第28章 ― 静かに苦しむ森
ケルベロスは光の鳥のように宇宙を横切り、その背後には虚無の歪みだけを残した。
瞬く間に、彼は完全に緑に覆われた一つの惑星の前に現れた。生命が脈打つ――いや、かろうじて残っている生命が。
彼は落下した。
その衝撃は抑えられた隕石のようだった。大地が震え、地震波が広がったが、惑星は耐えた。まるでこの存在を世界そのものが認識しているかのように。
ケルベロスは立ち上がった。
周囲には、視界の果てまで広がる巨大な森があった。
五十メートルを超える樹木。
塔のように太い幹。
空を覆い隠すほどの樹冠。
本来なら、生命力に満ち溢れているはずの場所。
だが、何かがおかしかった。
ケルベロスは視線を落とした。
地面には倒れた妖精たちが散らばっていた。
小さな身体は浅い呼吸を繰り返し、
羽は疲弊によって裂けている。
消えかけた蛍、
震える蝶――飛ぶ力を失っていた。
まるで森が生きているのに……同時に死につつあるかのようだった。
ケルベロスは一人の妖精のもとへ歩み寄った。
膝をつく。
二本の指で、その腕を掴んだ。
支えるに足る力、
傷つけないための絶対的な繊細さ。
彼はそっと息を吹きかけ、目を覚まさせようとした。
何も起こらない。
妖精は反応しなかった。
ケルベロスは立ち上がり、近くの一本の木へ向かった。
幹に指を当てると、木は静かに開き、内側が柔らかな、生きた寝床のような空間を形作った。
彼はそこへ妖精を置いた。
極限まで慎重に、
身体を整え、楽な姿勢になるように。
そして、森の方へと顔を向けた。
歩き始めた。
一歩一歩が計算されていた。
体重を移し、進路を変え、
倒れた生命のある地面を避ける。
すべてを無視することもできた。
だが、彼はそうしなかった。
進むうちに、幹の中の妖精が目を覚ました。
苦しそうに身体を引きずり、開口部まで這い出る。
そして見た。
巨大な樹々の間を、
黒いスーツを着た一人の男が、
この痛みに満ちた光景の中で、あり得ないほど静かに歩いている。
弱り切った身体で、力を振り絞った。
「ねぇ……」
声は今にも消えそうだった。
ケルベロスは足を止めた。
肩越しに顔を向け、
やがて完全に振り返り、彼女のもとへ戻ってきた。
妖精は苦しそうに呼吸をし、目に涙を浮かべていた。
ケルベロスは軽く身をかがめた。
彼女にとっては、森の光を背にした巨人――巨大な影のように見えた。
「ここで何が起きた?」
低い声で、彼は尋ねた。
妖精は喉を鳴らし、かすれた声で答えた。
「へ……変な……存在が……現れたの……」
「最初は……優しそう……だった……」
「でも……悪だった……」
「言葉を……話して……そのあと……」
「私たちは……ひどい痛みを感じた……」
「誰も死ななかった……けど……痛すぎて……気を失った……」
ケルベロスはわずかに眉をひそめた。
「どうやって、そんなことをした?」
「わからない……」
妖精は疲れ切っていた。
「ただ……話しただけ……」
「言葉が……中から……痛かった……」
ケルベロスは一瞬、目を閉じた。
「理解した。」
彼は立ち去ろうとした。
「待って!」
妖精は残された力を振り絞って叫んだ。
「もう一つだけ!」
ケルベロスは背を向けたまま止まった。
「話せ。」
「気をつけて……」
彼女は言った。
「その存在……」
「背が高くて……」
「濃い緑の目をして……」
「牙みたいな歯がある……」
ケルベロスは再び歩き出し、穏やかな声が森に響いた。
「分かった。情報に感謝する。」
「だが、見た目は気にしない。」
「外見とは、肉体の属性に過ぎない……それ以上でも以下でもない。」
妖精は、巨大な樹々の間へと消えていく彼の背中を見つめていた。
その胸に、生まれたものがあった。
希望でもなく。
信仰でもない。
ただ――
残酷な宇宙の中でも、
弱き者を踏まぬよう、静かに歩く存在がいるという感覚。
森は沈黙のまま、ケルベロスが去るのを見送っていた。
そして、長い時を経て初めて――
その惑星は、ほんの少しだけ、楽に息をした。
次の章へ続く。




