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第9話:魔王の真の目的と、猫の不快感。-3

「ニャー…(日向ぼっこが気持ちよくないニャ…)」


リリアーナは、不機嫌そうに喉を鳴らした。猫にとって、毛並みの状態や、日向ぼっこの心地よさは、非常に重要なのだ。それが損なわれるのは、許しがたいことだった。彼女の体は、この世界の魔力の希薄化に、敏感に反応していた。


「リリアーナ様、何かご不満でもございますか?お体が冷えますか?それとも、何かお探しのものでも…?」


アリアが、心配そうに尋ねた。リリアーナは、アリアの言葉には答えず、空を見上げた。空の色も、以前よりも薄く、魔力が希薄になっているように感じられた。星の輝きも、どこか鈍い。


「ニャー…(この不快感、どこかで感じたニャ…)」


リリアーナの脳裏に、魔王シエルが「世界樹の根」を起動した平原での、あの不快な振動とピリピリとした空気がフラッシュバックした。あの時も、同じような不快感があった。そして、その不快感の原因は、あの「うるさいネズミ」だった。


「ニャー…(この不快感、あのうるさいネズミのせいニャ!)」


リリアーナは、直感した。この世界の不快感は、全て魔王シエルのせいだと。彼の「備蓄」という行動が、この世界の魔力を吸い上げ、リリアーナの快適さを奪っているのだと。

彼女の猫としての本能が、その「不快感」の原因を特定したのだ。それは、論理的な思考ではなく、純粋な感覚によるものだった。



リリアーナの瞳に、わずかな怒りが宿った。

猫は、自分の安らぎを邪魔されるのが大嫌いなのだ。

特に、しつこく追いかけ回し、美味しいお魚の邪魔をし、挙句の果てには日向ぼっこまで邪魔する「うるさいネズミ」は、許せない。

彼の存在は、ミーコの快適な猫生を脅かす、最大の邪魔者だった。


「ニャー…(あのネズミ、どかすニャ!)」


リリアーナは、そう決意した。この世界の運命など、彼女にはどうでもいい。

人間や魔族が何を話し合っているかなど、彼女の知ったことではない。


ただ、自分の快適さを取り戻すため、そして「うるさいネズミ」を排除するため、リリアーナは、本格的に魔王シエルを「どかす」行動に出ることを決意したのだった。

彼女の決意は、世界の命運を左右する、壮大な最終決戦へと繋がることを、誰も知る由もなかった。


その頃、ルーナは、王都の片隅にあるカフェテラスで、魔王軍の幹部たちの会話を盗み聞きしていた。彼女の口元には、冷ややかな笑みが浮かんでいる。

幹部たちの話す「大いなる冬」と、魔王シエルの「世界を救う計画」という言葉に、ルーナは先ほどの魔王のリスのような執着を重ね合わせ、自らの仮説をさらに確固たるものにしていった。


「ふむ、魔王様も大変ねぇ。世界を救うため、なんて大義名分を掲げちゃって。本人は、ただ冬の備蓄に必死なだけなのにね。リスの本能ってのは、本当に面白いわね。」


ルーナは、そう呟きながら、リリアーナが歩いていく方向へと目を向けた。彼女の瞳には、全てを見通すような、しかしどこか諦めにも似た光が宿っていた。


「そして、あの猫ちゃんは、自分の毛並みがパサつくのが気に入らないから、魔王を排除しようとしている。いやはや、この世界の命運は、猫とリスの気分次第ってわけね。人間も魔族も、みんな真面目すぎて滑稽だこと。彼らがこの真実に気づく日は、果たして来るのかしら。まあ、気づかない方が、世界は平和なのかもしれないわね。」


ルーナは、この世界の真実を知る、唯一の傍観者だった。そして、この「誤解」の連鎖が、どこまで続くのかを、密かに楽しんでいた。彼女にとって、この世界の戦いは、最高のエンターテイメントだった。


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