、猫耳の肩に手を置く。
「あなた、こんな小さな子からそんなに奢ってもらったんですか!?よしてくださいよ!いい年でしょ?」
「……う、うわああ……」
ああ、猫耳が叱られている。ちょっと、お互い納得はしてるから……
ああ、もう酔っ払っていて話が分からなくなっている。しょうがないので、キララたちのところに避難することにした。
「ああ、まあ、いつものことだ。」
メム、たまに怒るよね。
「まあ、あそこの猫耳?さんも、自分で払ってもよかったと思うがね。」
まあ、わたしが負けたんだし、そういうほどでも……
「ところで、モニター買ったんだな。」
ああ、まあ一応ね。
「何に使うんだ?なんもないが。これ単体じゃ使えないのは知ってるよな?」
あ、あーー、そうだった。忘れてた。確か、映画とゲームはできるんだよね?ただ、映画はともかくゲームは古そうだよな。
「いや、多分ここでも結構いいのがあると思う。最近、アオバの2が出て……」
「ちょっと前までは品薄だったが、今はここでも多分普通に売ってるはずだ。ソフトも色々ある。まー、結構高いかもだが。3Dアクション、シミュレーション、RPGなんでもあると思うぞ。」
ほー。わたしのイメージより新しそうだ。
「ゲームって、なんですか?」
グラント。ああ、都会から来てないと、ゲームがピンとこないんだ。ゲームっていうのは……
「こう、この画面に映像が映って、それを操作するんだ。」
「画面に、映像???」
グラントにはピンときていなさそうだ。さらに詳細な説明をするが、それでもグラントはあまり理解できていない。
「えー、ともかく、そういうのがある。内容としては、中にいるキャラを動かしてモンスターを倒したり、レベルアップしたりする……」
「へー。面白そうだな。祝子、先行投資と思って、わたしに一つ……」
シロネはすぐに理解した。エンジニアとかだと、こういうのを使うのに脳が向いてるんだろうか。でも、言っとくけど、今ゲームするのは無しだからね。魔道具の開発がいつになるんだか、知れたもんじゃない。
「チェッ。」
まあ。完成したらうちのテレビ使ってもいいから……
わたしたちがテレビについての話をしていると、後ろから……
「あー……うん、ごめーん……」
「こらー!そんな謝罪で許されると思ってるのか!ここはもっと……」
「うむ、私はだめだから……シロネ!おーい!」
もう、話の調子が全く分からない。
だが、同じくよく分からなくなっているシロネは呼ばれると同時に千鳥足で猫耳の元に向かう。
「おお、ここで会ったが百年目。悪鬼成敗!」(滑舌が終わっている)
「受けて立つよ。」(滑舌が終わっている)
「やれー!」(滑舌が終わっている)
ああ、……いいや。こっちはほっとこう。
「つまり、小説がこう、モニターに映るんだ。」
「えーと、目線が上に向いたまま見れるってこと?」
「いやそうじゃなくて、ほら。登場人物が、何かやったりするだろ?それが映像として……映像…じゃなくて。」
グラントに映画の概念を伝えようとして、苦心しているようだ。あちゃー。映画は……意外と難しいな。どう説明すればいいか?
こっちも……さすがに、こっちも面倒くさいな。いいだろ、その話は。
……一旦トイレに行ってこよう。
わたしがトイレに行って戻ってきたとき、メムと会った。
そのメムは、いつの間にかメムが異常に酔っ払っている。わたしの肩を掴み、よく分からないことを繰り返していた。目の焦点があっておらず、何かひどくふらついていて倒れそうだ。
正気でないのは最初からわかっていたが、これはさすがに寝た方がいい。
念のためソファーを買っておいてよかった。そこに寝かせよう。
戻ってきたら、グラントはもうこくり、こくりと船を漕いでいる。というか、一緒に話してたキララは酔って寝てしまったようだな。
シロネと猫耳はもう酔い潰れている。これは、もうおしまいだな。
グラント、そこで寝たら風邪ひくよ。
「ん、ああ。寝ちゃってたか。」
えー、キララは……だめだ。起きない。猫耳とシロネは自明だろう。
シロネはもう一つ余ったソファーに寝かせて、猫耳は……キララは……だめだ。どっちも動かん。
まあいいや。あとはグラントとわたしだが、もう余っているソファーもない。わたし用に買ったベッドで寝よう。
ということで、宴会は終了した。
翌朝。わたしが起き上がると、猫耳がすでに起きて、片付けをしていた。意外だ。そういうのをするやつとは思わなかったが……
「ん……意外と飲んじゃったね……まあ、暇だから……」
意外と親切なやつだった。ほどなくしてグラントも起きてきて、一緒に片付ける。
メムは起きたようだが、かなりダウンしているようだ。
「ユメちゃん、ごめんね〜〜」
まだふわふわしているらしい。水を汲んで来てあげる。
キララとシロネはまだ寝続けているようだ。昼くらいには目が覚めるかな。
まあ、楽しい引越し祝いにはなったかな。




