第17章 ― 予見できるものの絶滅
プレヴィニールは叫んだ。
引き裂かれるような、狂気じみた叫び。
その声は、この場そのものの織り目を傷つけた。
「――全モンスター!
――あの忌まわしき存在を攻撃しろ!!」
混沌が応えた。
数十億の怪物が、同時に動いた。
腐肉、牙、爪、憎悪でできた生きた大海原。
全面攻勢の重みで赤い大地は震え、
存在しないはずの空は、今にも割れそうだった。
ケルベロスは、動かなかった。
彼は――
指を一本、動かした。
現実が、壊れた。
爆発したわけではない。
引き裂かれたわけでもない。
失敗したのだ。
空間は自らに折り畳まれ、
すべての怪物はプレヴィニールの支配領域から弾き飛ばされた。
宇宙の塵のように投げ捨てられ、
この局所的存在の外へと放逐される。
ある者は虚無に消え、
ある者は、もはや存在しない法則に押し潰された。
プレヴィニールは目を見開いた。
ついに、恐怖が傲慢を打ち破った。
「……な、なんだ……この……」
「……何という……絶対の力だ……?」
次の瞬間、
ケルベロスは消えた。
プレヴィニールは狂ったように振り向き、
あらゆる方向を探した。
――いない。
だが、ケルベロスはそこにいた。
ただ、
存在感を切っただけだった。
輝きを消した星が、
なお存在し続けるように。
そして――
彼はプレヴィニールの背後に現れた。
あまりにも近く、
虚無そのものが後退したかのようだった。
ケルベロスは、わずかに身を屈め、囁いた。
「――宇宙技能:無命」
そして……
彼は、去った。
ケルベロスは、
まるで最初から存在しなかったかのように、
その場から消え去った。
世界が、死に始めた。
宇宙構造は、
古びたコンクリートのように崩れ落ちる。
地面はあり得ない形で割れ、
空間は破片となって落ち、
プレヴィニールの王国は内側へと崩壊した。
――音なき、内破。
プレヴィニールは叫んだ。
純粋な絶望の叫び。
彼の身体は消え始め、
熱的死を迎える星のように、
断片へと分解されていく。
「――違う!!
――こんなこと、あり得ない!!」
「――俺は不死だ!!
――俺は宇宙的存在だ!!」
ケルベロスの声が、
あらゆる場所から――
そして、どこからでもなく響いた。
「――お前は宇宙的存在ではない」
「――お前は、コラプテッドだ」
「――そして、コラプテッドは消されるべき存在だ」
プレヴィニールは膝をついた。
自らの手を見つめる。
幽鬼のような、闇の手。
それが、
無の粒子へと崩れていく。
声は砕け、
最後の囁きが漏れた。
「……あれは……宇宙的存在じゃない……」
「……あれは……もっと、はるかに……」
プレヴィニールは、消えた。
同時に――
別の場所で、
惑星の空に開いていたレッドホールが閉じ始めた。
次元の傷は収縮し、
まるで最初から存在しなかったかのように消滅した。
空が、再び呼吸を始める。
そして、歓声が上がった。
「――イィィィィ!!
――やったぞぉぉぉ!!」
兵士たちは叫び、
武器を掲げ、
ある者は膝をつき、
ある者は涙を流した。
王国システムが確認する。
王国システム:
――敵、排除完了。
――エネルギー反応、未検出。
――脅威、完全に排除。
女王は静かに見つめ……
そして、微笑んだ。
「……正体が何であれ、あの存在は……」
「……彼だったのね」
隣で、ライザは拳を握り締めた。
「……本当に……彼だったの……?」
――遠く。
――はるか彼方。
ケルベロスは宇宙に浮かんでいた。
腕は自然に垂れ、
身体は力を抜き、
まるで取るに足らぬ作業を終えた直後のように。
誇りはない。
安堵もない。
ただ、連続性だけがあった。
「……まだ、コラプテッドは残っている」
独り言のように呟く。
「……祝賀も、質問も、好まない」
彼は一瞬、目を閉じた。
「……コラプテッドを倒したら、去る」
「……惑星には留まらない」
「……騒乱は好ましくない」
彼の身体が、
まるで確かな地面を踏むかのように整う。
そこが、完全な虚無であるにもかかわらず。
ケルベロスは手を上げ、
近くに浮かぶ別の惑星を見つめた。
そのオーラは、
異常を告げていた。
強大なコラプテッド。
ケルベロスは、わずかに笑った。
「……ふむ」
そして、消えた。
残されたのは――
静寂の中に漂う、
小さな宇宙の火種だけだった。
―――
次の章へ続く。




