第13章 ― 歩く日食
ケルベロスは階段を下り始めた。
五歩、進んだ。
そして、止まった。
取るに足らない不快感に煩わされた者のように、かすかに息をついた。
「……階段。退屈だな」
次の瞬間、彼はただ――跳んだ。
それは普通の跳躍ではなかった。
主権を持つ落下。暴力的で、避けようのない降下。
その身体は空気を切り裂き、影は太陽の前に投げ出され、庭全体を覆う朧な日食となった。
誰もが空を見上げた。
ケルベロスは、両足で地面に着地した。
衝撃で大地が震え、亀裂が血管のように走り、衝撃波が周囲すべてを押し流した。
兵士も、ハイブリッドも、将校も吹き飛ばされる。
反射的に、全員が膝をついた。
命令ではない。
恐怖だった。
ケルベロスは歩き始めた。
一歩ごとに、空気が重くなる。
その時、サイレンが沈黙を引き裂いた。
システム:
――モンスター警報。モンスター警報。
――レッドホール出現。
――繰り返す。空にレッドホールを検知。
――モンスター・カテゴリー27。
跪いたハイブリッドたちは、ケルベロスのオーラに身体を押し潰される感覚を味わっていた。
汗が顔を伝う。
それでも歯を食いしばり、立ち上がり、武器庫へと走った。
その間も、システムは叫び続ける。
警報システム:
――全ハイブリッド、戦闘準備。
――全面防衛。
――レッドアラート。
空が裂けた。
レッドホールから現れたのは、歪んだ怪物――
八十八の頭を持つ巨大な蛇。
腐敗し、ねじれ、圧倒的な宇宙のオーラを脈打たせていた。
その存在だけで、正気は押し潰される。
ハイブリッドたちは装甲と先進兵器を装備し、武器庫から飛び出した。
頭を上げ、怪物を直視した瞬間、恐怖が全身を貫いた。
内側では、誰もが汗をかいていた。
外側では、誰一人崩れなかった。
彼らは知っていた。
――自分たちは、独りではない。
突如、砲火が空を切り裂いた。
エネルギー弾が神の雨のように降り注ぎ、怪物を撃ち抜く。
それは別の王国から来た戦士たち――
同じ血、同じ原初の群れに連なる狼たちだった。
女王の支配下に留まることを拒み、別の王国で進化した、かつての兄弟。
宇宙的存在であるはずの怪物は、血を流した。
傷が開く。
ケルベロスは低く笑った。
「……ふん。悪くない」
「宇宙存在を傷つけられる装備か。面白い」
彼は指を一本だけ上げ、腐敗した怪物を指さした。
「だが……それでも、あまりにも弱い」
その視線は、次元を貫いていた。
「理解した」
「コラプテッドは、この惑星にいる俺の存在を感じ取った」
「だから、これを送った……俺を止めるための、哀れな試みとしてな」
重い沈黙が落ちた。
「何一つ、通用しない」
ケルベロスは低く言った。
それでも、世界は聞いた。
「現実切断:爆裂」
彼の指先から、一本の光が生まれた。
それは普通の光ではない。
存在そのものの断裂だった。
空が激しく輝き、怪物は叫んだ。
その叫びは、現実そのものを引き裂くかのようだった。
全員が後ずさる。
ケルベロスは、ただ見ていた。
微笑みながら。
暴力的な力が、怪物を「最初から存在しなかった」かのように貫いた。
数分後、怪物は消えた。
何も残らなかった。
だが、レッドホールは――まだ開いていた。
ケルベロスは腕を下ろした。
「……今、奴は怒っている」
「それが、分かる」
システムが再び叫ぶ。
システム:
――警告。警告。
――敵接近中。
――数、未確認。
全員が空を見上げた。
レッドホールは、さらに広がっていた。
沈黙は、もはや恐怖よりも重かった。
「……最悪だ」
装甲兵の一人が呟いた。
「……あいつは誰なんだ……?」
「カテゴリー27を一撃で消した……」
「……なのに、俺たちは全員、あいつの前で跪いた……」
そして――
空が、完全に裂けた。
一斉に、二千体の怪物が現れた。
カテゴリー77。
未知。
システム:
――エラー。
――カテゴリー不明。
――システム過負荷。
――王国の全兵装を起動します。
王国が応えた。
大砲が立ち上がる。
機関砲が展開し、回転する。
レーザーが整列する。
巨大チェーンソーが唸りを上げる。
すべてが起動された。
システム:
――温度調整。
――装甲出力、700%上昇。
世界が終焉の準備をする中――
ケルベロスは、動かなかった。
ただ、見ていた。
虫を前にした裁定者のように。
「……それは」
彼は静かに言った。
「――何でもない」
―――
次の章へ続く。




