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しいな ここみ様主催企画参加作品

ハァー、ラーメン食べたいなぁー(痛切)


「お待ちどおさまです」


カウンター席に座る俺の前に、湯気がたちのぼるラーメンが置かれた。


割り箸を持ったまま胡椒の瓶に手を伸ばす。


あ! 割り箸がお冷やのコップに引っ掛かった。


コップが倒れ水がカウンターに広がり俺のズボンを濡らす。


「冷てぇー!」


と叫んだところで目が醒める。


炬燵の上にお茶が入っていた湯のみ茶碗が転がり、零れたお茶がパジャマ代わりのジャージを濡らしていた。


あのラーメンは夢だったのか、ハァー。


昨晩、夕食の後ある事をやりに外出して夜遅く帰宅、炬燵で温まりながらテレビを見ていてそのまま寝てしまったらしい。


ラーメン屋のラーメンが食いたい食いたいと思いすぎて、夢にまで出て来てしまったのだろう。 


あ~あ、夢でも良いから汁だけでも口にしたかったなぁー。


俺は糖尿病で医者にカロリー制限されている。


カロリーが表示されているコンビニやスーパーのラーメンやカップラーメンは食べられる、でも、カロリーが表示されていないラーメン屋のラーメンはカロリー計算出来ないから食べられないんだ。


カロリー制限なんて無視して食えば良いだろうって知人に言われる事かあるんだけど、駄目なんだよ。


だって、俺が通っている病院の栄養士は5〜6人いて、病院に行くと最初に採血してそれから栄養士さんのところに行くんだけど、採血結果を見てカロリー制限を守っている患者には大学出たてらしい初々しく可愛い女の子の栄養士さんが担当してくれる。


だけど守って無いとベテランの婆の栄養士が担当になって、その婆が鬼のような形相で徹底的に絞られるって言うか怒られるんだ。


だから守らなくちゃならないんだよ。


でも最近物価高や人手不足で店を畳むラーメン屋が次々と出て来ている。


糖尿病が発覚する前によく食べに行っていた豚骨ラーメン屋や、野菜やチャーシューが山盛りに盛られているラーメンを提供してくれていたラーメン屋も店を畳んだ。


そういう美味いラーメンを食わせてくれていたラーメン屋も次々と店を畳んでいるお陰で、俺以外の奴等も食えなくなっているのが救いって言えば救いだと思ってる。


それに店を畳まないラーメン屋は……あ、ラーメンとラーメンを食えない事を考えながら零れたお茶を拭いていたら、爪先に赤黒い汚れがあるのに気が付き俺は手を洗いに洗面所に向かう。


点け放しのテレビの画面には朝のニュースを読み上げるニュースキャスターが映っていて、今朝、またラーメン屋の店主の惨殺死体がラーメン屋の厨房で見つかった事を視聴者に伝え、今回で3人目になるラーメン屋の店主の殺害事件の犯人の特定に警察は尽力で取り組んでいると話していた。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 『切実』じゃないのか? と思ったら確かに『痛切』でした。 昨夜は魁力屋のこってり背脂ラーメンいただきました(^o^)コロス?
[一言] 安定の怖さ……えぇ……?(´;ω;`) タイトルがちょっと気の抜けた感じなのかなぁと油断した私がバカでした……(´・ω・`) 毎回想定外の恐怖を叩き付けられるのでびびりつつも感動しています……
[良い点] 夢に出るほどラーメン屋のラーメンを食べたいが、食べることは許されていない。 ならばどうすればいいのか…。 主人公の仕業だとすると、恐ろしい結論を出してしまいましたね。
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