【第1夜⑤ ~再会~】
「おっ!莉羽だ!」聞きなれた声が洞窟内に響く。
「えっ?フィン…団長?」私は嬉しさのあまり走り出す。すると洞窟の奥の方から、フィン、アラベルと何人かの団員が姿を現す。
「みんな~!よかった!」私たちは抱き合い、喜びを分かち合う。
「隊長!よくご無事で。」アラベルがマグヌスの姿を見て、嬉しそうに抱きつく。
「アラベル、君も無事でよかった。」マグヌスは少し恥ずかしそうに、アラベルの頭をなでる。
「でも、マグヌス。俺たちは、君は死んだと聞かされていたんだ。どうやってここまで?」フィンは不思議そうに聞く。
「ははは。そうだった。怪我も完治したから、ロイとの一件を忘れるところだったよ。とりあえず、凱と莉羽からも話があると思うし、ポイントに着いてからゆっくり話をしようかと思う。と、その前に、フィンたちはどうやってこの中に入ったんだ?私たちは、莉羽の石の力がなかったらここに入れなかったんだが…。」
するとフィンがおもむろに、
「ああ、俺の持ってるこの石の力。」そう言って、緑色の石を出す。
「この石、ここに近づいたらやけに光が強くなって、入り口の大岩の前に立ったら、微妙な振動を起こして光ってるから、外に出したんだ。そうしたら突然岩がずれ始めて…。もうびっくりしたよ!」フィンはどや顔で話す。
「団長もでしたか…。」凱は驚いてその石を見る。
「その石にもかなりの力があるってことね?」私ものぞき込む。
「ああ、石の中でもフィン団長の石は、おそらく最上ランクの力を持ってると思う。っていうか、フィン団長も「石」持っていたんですね。」凱が真剣な顔でそう話すと、団長が、
「今までその石に助けられたってこと、結構あるんだよ。でもまさかこんな力があるとは思わなかったから、言う必要もないかなと思って…。」フィンも感心しながらその石を見て、
「ところで、ここの石はどうする?凱。こんな感じじゃ、敵に奪われるってこともないかとは思うけど…。」と凱に意見を求める。
「そうですね。でも敵に万が一、莉羽と団長が持っているのと同じような強力な石を持つ者がいたらと考えるとここに入って来れますよね…。でも…、今は時間がないのでこのまま行きましょう。いずれこの場所をもう一度訪れて、石の回収をしたほうがいいと思います。」凱の助言にフィンは、
「なんだか、別人みたいにたくましくなったな、凱。よっ、この頼れる男!」と言って、にこっと笑う。
「ははは、フィン。これくらいで感心していたら、凱の話でお前心臓飛び出すほど驚くぞ~。凱がこんなに頼れる男になった秘密。早く教えてやりたいなぁ。」にやにやしながらマグヌスが言う。
「なんだよ、マグヌス。その意味ありげな言い方は…。」ちょっとムッとして、フィンが続ける。
「まっ、とりあえず、いろんな話は最終ポイントに着いてからするとして、先を急ぐか。」
「そうですね。まだハルトムートさんたちの無事も確認できてませんし、行きましょう。」凱はそう言うとこの辺りにいる敵を魔力で確認し、タイミングを見て外に出るよう促す。その様子を不思議そうな顔で見ているフィン。
そして、最終ポイントである魔の山の東にある、キール火山の麓の樹海に向かう。私たちは凱の魔力で極力憲兵や魔物のいない場所を選んで進むことができたため、予定よりもだいぶ早い時間で進むことは出来た。とはいえ、丸2日は優にかかり、その日の夕刻前に何とかポイントに着くことができたのだった。
ここでの時間の猶予は、5時間。それ以上はこの大人数で同じ場所にとどまることは難しく、もしその時間内に到着できないようであれば、この場を立つことが事前の計画で決められていた。私たちは、この場所付近に、極力散らばる形でハルトムート一行を待つ。