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第7章 ― 原初の狼たちの星

ケルベロスは、四千億光年の彼方を真空の中で歩いていた。まるで日曜の散歩でもしているかのように、ポケットに手を突っ込みながら――次元を越えて。

耳に揺れるイヤリングは小さなエネルギーの嵐のようにチリチリと鳴り、彼の一歩ごとに空間が歪んだ。目的地は、次なる「汚染された宇宙」。


時間がどれほど経ったのかは分からない――もはや彼の周囲では、時間すら凡人の法則に従っていなかった。

緑に輝く銀河の幕を抜けたとき、ケルベロスは異質な波動を感じ取った。森とターコイズ色の海に覆われた惑星から、異常な力が放たれていたのだ。


ケルベロス:

――ふむ。この星には強力なエネルギーを感じるな。……時間をかける価値があるか、確かめてみるか。


指を鳴らすと、彼の姿は消えた。

大気圏を自由落下しながら、風を裂くマントが翻る。やがて彼は「生きている森」へと降下した――呼吸をする木々、囁く花々、昼でも輝く蛍。


ケルベロスは音もなく着地し、スーツの襟を整えて周囲を見回した。


ケルベロス(微笑して):

――認めよう……ここは美しい。賞賛に値する。


その瞬間、低い唸り声が響いた。

考えを終える前に、獣のような女性が襲いかかった。鋭い爪が閃く。


ケルベロス(振り向かずに):

――……まったく、これか。


軽く身をかがめ、攻撃をかわした。

獣は背後に着地する。


ゆっくりと体を回したケルベロスの瞳が、暗闇の中で光を放つ。低く、威厳ある声が響いた。


ケルベロス:

――お前は誰だ?


女は二足で立ち上がった。

背は高く――おそらく一メートル九十二――肉体からは圧倒的な力が滲んでいた。

野生の瞳、鋭い牙、警戒する尻尾。


女:

――あたしの名はライザ。


ケルベロス:

――ライザ、か。どの宇宙の果てから来た? どの星から、どの混沌から、どの創造の気まぐれから生まれた?


ライザは苛立って唸った。


ライザ:

――何言ってんのよ? 一人で生まれた奴なんていないでしょ。あんたがまた空から落ちてきた敵だと思ったのよ。


ケルベロスは眉を上げた。


ケルベロス:

――敵が空から落ちてくる?……この星、案外退屈しないな。

ライザが空を指さした。

雲の間で赤いポータルが渦を巻き、まるで宇宙の

傷口のように脈打っていた。


ライザ:

――あれが《血のブラッドホール》。あそこから堕ちてくるのが“汚染者コラプト”。

あたしたちの部族も、他の王国も、奴らを封じるために戦ってるの。


ケルベロスはしばし見上げ、そして彼女に視線を戻した。

冷たくも楽しげな顔で。


ケルベロス:

――面白い。……だが、まだ俺に挑むつもりか?


ライザ(腕を組みながら):

――まだ答えてないでしょ。あんた、何者なの?


ケルベロスの目が細められた。


ケルベロス:

――俺は宇宙そのものだ。


ライザは眉をひそめ、呆れたように笑った。


ライザ:

――“宇宙そのもの”? ずいぶん自信家ね。ここじゃ、あんたはただの侵入者よ。


その瞬間、ケルベロスの姿が消えた。

音も光もなく――時間そのものが一瞬飛び越えられたように。

次の瞬間には、彼はライザの目の前にいた。

黄金の瞳が彼女の心臓を凍らせる。


ケルベロス(低く静かに):

――どういうつもりだ? 俺が望めば、この星を一瞬で――指一つで――消し去れるのだぞ。


ライザの体は強張っていたが、尻尾がわずかに震えた。


ライザ(ごくりと喉を鳴らし):

――わ、分かったわよ。落ち着きなさい、“宇宙さん”。ついてきなさい、あたしの部族――いや、王国に案内する。


ケルベロス(ため息をついて):

――好きにしろ。たまには歩くのも悪くない。


ケルベロスはライザの後ろを静かに歩いた。

その足跡のたびに、周囲の木々の葉が舞い上がり、金属の靴の下で螺旋を描く。

まるで自然そのものが、彼の存在を畏れ敬っているかのように。


しばらく進むと、目の前の空間が白く裂けた。

眩い光の門――ライザが先に入り、姿を消す。

ケルベロスも好奇心のままにその後を追った。


光の向こうに現れたのは、まるで異世界の景観だった。

森の中に広がる超未来都市。

金属の結晶でできた塔、エネルギーでつながる橋、そして砲台を備えた城壁。

空にはエネルギーコードが流れ、狼型ドローンが空を警備している。


ケルベロス(感嘆して):

――驚いたな……まさか、野生の星でこれほどの文明を見るとは。


ライザは誇らしげに笑った。


ライザ:

――ここが《狼の都》。獣人族の故郷よ。原初の者たちが築いた場所。


その言葉で、ケルベロスの表情が変わった。

彼の瞳が鋭く光る。


ケルベロス:

――……今、“原初”と言ったな?


ライザ:

――ええ。何か問題でも?


ケルベロス(冷たく):

――いや……ようやく、すべてが繋がっただけだ。


彼はゆっくりと浮上し、城門へと向かった。

ライザが驚いて叫ぶ。


ライザ:

――ちょ、ちょっと! 勝手に入っちゃダメ! 護衛が必要なのよ!


その時、空気を切り裂くように警報が鳴り響いた。


アラーム:

――侵入者を確認。防衛システム起動。攻撃準備完了。


数百の砲塔、エネルギーライフル、そして都市防衛システムの光線砲が一斉にケルベロスに照準を合わせた。


ライザ(叫びながら走る):

――ケルベロス! お願い、何もするな! 暴れないで!


ケルベロスは片眉を上げ、淡々と周囲を見渡した。


ケルベロス(ぼそりと):

――どこの世界に行っても同じだな……新しい文明、新しい兵器、そして――俺への敬意の欠片もない。


薄く笑いが浮かぶ。


ケルベロス(皮肉めいて):

――いいだろう、“宇宙”よ……少しは俺を楽しませてみろ。

―――


次の章へ続く。

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