【第2章 第1夜①~夢=現実の中で~】
第1章
ごく普通の高校生の私、宮國莉羽は毎晩様々なシチュエーションの夢を見ている。高校入学から間もなく、その夢の中で負った傷が現実でも残っていることから、自分の夢が現実であること、また自分が神の言葉を聞き、人々を幸福へと導く「神遣士」であることを知る。そして、幼馴染であり、想い人である武城凱が自分を護る使命を持つ、眞守り人であり、その凱への特別な感情が世界を崩壊させると聞かされ…。
夢の中の4つの星で起きている拉致事件の謎を解くため、自分が「神遣士」であることを受け入れた私は、その真相解明の為にそれぞれの星で出会った仲間たちと新たなステージへと進んでいく。
第2章開幕です!!
場所は再びシュバリエ。たかだか数日しか経っていないのに、随分時が経ってしまったように感じる。瀕死状態だったマグヌス隊長は、ようやく自分で歩行できるくらいまで回復した。しかし、まだ戦闘は難しいため、フィンとの約束の時間までにどうやってポイントにたどり着くかを考えるが、なかなか思いつかない私たちにマグヌスが、
「俺の事はいい。2人で向かってくれ。」横になりながらそういうマグヌスの発言に、少し呆れたような感じで凱は、
「何が何でもあなたを連れて行きます。俺たちにはあなたが絶対に必要なんです。しかもこの状態でここに置いていったら…、あなたは魔物の餌食になる。」
「そうです。隊長。私たちが何とか考えます。だから…。」そう言った途端名案が浮かび、凱に伝えようとすると自然に凱と目が合う、そして、
「魔法!」2人同時に同じ言葉が出る。そして、一瞬びっくりして笑い出す。その様子に何が起きているのかわからないマグヌスが、
「2人とも、どうしたんだい?」と驚いて尋ねる。
「凱が話してくれる?」私は笑いながら尋ねる。凱も笑いながら、
「いや、お前が話せよ。」
「うん、でもその前に試していい?」
「ああ。何にする?」
「火かな?」
「力に気をつけろよ、下手すると火事になって…、みんなここで窒息死だ。」
「うん。」そう言うと、私は目を閉じ唱え始める。その様子に隊長は凱に尋ねる。
「何が始まるんだい?」
「見ててください。」と言って、ニヤッと笑う。
『ファイラル』私は最後にそう唱えると、洞窟中に灯がともる。
「なっ?なんだ?これは…。」マグヌスは驚く。
「やった!ここでもできる!」そう言って凱の方をみると、凱もいつの間にか呪文を唱え始めていた。
「えっ?次は何だ?」マグヌスが少し警戒してそう言うと、
「見ててください!」私もにこにこしながら答える。すると凱が、
『ヒアリス』と唱える。すると、骨折していたマグヌスの右腕が自由に動くようになる。それに驚いたマグヌスは、
「石の力…?ではないよな?」
「はい。魔法というやつです。」私は少しどや顔で説明する。
「どうやってそういう技?を身に着けたんだ?」マグヌスは興味津々で聞く。
「隊長。腕の調子はどうです?もしよければ、他の怪我も治しますんで、私たちに時間をくれませんか?そうすれば、約束の時間までにポイントに着くことが可能になります。」そう言われ、腕を動かしてみるマグヌス。
「さっきまで骨折していたのが嘘のようだ。もし治るのなら他の場所も頼みたい。」
「わかりました。莉羽、お前も手を貸せ。」
「うん。」私と凱は、その後も治癒魔法を施し、マグヌスの怪我を完治させる。
「驚いた。君たちにこんな力があるなんて…。」マグヌスは目を丸くしながら、自由になった体を動かしている。私は、
「実はこの力が使えるか、前に試してみたんだけどだめだったんだよね…。」と凱に言うと、
「多分、まだ魔力が低かったからだろう。この前のクラウディスとの戦いで力が解放されて、俺たちの魔力がかなり上がったから。」
「そういうことか…。」私が納得していると、
「いやいや、納得してないで俺にも教えてくれ。この力はなんなんだ?」
「ちょっと話が長くなるので…、少し待ってもらってもいいですか?」凱はマグヌスに伝えると、私に向かって続ける。
「莉羽。かなり魔力使って体力落ちてるはずだから、少し休め。じゃないと力がもたない…。」凱は心配そうに言う。
「凱は大丈夫なの?」凱もかなりの魔力を使っているはずだから…、と思って聞くと、
「俺は回生の時、神聖を失う前に、って莉月さんから力を分けてもらったんだ。だからもともとの魔力ステータスがお前より高い。」
「そうなんだ~。」感嘆の声を出していると、
「おいおい、さっきから何の話だよ。いい加減教えてくれ。」凱はニコッと笑って、
「お待たせしました。」と言って、凱はすべてを話し始める。その間、私は彼らの傍で仮眠をとることにする。
『魔法をどの星でも使えれば戦える。ロイ団長ともいずれ戦うことになると思うけれど、この力なら何とかなるかもしれない。』と思いながら…。




