表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/18

第15章 ― 恐怖の肉が息づく王国

ケルベロスは現れた。


周囲は闇に包まれていた。

それは単なる光の欠如ではない。

濃密で、生きている闇。


だが、地面は赤かった。

剥き出しの肉のように脈打ち、足元から熱を放ち、

まるで世界そのものが血を流しているかのようだった。


その時、声が響いた。


一点からではない。

あらゆる場所から、同時に。


空間が震え、

地面がうねり、

闇が振動した。


「――ケェェェェルベェェェェルゥゥゥゥス……」

「――お前は……ここに……いる……」


ケルベロスは顔を上げなかった。

ただ、頭を垂れ、影にその瞳を隠した。


「気づいてくれて嬉しい」

低く、抑えた声で彼は答えた。


「俺の存在を、これほど容易く感知できる存在は……そう多くない」


直後に、笑い声が響いた。


歪んだ笑い。

音とも論理とも噛み合わない、不正な笑い。


「――俺はお前を知っている……」

「――すべてを、知っている……」

「――俺は、プレヴィニールだ」


ケルベロスは動かない。


その内側で、刃のように冷たい思考が形を成した。


> プレヴィニール……「予見」。

可能性を視る存在。

空間、時間、因果。

……なんと歪んだ堕落者だ。




闇の中で、姿がゆっくりと顕れ始めた。

最初に現れたのは、緑の瞳。

毒を帯びた灯台のように、妖しく輝いている。


プレヴィニールは両腕を広げた。


「――俺は、予見するだけではない」

傲慢そのものの声で、彼は言った。


「――創り出すのだ」


世界が、爆ぜた。


虚無を引き裂き、三百億の怪物が溢れ出す。

歪んだ存在。

不可能な肉体。

襲う前から叫ぶ口。


赤い地面は、その重みで沸騰し、

存在しないはずの空は、恐怖に後退するかのようだった。


プレヴィニールの瞳が、さらに強く輝いた。


「――お前を破壊するのが、楽しみだぞ、ケルベロス」


沈黙。


ケルベロスは、まだ俯いたままだった。


――そして。


彼は、笑った。


間違った笑み。

英雄のものではない。

正義のものでもない。


それは、

暴力を言語として受け入れる存在の笑みだった。


ゆっくりと顔を上げる。


黄金の瞳が闇を裂き、

空間そのものが縮こまる。


「……いいだろう」

どこか楽しげに、彼は言った。


「――なら、遊ぼうじゃないか」


笑みが広がる。


「……フフフフフ」


その瞬間、最初の怪物が飛びかかった。


そして――

地獄は理解し始めた。


自らが、

取り返しのつかない過ちを犯したことを。


―――


次の章へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ