第3話:魔王、現る!そして、最初の「脱力系」対峙。-1
~ニャンてこった! 異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに? ~
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盗賊を退けた後、ミーコ、もといリリアーナは、魚人族の店主から焼きたての魚を振る舞われた。
香ばしい匂い、ふっくらとした身、そして何より、温かい。ミーコは一心不乱に魚を平らげた。人間の体になってから、こんなにも美味しいと感じたことはなかった。
「ニャー…(最高ニャ…)」
満足げに喉を鳴らそうとするが、やはりゴロゴロという音は出ない。代わりに、口からは「おいしいニャ…」と、人間の言葉が漏れてしまう。
アリア・グランツは、そんなリリアーナを、まるで聖なる存在を見るかのような眼差しで見つめていた。
彼女は、リリアーナの世話を甲斐甲斐しく焼き、食事の後は丁寧に体を拭いてくれた。
リリアーナは、アリアの献身的な態度に、少しだけ戸惑っていた。
飼い主以外に、こんなにも自分に尽くしてくれる人間がいるとは。
「リリアーナ様、貴方様のお力は、まさに天啓でございます。どうか、我々王国をお救いくださいませ!」
アリアは、真剣な眼差しでリリアーナに訴えかけた。リリアーナは、アリアの言葉の意味を半分も理解していなかったが、とりあえず「ニャー」と返事をしておいた。アリアはそれを「承知いたしました、というお言葉ですね!」と解釈し、感激していた。
翌日、リリアーナはアリアに連れられ、王国へと向かうことになった。
道中、アリアはリリアーナを大切に運び、常に快適な場所を選んでくれた。馬車の中はふかふかの絨毯が敷かれ、温かいミルクと、時折、干し魚が用意された。リリアーナは、その干し魚に夢中になり、道中の景色にはほとんど興味を示さなかった。
数日後、王国の中央に位置する壮麗な王都に到着した。巨大な城壁に囲まれた街は、活気に満ち、人々が行き交っている。
城門をくぐると、石畳の道がどこまでも続き、高くそびえる塔や、美しい彫刻が施された建物が並んでいた。
ミーコは、その光景に一瞬だけ目を奪われたが、すぐに「(高いニャ…登れないニャ…)」と、猫としての本能で評価を下した。
そして、リリアーナは王城へと案内された。
王城の広間は、これまでのミーコの人生では考えられないほど豪華絢爛だった。
天井は高く、ステンドグラスからは色とりどりの光が差し込んでいる。壁には壮大な絵画が飾られ、床には豪華な絨毯が敷き詰められている。その中央には、玉座に座る国王と王妃、そして数人の高官たちがいた。
アリアは、リリアーナを国王たちの前に案内し、深々と頭を下げた。
「陛下、王妃様。このお方が、かの伝説の賢者、リリアーナ様でございます。」
国王は、リリアーナの幼い見た目に一瞬戸惑ったようだが、アリアの言葉を信じ、厳かな表情でリリアーナに語りかけた。
「リリアーナ殿、貴殿がこの王国に現れたこと、神の思し召しに違いあるまい。我々はこの世界に迫る危機に瀕している。どうか、我らに知恵と力をお貸しいただきたい。」
国王は、世界の危機について語り始めた。古くから伝わる予言、そして最近になって顕現し始めた「魔王」の存在。魔王は、世界の魔力を吸い上げ、全てを枯渇させる「大いなる冬」をもたらそうとしているという。
リリアーナは、国王の真剣な話に、全く興味を示さなかった。長い話は苦手だ。特に、自分には関係のない、難しそうな話は。
「ニャー…(早く終わらないかな。お昼寝したいニャ…)」
リリアーナは、玉座の横に飾られた、キラキラと輝く装飾品に目を奪われていた。まるで、猫じゃらしの先についている飾りのようだ。
アリアは、リリアーナの様子を見て、国王に小声で説明した。
「陛下、賢者様は今、魔王の魔力の源を分析されているのです。その集中力は、我々凡人には計り知れません…!」
国王は、アリアの言葉に納得したように頷いた。
会議は続き、魔王の出現予測地点が、王国の東部に位置する「嘆きの荒野」であることが告げられた。王国軍は、明日にもそこへ進軍し、魔王を討伐する計画だという。アリアは、リリアーナに同行を求めた。
「リリアーナ様、どうか我々と共に、魔王討伐にご参加くださいませ!貴方様のお力なくしては、この世界は滅びてしまいます!」
アリアは、必死の形相でリリアーナに懇願した。リリアーナは、アリアの熱意に少しだけ気圧されたが、それよりも、アリアが「道中、美味しい食事を用意します」と付け加えた言葉に、心が動いた。
「ニャ…(美味しいもの、食べられるニャ?)」
「はい!最高級の食材を、腕利きの料理人がご用意いたします!」
アリアは、リリアーナの瞳が輝いたのを見て、確信した。
「承知いたしました、というお言葉ですね!さすが賢者様、世界の危機を前に、迷いなく立ち上がってくださいました!」
こうして、リリアーナは不本意ながらも、王国軍と共に魔王討伐へと向かうことになった。