勇者の役目
この度はこの作品を読んでくださりありがとうございます。
『勇者レイたちよ、良くぞ魔王を撃ち倒し、この国を守ってくれた。其方たちの働きは未来永劫語り継がれるであろう。この度は本当にご苦労だった』
国全体にパチパチと拍手の音が鳴り響く。
その音を聞いて俺たち勇者パーティーは役目を達成したことを実感した。
周りの仲間を見ると、タンクのアギは照れくさそうに鼻をかき、魔術師のセイラはポロポロと涙をこぼし、俺の恋人であり、僧侶であるノアも珍しく涙をポロポロとこぼしている。
ノアの泣く姿なんて初めて見た、、
普段クールでしっかりしているノアが泣いている姿はなんだか新鮮で今すぐ抱きしめたくなったが、その衝動をグッと堪え、仲間達に向かって明るく笑った。
『お前ら、こんな機会一生に一度なんだから笑っていようや!』
『そうだな、なんかレイがリーダーぶってるのはムカつくけど』
『そうね、珍しくレイの意見に賛成よ。リーダーぶってるのはムカつくけど』
『確かに、なんかムカつく』
『お前らひどくね!』
日頃の俺をなんと思っているのやら、でも、いい仲間に恵まれたと思う。
この世界に召喚された時、俺はまだ15歳で、ここはどこなんだろう、家族にもう会えないのだろうか、なんて思ってしまって、今にも泣きそうだった。
そんな時、俺を助けてくれたのは同い年の僧侶であるノアだった。
ノアは白髪のボブで緑色の瞳をしていて、当時の俺は天使かなんかだと思った。
あの時のノアは俺を優しく抱きしめてくれて、その時の温もりは今でも鮮明に覚えている。
今ではクールなツンデレになったが、それもそれで可愛いと思う。
それから、アギが仲間になってこの世界で初めての男友達ができた。
アギは明るくて常に勝気で、強い相手にどんどん挑んで行くから命からがら逃げたことが何度もあった。
俺が異世界に来てから半年が経った頃にセイラが仲間に加わった。
セイラの第一印象はギャルだった。
セイラはウルフカットの赤髪で毛先が黄緑色でくるくるしていて、初めは本当に大丈夫か、と思ってしまった。
しかし、セイラは俺の予想を裏腹にしっかりしていて、口調もギャルっぽくなくて、今ではパーティーの頼れるお姉さん的立ち位置だ。
この仲間達でいろんな困難を乗り越えたな。
そう思うとなんだが感極まって涙が出てきそうになった。
俺は必死に強く瞬きをし、こそっと目を擦った。
『レイ、お前今泣きそうになっただろう、そう簡単に俺の目は誤魔化せないぜ』
『うるせー、こんなことに気づくならセイラの変化にもすぐに気づいてやれよ』
そう言い返すとアギはしれーっと目を逸らした。
アギはセイラが髪を切ったことに気付かず、セイラが拗ねて、冒険が一週間中止になったことがある。
『そうよ、あの時私めちゃくちゃショックだったんだから』
『ほんとにごめんって』
俺たちがそんな話をしていると、王が咳払いをした。
『勇者たちよ、この度の其方たちの功績に褒美を授ける。この後、応接室に来るように.』
『はい』
『これにて、勇者一行の表彰式を終了とする。ご苦労だった』
パチパチパチパチパチパチ
俺たちは大きな拍手に包まれながら、扉から出て行った。
『なぁレイ、国王からの褒美の品だってよ、何がもらえるんかな?』
『国王様だから宝石とかネックレスとかそれとも欲しいものを一つ言えてか言ってくれるのかしら』
『みんな喜びすぎ、恥ずかしいでしょ』
『さっすがノア、今日もクールでかっっわいいねー』
(ゴン)
『うぅ、、、』
頭に衝撃が走る。
『次おちょくったらもう回復魔法かけてあげないんだからね』
『すみません』
俺がノアに殴られておる様子を見てアギとセイラは笑っていた。
『ほんと、レイは反省しないよな)
『何回見てもこのやりとりは面白いわね』
『そんなー、ほめんでいいんよ』
(ゴン)
今度は横腹に衝撃が走った。
『ノアさん、最近俺の扱い雑すぎやしませんか』
『あらそう、私はそうは思わないけど』
『お前らのその会話を聞くのもこれで最後と思うとなんだか複雑な気持ちだな』
アギの言葉を聞いて、今まで冒険の思い出が頭に浮かんできた。
パーティーが完成した日、すぐに火炎龍に挑み命からがら逃げたこと、迷宮に挑戦して迷子になり、1ヶ月間彷徨い続けたこと。
いろんなことがあった。
その中でも1番印象に残っているのは、この国の三代魔獣の一つである黒龍と遭遇した時だ。
あの時はパーティーができて一年くらいで、パーティーとして出来上がってきた頃だった。
俺は仲間たちに油断せず全力で行くぞ!と、声をかけたのを覚えている。
ノアが俺とアギに強化魔法をかけ、黒龍の地獄の豪華をタンクのアギが防ぎ、後方からセイラが魔法を放ち、俺が刀で切りに行く。
この作戦で黒龍に立ち向かい、俺たちは勝つことができた。
あの時、パーティーが初めて一つになった気がした。
その後、俺はノアに告白したんだ。
今思い出すと少し恥ずかしくなってきた。
『レイ、何ぼーっとしてるの、早く行くよ』
俺はノアに手を引っ張られ、王城の応接室に向かった。
応接室にはこの国の王であるスゲ王とその護衛が10人ほどいた。
流石に護衛多すぎだろと思ったが口には出さず、スゲ王の前のソファーに座った。
『よくきてくれた!だが褒美の用意にはもう少し時間がかかりそうなんだ、すまんが用意したお茶でも飲んで少し待っていてくれ』
『そんな、お気になさらないでください』
流石しっかり者は違う、セイラとノア頭を下げる国王にやめてくださいというような仕草で言った。
そんな中、俺とアギはお茶を一気飲みした。
『レイ、ほんと貴方って人はふつうすぐに飲まないでしょう』
『スゲ王すみません、うちのバカ2人が礼儀知らずなことをしてしまって』
ノアが俺たちを叱る間、セイラがスゲ王に謝る。自分で言うのもなんだが、こんな俺たちに負けた魔王が可哀想でたまらない。
そんなことを思っていたら、急に視界がぼやけ始めた。
『なんだ、視界がぼやけて、、、』
ぼやける視界の中、隣を見るとアギもフラフラと今にも倒れそうになっている。
まさか、あのお茶に、、、なに、、か、、、、
ここは、どこだろう。
まだぼーっとしている頭で、俺は辺りを見渡した。
周りには両手両足を拘束された仲間たちがいた。
『ノア、セレナ、アギ、』
俺は今すぐ助けに行こうと動こうとした、しかし、俺も両足と両手を鎖で繋がれ、動けないようにされていた。
『レイ、、、、』
ノアがゆっくりと目を開けた。
ノアの顔には二、三箇所傷があり、俺は怒りでどうにかなりそうだった。
『ノア、大丈夫か、てか怪我してるじゃねーか、何があったんだ』
『レイたちが気を失った後、周りにいた衛兵たちが私たちを取り押さえようとしてきて、、、』
『ごめん、俺のせいで、、、』
『そんな、気にしないで、今はここから出るための方法を探しましょ。』
『そうだな、』
アギとセイラの方はまだ気を失っている。
とりあえず力一杯引っ張ってみるか。
全身の力に力を入れて引っ張る、だが、鎖は切れない。
そうこうしていると、扉が開き、スゲ王と大きな鎌を持った小柄な人が入ってきた。
『勇者一行よ、居心地はどうかな?』
『このクソ野郎が、今すぐここから出せ!』
『そーれは無理な相談じゃなー』
『このゲス王が、、』
『ふん、好きに言うがいい、これから死ぬやつの言葉なんてこれっぽっちも痛くないわ』
死ぬだと、、、、俺たちが今から死ぬ、、、、
全身から血の気が引いたのがわかった。
『おい、死ぬとはどう言うことだ』
『貴様たちは魔王を倒しこの国に平和をもたらした英雄だ。しかし、魔王よりも強いお前たちを生かしておいたらこの国が危うくなるかもしれんからな』
スゲ王はニヤニヤしながら言った。
やばい、早くここから出ないと、ノアたちが死んでしまう。
俺はさっきよりも激しく動き、鎖を取ろうとした。
『その鎖はそんな簡単に外れるような代物じゃないんだよ。』
スゲ王嬉しそうに笑っていた。
『まずら目を覚ましている僧侶から消していくとするか、ほれ、やってしまえ』
スゲ王が鎌を持った子に指示すると、その子はノアの前にたった。
『やめろ!やめてくれ!』
くそ、外れろ、外れろよ、このままじゃノアが殺されてしまう、ちくしょう、ちくしょう。
全力で暴れるが鎖は取れない。
ノアの方を見ると、ノアは俺を見て笑った。
『レイ、今までありがとう。レイのこと大好きだよ』
『ノア、、、』
次の瞬間、ノアは俺の目の前で殺された。
『安心せい、お前もすぐに合わせてやるからな』
俺の目の前に鎌を持った小柄な子が来る。
叶うなら、時間が戻って欲しい。過去に戻ってノアと会い、勇者なんてやめてノアと幸せに暮らしたい。
そんなことを思い描きながら俺は目を瞑った。
『おっと、最後に言っておかなければいけないことがあった』
もうそんなのどうでもいい勝手に言っておけ。
『お前たちを殺すことはこの国の会議で決まったんじゃ、だから安心せい、お前らが死んでも悲しむ奴らなんていないからな』
そういうとスゲ王は高笑いを始めた。
この国のトップはクズしかいないのか。
復習してやる、絶対に。
『やれ』
その言葉を最後に俺の意識は消えた。
感想やブックマークをぜひお願いします。




