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蓮花祝の大権現   作者: 終わり
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二十二話 龍吟ずれば

二十二話 龍吟ずれば


 いつも通りにダンジョンに潜っていたある日、ダンジョンから帰ると、すでに10時半を回っていた。


 とりあえずはご飯を食べないとどうにもいかん。わたしの足取りは自然とある道に向かっていた。


「いらっしゃいませー!って祝子じゃん。」


 トドロキ亭だ。


「いらっしゃい祝子ちゃん。今日は何にする?」


 今日は……どうしようかな。気づいたらめっちゃ疲れてたし、ラーメンにしよう。


「あいよ。ラーメン一丁!」


 そういうと、カウンターの中で、二人が忙しく動き始める。


 二人、というのは店主のイドと、店員のグラントである。あまり詳しくは知らないが、イドの方はなんでも大きい街で昔コックをしていたことがあって、そこを辞めて地元のここに転職してきたそうだ。どうりで、ここだけ料理がうまいと思っていた。


 グラントは、イドの料理に惚れ込んで、この店に雇ってもらったバイトらしい。田舎から料理人を志して上京してきて、たまたま入ったこの店の味に魅了されたとか。

 

 全席空いているカウンターに腰掛け、改めて周囲を見渡す。今日は人がとんといないな。


 「いつもはもっと早い時間に来るから知らなかったでしょ。八時くらいがピークで、これくらいになるとお客さんもいないことが多いんだよ。」


 ふーん。

 

 後ろを見る。


 「あれは例外。ほんとに、何やってる人なんだろーね?」


 わたしの後ろには、座敷席で横になりながら蒸留酒を呷っている巨体の女がいた。わたしが以前来たときにも偶に見かけていた人で、巨体と言っても結構人間のサイズではないほどでかい。二メートル以上は間違いなくある。三メートルは……どうだろう。


 それと、頭頂部に猫のような耳がついている。それをとって、店員の間では猫耳、と呼んでいるそうだ。


 わたしたちが見ているのを悟って、猫耳は酒瓶は口から離さずに、こちらに手を振ってくる。すごい執念だ。

 

 イドの方の調理が終わったのか、グラントも引っ込んで作業し始める。それからいくらか経って、わたしの元にラーメンが届いた。


 普通の中華そばだが、スープもちゃんと現代風に凝っててうまい。麺も自家製麺……ここには製麺所とかないからあたりまえか。

 

 まだここで食べてないメニューもあるけどラーメンって、いつ食べても外れないっていうか、つい食べちゃうんだよね。

 

 客もいなくて暇なのか、グラントが話かけてきた。


「お疲れ、祝子。今日はどうだったの?」


 うーん。芳しくないね。


 実は最近、お金がちょっと必要で。シロネに頼んで、魔道具っていうのを作ろうとしてるんだ。それでたくさん魚人を狩ろうと思ってたんだけど……


 「まどうぐ、ねえ。」


 魔道具を作るには、魔結晶以外にもたくさん材料が必要らしく、それを買ってあげないと作れないということだった。

 

 最初はシロネが店の財布でいろいろ買い込んでいたらしいのだが、さすがに店主に止められてしまったらしく、今はわたしが代わりに代金を負担してあげている。まあ、わたしが依頼しているので当然だが。


 二階層はまだ危険で入れないから、お金稼ぎにには一階層をつかうわけだが、そうなるとまた魚人あんまり出ない問題が再燃する。


 夜遅くまで狩っているのに、全然でてこないせいで効率は非常に悪い。今日の稼ぎは二十二体、二万二千ゴールド……まあ、稼いでいる方だが、材料代も高いからな。


 別の魔物というにも、サメはまた行ったら出てこなかったし、ミノタウロスも出てこない。


 ああ、そうそう。この間、グラントとなら二階も攻略できるかと思ってミノタウロスの部屋までグラントを連れていったんだけど、その時もミノタウロスは出て来なくて、ミノタウロスがずっといるわけじゃないのに気づいたの。


 二階層自体には部屋の横の扉を通っていけたんだけど、グラントが通れなかったんだ。二階層に潜っている冒険者はたくさんいるから、多分ミノタウロスもまたでて来るんだと思う。ということでグラントは今、ミノタウロスのリポップ待ち。


「はー、なるほどねえ。確かに、わたしももっと効率よくレベル上げ、したいなあ。」


 グラントは、基本レベルアップのためにダンジョンに潜っている。ダンジョンの奥地に生息している魔物からは極上の素材が取れるから、将来的に一流の冒険者になっておくことが料理人としての成長につながる、だとか。


 確かに、グラントは夜営業のシフトには必ず参加しているから、六時には上がらなくてはいけないし、休みをとったとしても二泊以上はできない。他の冒険者とはかけられる時間も結構変わってくるんだよな。


 何か、効率がよく魔物が狩れる場所はないものかな。うーん……


 そう話しあっていると、グラントが少し声を潜めていった。

 

「実は……」


「ダンジョンの中に、効率よく魔物を狩れる場所があるらしいの。酔っ払いのお客さんだし、軽い雑談の種だったから、あんまり信用はできないと思うけど」


へー。そんな場所があったらいいよなあ。そういうのって冒険者の夢でしょ?

 

「実は、場所もしっかり聞いてある。一応、だったけど。今度一緒に行ってみない?」


 あ、まじ?冗談かと思ってたんだけど。


 グラントが、話を聞いてメモった地図を見せてくれる。


 見ると、そこまでの道がかなり入り組んでいるようだ。どうやらあの水辺にも程近い場所にあるみたいだが、気づかなかったな。 


「明日、夜営業が休みだから、わたし出なくていいんだよね。早速行こうよ。」


 行く行く!


 さっさと帰って支度しなきゃ。明日朝起きれんかもしれんしな。


 


「君たち…」


 急に声が聞こえてびっくりした。後ろを振り向くと、猫耳が珍しく酒瓶を持っていない。あいつの声を初めて聞いた。


「それは、やめた方がいいんじゃないかなあ……」


 辞めた方がいいとは。どういうこと?

 

「ううん…や…」


 微睡みながら話しているようだから、冗談なのかな。


 それとも、わたしたちが子供と思って馬鹿にしてるのかな。あんまり舐めない方がいーよ?


「そーですよお客さん。わたしたち、こう見えて結構強いんですから」

 

 わたしたちの反応を見た猫耳は、全く同じ体勢のまま言葉を続けた。

 

 「そしたら、賭けでもしようか……君たちが、無事にここに帰ってこれたら君たちの勝ち、……君たちが、独力では、無事に帰れなかったら、わたしの勝ちだ…負けた方が勝った方に、一食分奢る……これでどう?」



 

 いいよ。わたし達は生き残るから、今から何食うか考えとかないと。メニューで一番高いものは……この北京ダックぽいやつかな。


「店長、明日、フカヒレを仕入れておいてくれませんか。わたしが勝つので。」


 その手があったか。


 まあまず、その情報が真実かどうか、だけど。

 






 

 夜が明けて、翌朝7時。わたしたちは、ギルド前に集合した。あの後、猫耳も集合時間を聞いてきたから一緒に来るのかと思ったが、来なかった。というか、冒険者なのかな。


 一応、連絡板に先に行ってるって書いておこう。



 

 グラントに地図を見せてもらい、早速現地に向かうことにした。


 いつもの水辺付近のところでグラントは立ち止まる。


 「ここら辺。祝子も探して〜。」


 あたりをくまなく探す。あちこち、壁面から床、天井まで、全ての場所を……


 お、これ、そうじゃない?


 「おお……ずっと先まで通じてるみたいだ。これだ!」


 わたしたちが探していたのは、洞穴。ここら辺のどこかに穴があって、そこを這って進んでいくと、例の場所に着くと伝え聞いたそうだ。にしてもこの穴、ちっちゃいなー。わたしがマッピングをしてた際に気づかなかったのも無理はない。 

 

 這って進んでいく。これ、猫耳にはどっちみち無理だったかもな。なにしろ、あいつでっかいもん。


 



 

 しばらく先に進むと、ところどころ水が滴っている。水辺にも程近いから、その関係かな。


 そこからしばらくはっていって、ようやくある場所に出たようだ。


 目の前に、塔のようなものがある。段々に円柱状の何かが積み重ねられていっていて、上から水が流れ落ちて行っている。非常に大きく、ピラミッドか古墳か、あるいは小さめの山のようなものを想起させる。水はほとんどがわたしより左の方向に流れていて、足元はそれほど濡れていない……

 

 この塔は、円柱状になっており、ちょうど頂点の部分から水が湧出している。もしや、ここから水が流れ出して、わたしの知っている川に流れ込んでいるのだろうか。


 伝え聞いた場所はここなのか?


 「わたしが聞いてるのは、穴までだから、ここは知らないけど……なんか、正解っぽくない?」


 そう答えるからには、グラントも感じているらしい。


 この、塔からひしひしと感じる、魔物の気配を。


 


 

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