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【第1夜② ~ノルンの滝~】


 翌朝、私たちはようやくノルンの滝に到着する。


「この規模じゃ、地図が無かったら気付かなかっただろうな。」凱が滝を前にして言う。


「確かに…。高さは5mあるかなって感じだけど、滝って感じでもないね…、でも…、緑に囲まれて、周りの空気も澄んでるし、水蒸気が上がって…、ほら、虹が見える!なんか、妖精でも住んでいそうな可愛らしい滝だね。水もすごくきれい!」私は駆け出し、その水を凱に向かって大きくすくいあげる。水しぶきが陽の光を浴びてキラキラと反射する。


「おい、濡れるだろ!」そう言って凱も応戦する。私と凱は久々に童心に返ったようにはしゃぐ。王兵たちからの逃亡の緊張感も、この1時だけでも忘れたい…、そんな気持ちが無意識にそうさせたのかもしれない。


 そんな私たちを見ながら微笑むマグヌス。

「まだ10代なのに、抱えているものが大きすぎる…。ったく、ロイといい、前騎士団長といい…、何なんだよ…。この世界で何が起きようとしているんだ…。」はしゃぐ私たちを見ながら、マグヌスは靴を脱ぎ、滝から流れ落ちる水に足だけ浸して呟く。その冷たさに心地よさを感じながら、手で水をすくおうとすると水底に何かを見つけ、拾い上げると、


「隊長!朝ごはんにしましょう。」凱が呼ぶ声に、


「おう!」と言って、それをポケットに入れて、私たちが捕まえた魚を焼いて、しばしの休憩をとる。


※※※ 


 その間、私と凱はフィンをはじめとする騎士団の仲間がどこにいるのかを、伝令が来る前に魔法を使って探しだそうとしていた。


「この近くのポイントで次の候補となりそうなの所といえば…、この辺りだけど、みんなの反応がないよ…。」私は地図を指さしながら言う。


「魔物の数も増えてるし、憲兵も思った以上にたくさんいるからポイントに近づけないのか…。でも、魔法を使っても行方が分からないっていうのはどういうことなんだ?」凱は頭を悩ませている。


「石の力がその魔法とやらの力を阻害するということは、あるんだろうか?」マグヌスが思い出したように口を開く。


「隊長、突然どうしたんですか?」


「昔、このノルンの滝からまっすぐ東に向かった場所に、秘石がたくさん採れると言われた洞窟があると聞いたんだが…、そこはポイントにはなっていなかったか?もしそこに彼らがいたとして、たくさんの石の力で探知できないとしたら…。と思っただけなんだがな…。」自信なさそうに言う隊長に、私は、


「隊長!よく思い出してくれました。その可能性、有りかもです!ん?でも…、どうやって石探知すればいい?」私は苦笑いしながら凱に聞くと、


「莉羽。お前、『宿世石』持ってるよな?」


「うん。」


「あと、そのピアス…、それって…。」凱が私のピアスに気付く。


「あっ、これはこの前お母さんに誕生日プレゼントでもらったの。」


「それ、多分このシュバリエの石だと思う。ちょっと貸して。」凱はピアスを掌に乗せて見る。


「そうなの?そういえば、お母さん、面白いこと言ってた。『何色になるか楽しみだ』って。どういう意味だろうって思ってたけど…。」


「それって、もしかして『ガーディアルライト』か?!」マグヌスが驚きながら言う。


「なっ、なんですか?それ。」マグヌスの驚きように驚いて、私は思わず声を出す。


「『ガーディアルライト』っていうのは「神の石」と言われる伝説上の石の名前だよ。よくは分からないが…石の色が次々変わっていくという…、そう、初めは青で、次は緑だったかな…。ちょっとそこらへんは曖昧だけど…、その石には何かすごい力があるって、ばあさんから聞いたことがある。私が子供のころに聞いた話だから、大分記憶が薄れていて、どんな力があったか分からないが…、すまんな。」


「いいえ、大丈夫ですよ。ってことで、莉羽。その石に魔力を注いでみてくれ。この星の石が共鳴して、その洞窟の場所が分かるかもしれない。」そう話す凱は楽しそうだ。


「わかった、やってみる。」私は、ピアスを左の掌の上に乗せ、自分の魔力を少しずつ、その石に注ぎこんでいく。するとあたり一面真っ暗になり、一筋の蒼い光がある方向に向かって伸びていく。私たちがその方角を確認すると、光はまっすぐ東の方をさしていた。


「言った通りだったな。凱。」マグヌスは嬉しそうに話す。


「隊長のおばあさんと、はるか遠い昔の話を覚えていた隊長の記憶力に感謝です。」凱は笑って返す。


「おいおい、俺はそんな年でもないし、耄碌(もうろく)してないぞ。」困ったように言うマグヌスに、


「冗談ですよ。隊長。さて、あっちの方角ですね。準備をしてすぐに出ましょう。」


「了解!」私たちは急いで出発の準備をしてノルンの滝を後にした。



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