表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/18

第8章 ― 時の残響

ケルベロスは動かなかった。

ポケットに手を入れたまま、数百の技術兵器が機械の怒りを込めて彼を狙う。

照準レーザーの光が黄金の瞳に反射し、彼は穏やかな――ほとんど嘲るような――笑みを返した。


防衛システム:

――対象確認。脅威レベル:極限。排除プロトコル、起動。


空気が震えた。

無数のレーザーが一斉に放たれ、光の嵐が天を裂いた。

その一筋一筋が山を蒸発させるほどの力を持ち、ケルベロスのもとへ収束する。


だが、衝突する前に――彼はただ、足を軽く踏み鳴らした。


音は小さかった。

だが、宇宙そのものが神の「沈黙せよ」という命令に従ったかのように応じた。


時間が止まった。


光の粒子が空中で凍り、エネルギーの線は虚無に彫刻された彫像のように停止した。

火花は過去と未来の狭間で閉じ込められたまま、動かない。


ケルベロスは左手の指をわずかに上げた。

息のように軽い仕草だった。


そして――全てが反転した。


弾丸も、光線も、粒子も――全てが上昇した。

重力が退き、空間が歪み、世界が逆に呼吸した。


彼は二歩だけ進んだ。

たったそれだけで、次の瞬間には都市の正門の前に立っていた。


時間が再び流れ始めた。

音が一斉に爆ぜ、空気が唸り、レーザーは天へと飛び去り、夜空で花火のように散った。


ケルベロスは低く笑った。


ケルベロス:

――面白い玩具だ……だが、俺には無意味だ。

俺は「時」そのもの。現実。全能。


彼は穏やかで傲慢な声で空を見上げた。


――俺が歩けば、宇宙の方が俺に合わせる。


遠く、安全な距離で見ていたライザは、口を開けたまま呟いた。


ライザ:

――そ、そんな馬鹿な……同盟王国のどれも、この防衛を突破できなかったのに……。


彼女が理解しようとする間に、巨大な門が音を立てて開いた。

金属の響きが谷にこだまし、その奥から現れたのは巨大な軍勢だった。

人と狼が混ざり合った戦士たち。

古代の紋章を刻んだ部族鎧をまとい、エネルギーブレードを携えている。


ケルベロスは一切ためらわず、その間を歩いた。

襲いかかろうとしていた兵士たちは――動きを止めた。


数秒で、戦場の咆哮は沈黙へと変わった。


そして、一人、また一人と膝をついた。

最前列の戦士たちは地に伏し、部族の首領たちは頭を下げた。

それは恐怖によるものではなかった。死への怯えではない――もっと根源的なものだった。


彼らは「感じた」。


ケルベロスの放つものはエネルギーではない。

魂そのものを歪ませる「存在」だった。

それは太陽の中心を覗き込み、太陽の方から「見返される」ような感覚。


ライザは周囲を見回し、混乱していた。


ライザ:

――な、なんで……みんな、跪いてるの?

彼女は気づいていなかった。

アルファたちが感じ取ったもの――それは神々の光ではなかった。

この宇宙にも、どの次元にも属さない何か。

創造の「前」に存在していた、再び現れてはならないもの。


そして、

何千年もの時を経て――

原初の狼たちでさえ、恐怖という感情を思い出したのだった。

―――


次の章へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ