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【第1夜⑥ ~裏切りを告げる責務~】

 時が刻一刻と迫る。しかし、ハルトムートたちが現れる気配はない。


「どうしたんだろう…。ハルトムートの仲間はもともと200人。これを40人の部隊に分け、今は5つの隊がそれぞれここに向かっているはずだが、どの隊もここに姿を現さないなんて…。」フィンがこの状況に苛立ちを見せる。


「今から、まだあと2時間…。それまで…、待とう。」アラベルはそんな兄の苛立ちを収めるように静かに話す。


「ああ…、でも心配だ…。」今度は不安げな表情を見せるフィン。


 フィンやマグヌス、アラベルがハルトムートの到着を今か今かと待っている間、私と凱はこの世界で分かっている全ての事を、どのタイミングで話すべきかを考えていた。タイミングを間違えば、余計な混乱を生んでしまうことが分かっているからだ。


「この段階では話せることがまだ限られているな。」凱は短刀を磨きながら言う。


「うん…。そうだね。」私はロイ団長の事を考えていた。ロイ団長と兄妹のように育ったフィン団長、アラベルの事を考えると心が重い。


 それに加えて、騎士団のロイ団長への忠誠心を考えると、彼の裏切りの件は、話し方によってはここの仲間の関係に亀裂を生じさせるかもしれないということが、さらに重くのしかかってくる。その点を踏まえ、注意深く話を進めていかなければと心を決める。ゆっくり話せるのはこのタイミングを逃したら難しいからだ。


※※※


「フィン団長。お話があります。お時間よろしいでしょうか?」時を見て、声をかける私。しかし、自分が神遣士であることやバートラルである凱の話、このシュバリエ、他の星でも起きている話を果たして信じてもらえるのか、話した後に今まで培ってきた関係性が崩れはしないかと考えると、極度の緊張が襲い、体が震えてくるのに気づく。それを隣で見ていた凱が、私の手をしっかり握って、


「大丈夫か?莉羽。俺が話すから、落ち着け。最後まで話して、その後お前自身がどうしたいかをみんなの前で話すことにしよう。それでいいか?」凱はいつもより優しい口調で聞いてくる。私は、


「うん…、ごめん。…お願いします。」私がうつむきながらかしこまって言うと凱が、


「なんでそんな他人行儀?俺はお前の?」目で聞く凱。


「バートラル…。」


「正解。」にこっと笑って凱は、みんなの前で話し始める。



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