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十四話 秘境未見の桃源郷

 十四話

 ここは一体……?


 ダンジョン内部のはずなのに、あたりに見えるのは、木や、草ばかりだ。地面も緑色。芝生じゃないか。そして何より……


 遠くに見える山々、の上に見える、青い空!


 ここは洞窟の中だぞ?だのに、こんな晴天だなんて……


 というか、あの洞窟も、本当はちょっとおかしいんだよ。あんな広さの洞窟、あんなものがあったら、あそこらへんは地面をちょっと掘ったらすぐダンジョンに着くなんて事になるじゃん。


 まあいいや。


 多分、ここからはここを攻略するということになるのかな。ちょっとみれて満足したし、今日は帰ろう……




 そうして後ろを振り向くも、きた時に通った道がない。しまった。あの道、一方通行だったのか……







 

 仕方がないので、ひとまず左手の応急処置だけして、ここを探索することにした。付近を見回すと、森のように見える場所があったので、そこへ向かう。近くの適当な木を探して枝をもぎり、刀で整形する。片手が使えないと、結ぶということ事だけでも、非常にやりにくいな。


 皮膚に当たらないように刀で表面を滑らかに削り、左手に当てがって、適当な葉っぱで巻いて固定しておく。触ってみたところ、多分折れているのは上腕骨なので、そこに当てておいた。これでいいのかは知らないがちょっとは楽になった。骨折はしているが、これでしばらく動けるだろう。


 さて……結局、帰るあてはないので、その森に入る。森の中は、上が葉っぱに塞がれているから少し薄暗く、足元に根っこがあちらこちらに張り巡らされていて歩きづらいが。あんまり良いことがないが、薄暗さはさっきまでの洞窟で暗いのに慣れていたわたしにはちょうどいい。


 とりあえず方向を決めて一直線に歩いてみる。景色は一向に変わらないが、どうやらわたしは登っているらしい。地面の木の根で平坦ではなく、登ったり降りたりしているが、総合してわたしは標高を上げているだろう。しかしこの靴、歩きづらいな……頑丈だと聞いて、それほど何も考えずに買ったが、山行を想定していなかった。今度、別のものでも買ってみよう。


 ふと、後ろから物音がしたような気がした。なんだろうと振り返ってみるが、どうやら何もいないように見える。うーん?


 森に入って小一時間ほどすると、目の前の森がひらけてきた。どうやら何かあるのだろうか、と思ったが、そこで非常に良いものを見つけた。


 木も草も生えていない、まっさらな土。山肌に設置してあって、斜面になっているが、ところどころに丸太が設置してあり、擬似的に階段のようになっている。おそらく、ここにきた冒険者のうち誰かが作ったのだろう。相当手間がかかるだろうが、よく頑張ったものだ。


 冒険者の作った人工物があるということは、その人はこれを使ってすることがあるということで、つまりこれをたどって行けば人に会える、もしかしたら、その人も地上には帰りたいわけだから、下手すれば地上に戻れるということにすらなる。これほど整備されている山道なら、降りるのもすぐだろう。 


 もしこれが、ここに入ったが最後でられずにここでずっと暮らしている人が作ったものだったら……背筋が寒くなるので、そのことは考えないようにした。


 考察を終えて山を降りようとしていると、


 視界の端に一瞬、ちらりと白いものが映った。すごい速度だったが、なんとか避けることができた。その正体は……


 大きいうさぎ。これが、この階層の魔物か。この状態で会いたくはなかったが、うさぎか。あまり強いイメージはない。


 右手で刀を抜いて構える。


 わたしが少しだけ前に出ると、相手が反応してピクっと動いたような気がしたから、わたしもそれ以上前にでるのはよした。

 

 うさぎはわたしの反応を見ているようで、こちらをじろりと睨んで臨戦態勢を取る。




 一通り、私のことを見まわした後、意を決したように正面から飛びかかってきた。

 

 それに反応して、うさぎの首元目掛けて刀を振るうと、刃筋は、無抵抗に宙に浮くうさぎの首へと入り込み、そのまま頭と胴体を離断することができた。


 動きは十分反応できるくらい遅いし、首も硬くない。このままなら十分に対応できそうだ。


 しかし、わたし。片手でよくこんなに上手く切れたな。ミノタウロスも、切る前から結構切れる気がしてたし、わたし、上達してんのかな?


 自分の刀の手応えを振り返るようにわたしの手をみると、刀身になぞの金色のもやがかかっていることに気がついた。なんだこりゃあ。


 



 刀を強く握って構えると、刀身に、例のもやが出る。


 適当に周囲の木を切ってみると、ない時とは段違いに手応えが薄くなっている。木が柔らかくなった感覚はないが、振った時に手にかかる感触が弱くなっているような……


 このもやでわたしの剣撃が強化されているのだろうか。ステータスを確認してみると前見た時より【剣術】がレベルアップしている。これか?


ハフリ ユメ

役割【神巫】

Lv:10

HP43/95

MP85/95

筋力:95

魔力:95

速度:95

防御:95

抵抗:95

【スキル】

:▶︎【剣術】Lv.5 【経験値アップ】Lv.1【地図作成】Lv.1


 なんかタブがついている。開けるぞ。

 

ハフリ ユメ

役割【神巫】

Lv:10

HP43/95

MP85/95

筋力:95

魔力:95

速度:95

防御:95

抵抗:95

【スキル】

:▼【剣術】Lv.5【経験値アップ】Lv.1【地図作成】Lv.1

   【闘気】Lv.1


 ことの順序から考えると、この【闘気】というのがこの当該事象にあたるのだろう。


 しかし、気が付かなかったなあ。レベルアップのアナウンスも聞こえなかったし…ミノタウロスとの最終戦で目覚めたのだろうか。確かに、最後の一撃は、片手なのに大きく傷をつけることができていた。


 すごい技術だ……これまで倒せなかった敵も、これで……


 ワクワクしながらそのオーラを見ているというか、何もしていないのに息切れがしてきた。このオーラ、出すだけで体力を消費するのか。これを考えなしに発動し続けるのはやめておいたほうがいいらしい。


 わたしの使える手札が増えた。これで、今後はまたいろんなものを切れるな。

 




 


 気を取り直してそのまま山道を降りていくと、ちょっと開けたところにでた。


 三十畳ほどはある広場で、その近辺だけが草木を払われている。広場には、中心に大きい丸太の机があり、それを囲むように椅子っぽく丸太が加工されてある。ここまでの道と同様、冒険者が作りでもしたのか。


 ちょうど疲れてきたし、ここでちょっと休んでいこうか。あまり魔物も強くないとはいえ、左手の痛みに地味に体力を奪われている。


 椅子らしい丸太に腰掛ける。


 ふう。どのくらい降りてきたか……足は疲れてないんだけど、体が変な疲れ方を……


 この程度で疲れてちゃ、いつ山を降りれるかわかんないぞ。気張らないとね。


 そういえば、この椅子近づいて見て思ったが、ここにあるもの全てに何か変な模様が書いてある。なんだろう?これ?


 


 端の椅子に座って模様をみていると、後ろから急に何かがぶつかってきた。


 痛ったい!左手を突けないので、転んでしまった。さっきのうさぎか?後ろを見ようと振り返った瞬間、逆に前から何かが飛んできて、ぶつかる。何が起こっているんだ?


 最も近くにいるものを掴んで投げ飛ばし、そちらの方に逃げる。幸いそちらの方に木があったから、木を背面にして正面を向くことができた。


 広場の端で前を向くと、そこには夥しい数のうさぎがいた。こりゃあ………


 わたしはさっきまでとは違って正面を向いているが、構わずに襲いかかってくる。ただし、数匹は同時に。


 ちょうど一直線になるようなタイミングで切り払う。この手でも一回の刀の振りで何匹でも切れるが、明らかに異常なこの数。わたしが振った直後にもさらにうさぎが飛んできて、胴体に直撃する。飛びついてきたウサギがそのまま歯を見せるので、刀を手放して頭を握り潰す。


 しょうがないとはいえ、刀も手放してしまった。もう、しょうがない……


 とっさにわたしの後ろにある木を掴んで引き抜き、その根本を掴んで振り回した。


 剣ではないので【剣術】はのらず、非常に振り回しづらいが、普通に長くて先端に葉もついている。そして何より、この丸太は、太い。次々と飛びかかってくるウサギに丸太が衝突し、当たった瞬間ウサギは弾け飛ぶ。武器としては有用だな。


 だんだん手が疲れてきた。やや数も減ってきたかと思ったので、一瞬丸太を手放すと、その途端にうさぎがぶつかってきた。


 かなりの数を倒したはずなのに、相当数のウサギがまだ残っている。この丸太を見て、襲いかかるのを一旦やめたのか。頭も良い…


 まずい。さっきのウサギが鳩尾に入った。痛みと呼吸困難で前向きに肘をついて倒れた。ウサギはそんなわたしにも構わず、またどんどんやってくるだろう。次はどうする。次は……


 突然に、目の前が急に光り轟音がなり響く。何かと思う暇も無く急に豪雨が降ってくる。


 あまりの降雨量に、前も後ろもわからない。えっと、降り止まないところから、雨だろう。雷が落ちたのか。


 状況が目でわからないが、うさぎはもういないらしい。


 これ以上ここにいると、わたしもびしょ濡れになるし、土もドロドロでさらに訳がわからなくなるだろう。


 ええと、刀、刀。とにかく、さっさと下山だ。 



 しばらく歩き続けると、麓に着いた。幸いにも麓にはさっきと同じく、光り輝く穴があり、豪雨から躊躇なくその穴に入る。


 

 そこを抜けると、さっきの部屋のすぐ横にある扉に繋がっていた。


 もう全部びしょ濡れで大変だ。今日はさっさと家に帰ってゆっくりしよう。

 

 しかし、振り返って見ると、かなり過酷な階だったな。最初は弱いうさぎだと思っていたが、次に来た時は大量に。あれは質を量でカバーしていたのか。


 まあ一筋縄ではいかないのは一階も同じだ。二階はどう攻略しようか?

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