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第8話:歴史を揺るがす「お昼寝」。-1

挿絵(By みてみん)

~ニャンてこった! 異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに? ~

______________________________________



リリアーナと魔王シエルの執拗な「追いかけっこ」は、数日に及んだ。


シエルは、自身の備蓄を荒らされ、秘密を暴かれた怒りから、リリアーナの魔力の残滓を辿り、執念深く追跡を続けた。彼の体は疲弊し、魔力も消耗していく一方だったが、リスとしての本能が彼を突き動かし、決して諦めることはなかった。


その間、リリアーナは、ただ「うるさいネズミ」から逃れるため、そして「面白いもの」を見つけるために、猫らしい身軽さと知恵で、魔王の追跡をかわし続けていた。


彼女の行動は、結果的に魔王軍の隠された拠点を次々と暴き、人間側の優勢を決定づけていた。


王国軍は、賢者リリアーナの「神出鬼没な奇策」に歓喜し、その名を称賛した。


アリア・グランツは、リリアーナの行動を全て、魔王を打倒するための計算され尽くした戦略だと信じて疑わない。彼女の脳裏には、リリアーナが魔王の思考を読み、その弱点をピンポイントで突いた、悪魔的なまでの知略が鮮明に描かれていた。


「リリアーナ様!貴方様のおかげで、魔王軍の補給路は壊滅し、秘密拠点も次々と暴かれました!これほどまでに周到な戦略、まさに神の御業でございます!」


アリアは、リリアーナの隣で、その顔を紅潮させていた。彼女の瞳は、リリアーナへの絶対的な信頼と、揺るぎない確信で輝いている。兵士たちもまた、賢者様の奇策に奮い立ち、勝利の雄叫びを上げていた。彼らにとって、リリアーナはもはや、戦場の女神そのものだった。


しかし、リリアーナの頭の中は、全く別のことで満たされていた。


「ニャー…(お魚、美味しいニャ…)」


彼女は、旅の途中で偶然見つけた、干し魚の切れ端を幸せそうに口にしていた。

外で何が起こっているかなど、彼女には全く関係ない。

ただ、美味しいお魚が見つかったことに満足し、その幸福感に浸っていた。


一方、魔王軍は、度重なる打撃に混乱の極みにあった。

魔王シエルは、リリアーナを捕らえることができないまま、彼のリスとしての本能が、次の段階へと彼を突き動かし始めていた。

それは、来るべき「大いなる冬」への、さらなる大規模で、そしてより強固な備蓄計画だった。彼の焦燥感は、もはや限界に達していた。


「キィィィィィィィッ!あの女め…!私の備蓄をこれ以上邪魔させるわけにはいかん!ゼノス!全軍を招集し、最終決戦の準備を急げ!『大いなる冬』は待ってくれんぞ!」


シエルは、荒れ狂うような声で叫んだ。彼のリスとしての本能が、彼に休息を許さなかった。


「魔王様…!しかし、兵士たちの疲労は極限に…!それに、あの女の行動は予測不能です…!」

「構わん!躊躇するな、ゼノス!あの女の存在は、私の計画にとって最大の脅威だ!もはや、一刻の猶予もない!全軍を動員し、あの女を討ち滅ぼすのだ!」


シエルは、狂気にも似た執念を瞳に宿していた。彼のリスとしての本能が、何よりも「備蓄」を優先させていたのだ。


数日後、王国軍と魔王軍は、再び大規模な衝突を繰り広げていた。


場所は、かつて魔王が「世界樹の根」を起動しようとした平原からほど近い、岩がゴツゴツと突き出た荒涼とした谷だった。両軍の兵士たちが、怒号を上げながら激しくぶつかり合う。魔法が飛び交い、剣戟の音が響き渡る、まさに地獄絵図のような戦場だった。


リリアーナは、アリアの隣で、戦場の様子をぼんやりと眺めていた。彼女の瞳は、戦場の喧騒には全く興味を示さず、谷の岩肌に咲く、小さな白い花に釘付けになっていた。


「ニャー…(可愛い花ニャ…)」


アリアは、そんなリリアーナの様子を見て、再び深読みする。


「リリアーナ様は、この苛烈な戦場においても、生命の輝きを見出していらっしゃる…!そのお姿こそ、我々が目指すべき理想の賢者像でございます!」


アリアは、リリアーナの行動を「戦場の真理を見抜く賢者の姿」と解釈し、兵士たちに熱弁を振るっていた。兵士たちは、アリアの言葉に感銘を受け、さらに士気を高めていく。


その時だった。


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