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第9話:魔王の真の目的と、猫の不快感。-2

ゼノスは、魔王の激しい焦燥感に、ただただ圧倒されていた。兵士たちの疲労は極限に達しており、これ以上の大規模な作戦は困難を極めるだろう。


しかし、魔王の命令には逆らえない。彼の忠誠心は、魔王の狂気じみた行動をも、崇高な使命として受け止めるよう彼を促していた。


「魔王様…!しかし、兵士たちの疲労は極限に…!それに、あの女の行動は予測不能です…!このままでは、我々の損害が…!これ以上の無理は、我々の戦力を壊滅させかねません!」


ゼノスは、必死に進言した。彼の脳裏には、これまでのリリアーナの奇妙な行動がフラッシュバックする。彼女の行動は、常に魔王軍の予測を裏切り、壊滅的な結果をもたらしてきた。


「構わん!躊躇するな、ゼノス!あの女の存在は、私の計画にとって最大の脅威だ!もはや、一刻の猶予もない!全軍を動員し、あの女を討ち滅ぼすのだ!そして、大いなる冬への備蓄を完遂する!あの女を排除し、世界の魔力を全て我が手に収めるのだ!」


シエルは、狂気にも似た執念を瞳に宿していた。彼のリスとしての本能が、何よりも「備蓄」を優先させていたのだ。

目の前の「あの女」の存在は、彼の備蓄への執念を、もはや狂気と呼べるレベルにまで高めていた。彼女は、彼の食料を狙う「天敵」であり、彼の生存を脅かす最大の脅威だった。


その頃、魔王軍の幹部たちが集まる、秘密の会議室では、ゼノスが、魔王シエルの真の目的について説明していた。会議室の空気は重く、幹部たちの顔には、疲労と不安が色濃く浮かんでいた。


「…魔王様は、来るべき『大いなる冬』に備え、この世界の全ての魔力を、ご自身に貯め込もうとされています。それは、この世界を救うための、崇高な計画なのです。」


ゼノスの言葉に、幹部たちは息を呑んだ。

彼らの間には、ざわめきが広がる。


「『大いなる冬』だと…!?まさか、あの予言が現実のものとなるのか!?」

「しかし、世界の全ての魔力を…!?それは、この世界を枯渇させるということではないのか!?我々魔族も、魔力がなければ生きられん!」


幹部たちは、ざわめき始めた。「大いなる冬」とは、古くから伝わる世界の終焉の予言だった。

世界の魔力が枯渇し、生命が死滅するという、恐ろしい予言。彼らは、魔王が世界を滅ぼそうとしていると信じていたため、この「世界を救う」という言葉に、大きな戸惑いを隠せないでいた。


ゼノスは、重い口調で続けた。彼の声は、会議室に響き渡るざわめきを鎮めるかのように、力強く響いた。


「魔王様は、この世界の魔力が、やがて枯渇することを見抜かれました。それは、避けられない運命なのです。そして、その『大いなる冬』を乗り越えるため、ご自身が世界の魔力を全て貯め込み、来るべき時に備えようとされているのです。魔王様は、この世界を滅ぼそうとしているのではありません。この世界を救おうとされているのです!そのために、ご自身の身を犠牲にされようとしているのです!」


ゼノスは、必死に魔王の行動を正当化しようとした。

彼の目には、シエルの行動が、全て「世界を救うための崇高な犠牲」と映っていた。


彼は、シエルのリスとしての本能が、ただ「備蓄」を優先しているだけだとは、夢にも思っていなかった。彼らは、魔王のリスとしての行動を、人間や魔族の論理で解釈しようと必死だった。



その頃、リリアーナは、王都の城下町を散策していた。

アリアは、リリアーナが「気分転換」をしているのだと解釈し、常に護衛として付き添っていた。

彼女は、リリアーナの行動の全てに意味を見出そうと、その一挙手一投足を見逃すまいと、熱心に観察していた。


「リリアーナ様、何かお気に召すものはございますか?何なりとお申し付けくださいませ!この街には、美味しいお魚料理の店もございますよ!」


アリアは、リリアーナの機嫌を取ろうと、色々な店を案内する。宝石店、布地店、香辛料店。しかし、リリアーナは、どの店にもあまり興味を示さない。彼女の意識は、別のことに集中していた。


「ニャー…(なんか、空気が乾燥するニャ…)」


リリアーナは、鼻をひくつかせた。

最近、この世界の空気が、妙に乾燥しているように感じるのだ。肌がカサカサするし、毛並みもパサつくような気がする。毛づくろいをしても、以前のような滑らかさがない。


日向ぼっこをしても、以前のような心地よさがない。ポカポカとした温かさの中に、どこかピリピリとした静電気が混じっているような、不快な感覚がつきまとっていた。それは、猫にとって、非常に居心地の悪い状態だった。


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