【一夜明けて】
【コンコン】いつもの凱の挨拶。
「おはよう。」私はよく眠れたおかげですっきりと挨拶する。
「おはよう。今日は調子がよさそうだな?昨日はよく眠れた?」
「うん。不思議なくらい。ここ最近で一番眠れたかも…。」
「さすがだな…。肝が据わってる。」笑う凱の笑顔に安心を得る。
「なによ~。」そう言いながら、私はほっぺを膨らませる。
「いや、昨日あんなことがあったから、心配してたんだけど、問題なさそうだな。」
「うふふ。夢の中で殺されそうになったり、皇子と結婚するとかいろいろありすぎて、神経図太くなってるのかも。」人間は、想像をはるかに超えた場面に遭遇すると、時に楽観的になりたくなる。何も考えずに話せる馬鹿話がちょうどいい。
「ならよかった。用意できたらそっち行ってもいいか?」
「うん。いいよ。」
※※※
私がリビングに降りていくと、母が朝食の支度をしているところだった。
「おはよう。莉羽…、眠れた?昨日あんな話をしたけど…。」母は心配そうに話しかける。
「大丈夫。お母さんの話すタイミング絶妙。もっと前に話されても、きっといろんなことが受け入れられなかったと思う。でも話を聞いて、なんかすっきりした…ような気がする。そういうことだったのかって。だからと言って、戦うとか、救うとか、全く実感わかないし、正直どうしていいのかわからない。ごめん…、はっきりできなくて。」
「そんなの当り前よ。だから気にしないで、自分なりに考えてほしい。どうしたいか。」
「うん。わかった。」するとそこに凱が入ってくる。
「おはようございます。」
「おはよう。凱。」母は凱の分の朝食も用意する。
「なあ。莉羽。今日ちょっと付き合って。」
「え?」
「気分転換。」にこっと笑う凱の笑顔は、いつにも増して優しい。
「うん!いいよ。」




