表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/18

第10章 ― 王座と韻のつまずき

ケルベロスが通るたび、世界はひざまずいた。

一万の銀河が身を縮め、その歩みの跡が詩のように刻まれる。

彼は titan(巨人)のごとく歩き、手をポケットに入れたまま、乙女のような静けさを漂わせた。

そのオーラは紋章、十万の星で鍛えられた巨神の証。


幾刻の後、石と鋼でできた海のような階段の前に、ライザとケルベロスは立ち止まった。

その段は空へ続く詩のようで、荘厳であり、同時に優しさを宿していた。


ライザ:

――ここよ。


ケルベロス(見上げながら):

――冗談だろ? これ全部登れってのか?


ライザ:

――ええ……高いの。とても。


ケルベロスはため息をつき、片眉を上げた。

まるで希少なワインを味わうような仕草で。


ケルベロス:

――俺が? 登る? 俺は宇宙、風、そして感覚そのもの。

音から生まれた存在だ――俺は登らん、地と空に命ずる。


ライザは猫のように目を見開き、驚いた。

――な、何を言ったの今?


次の瞬間、ケルベロスは雷のような速度で跳び上がり、

ライザを腕に抱き上げた――いたずらと献身が混ざる動き。

彼女の尻尾は揺れ、顔は赤く染まり、空気は混乱の渦となった。

指を鳴らすと、二人は瞬間移動――階段の頂、幻想の終わり。


ケルベロス(彼女をそっと床に降ろし、微笑して):

――終わりだ。

階段なんて、凡人の遊び。

俺には救うべき惑星があり、整えるべき宇宙がある。

時間は金――段差に費やすには惜しい。


ライザは耳から煙を上げるように深呼吸し、古い儀式のように心を落ち着かせた。

――分かったわ。入るわよ。


扉に触れると、静かに開いた。

内部は闇――灯も灯りもない、星の死骸のような回廊。


ライザ(囁く):

――静かに。音を立てないで。

女王は光を嫌い、口笛や声も許さないの。


だが、ケルベロスはすでに0.01秒先にいた。

星が瞬くほどの時間差で、彼は宙に浮かび、館の内装を眺めていた。


ケルベロス(小さく呟き):

――美しいな。


その声が反響した。


ライザは慌てて振り返り、猫のように扉を引っかいた。

――この馬鹿! 今ので終わりよ! 彼女が来る!


低く、獣のような唸り声が壁の奥から響いた。

城全体が揺れ、ライザは仰向けに倒れた。


ライザ(震え声で):

――終わりだ……死んだ……!


闇の中で、赤い瞳が開いた。

狼の息のような煙が漂い、古代の声が空気を貫いた。

声:

――誰が、我を乱す?


ケルベロスは滑るように前進した。

まるで禁書の目録を覗く旅人のように。


ケルベロス:

――その言葉、俺が言いたいところだな。

お前こそ、誰だ?


闇から現れたのは――巨大な狼の女王。

鋼を裂くような視線、夜色の毛並み、怒りに燃える呼吸。


女王:

――貴様、他界の侵入者か、それとも我らの同胞か?

耳も尻尾もない人の形で……どの面下げて来た?


ケルベロスは軽蔑を混ぜた声で返した。


ケルベロス:

――で、そっちは何だ? デカくて毛深い“王国のノミ宿”か?

言葉も礼儀も荒いとは、王にしては品がないな。

(そう、彼は侮辱さえも韻で言う。なぜなら、ケルベロスは全能にして――風変わりだからだ。)


女王は冷たい声で返す。


女王:

――挑発するな。さもなくば、苦痛の王座に縛りつけてやる。


二人の視線がぶつかる。

言葉は刃、魂は炎。

空間が縮み、城の息が止まった。


ケルベロス:

――お前こそ、俺に跪くべきだ。

お前の怒りなど微々たるもの、この王国など仮初の皮。


女王:

――跪けだと? 冗談。

私はお前の虚栄に屈しない。


緊張が高まる。

二人のオーラが潮のようにぶつかり、静寂を押し流す。


ライザは床を転がりながら泣き叫んだ。


ライザ:

――もう終わりだぁぁ! 王国も、世界も、全部おしまい!!


影が震え、空気は鉛と銀のように重くなった。

赤い瞳と金の瞳が交差した瞬間、

城全体が息を止めた。


――そして、部屋そのものが一つの韻を閉じた。


―――


次の章へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ