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第11話:猫の遊びと、リスの誤算。-2

ゼノスもまた、リリアーナの行動を「戦略」と解釈するしかなかった。


彼の脳裏には、リリアーナが魔王の思考を読み、その弱点をピンポイントで突いた、悪魔的なまでの知略が描かれていた。


魔王軍の兵士たちは、リリアーナの予測不能な動きと、魔王の攻撃が当たらない光景に混乱し、その動きが鈍った。彼らの士気は、急速に低下していく。中には、あまりの恐怖に、武器を捨てて逃げ出す者まで現れた。


その頃、魔王城の外部では、王国軍が城門を突破し、城内へと侵入していた。

彼らの雄叫びが、城内に響き渡る。城壁を越え、次々と兵士たちが城内へと雪崩れ込んでいく。


アリアは、リリアーナの「奇策」が成功したと確信し、兵士たちを鼓舞する。彼女の顔には、勝利への確信と、リリアーナへの絶対的な信頼が満ちていた。


「全軍突撃!賢者様が、魔王の注意を引きつけ、その攻撃を無力化してくださっている!今こそ、魔王を討ち滅ぼす時だ!賢者様のご期待に応えるのだ!世界を救うために、我々はここにいる!この聖戦に、我々の全てを捧げよう!」


人間軍は、リリアーナの「犠牲」と「奇策」に奮い立ち、一斉に魔王城の奥へと突撃した。彼らの瞳には、勝利への確信が宿っていた。彼らは、リリアーナが魔王の注意を引きつけ、その隙に自分たちが突入するという、完璧な作戦が実行されていると信じていた。


ルーナは、魔王城の近くの丘の上から、その光景を眺めていた。彼女は手帳を膝に置き、ペンを顎に当てて、この最終局面を静かに見守っている。


「ふむ、いよいよ大詰めね。人間も魔族も、まだ賢者と魔王の真の正体には気づかないようだけど。これまでの観察から、彼らの行動がそれぞれの本能に忠実なものだというのは確信に変わったわ。」


ルーナの口元には、真実を知る者だけが浮かべる冷ややかな笑みが浮かんだ。彼女は、この「壮大な誤解」がどこまで続くのかを、興味深く見届けるつもりだった。


「結局、あの猫は、ただうるさいネズミが放つ光る玉で遊んでるだけ。その光る玉が、たまたま世界を滅ぼす魔力弾だったってだけのこと。あのリスは、自分の備蓄を邪魔されて怒ってるだけ。その備蓄が、たまたま世界の魔力だったってだけのこと。


なのに、周りの人間たちは、それを壮大な戦略だと勘違いしてるんだから、面白いわねぇ。この世界の命運は、猫とリスの気分次第ってわけね。


この結末がどうなるか、本当に楽しみだわ。ポップコーンでも用意するべきだったかしら。いや、それとも、この結末を書き記すための上質な筆記具かしらね。」


ルーナは、そう呟きながら、自身の懐から小さな手帳とペンを取り出した。彼女は、この奇妙な戦いの「真実」を、歴史の裏側にひっそりと記録するつもりだった。


リリアーナの「遊び」は、シエルの貯蔵装置のクリスタルに直撃した。

クリスタルは、リリアーナの猫パンチによって、かすかに亀裂が入る。その亀裂は、クリスタル全体に広がり、不気味な音を立てていた。シエルは、その光景に絶望の声を上げた。彼のリスとしての本能が、貯蔵品が破壊されることに、最大の恐怖を感じていた。


「ああ…私の備蓄が…!あの女め…!私の…私の大切なクリスタルに傷を…!私が、大いなる冬のために貯め込んだ、世界の魔力が…!全てが…!」


リリアーナは、クリスタルにじゃれつきながら、さらに奥へと進んでいく。彼女の鼻が、クリスタルの奥から漂ってくる、かすかな「キラキラ」の匂いを捉えていたのだ。それは、シエルが「大いなる冬」のために貯め込んだ、世界の魔力の「核」だった。その輝きは、リリアーナの好奇心を極限まで刺激する。


「ニャー…(もっと、すごいキラキラがあるニャ!)」


リリアーナの瞳が、好奇心に輝いていた。


彼女は、まだ気づいていない。

自分が、この世界の運命を左右する、最も重要な場所に辿り着いたことを。


彼女の視線の先には、これまでのどんな「おもちゃ」よりも、魅力的で、そして危険な輝きが待っていた。


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