【神遣士である確たる証拠を…】
【前回より】
「当り前よね。夢って思ってたことが全て現実で、自分がこの世界を護る神遣士だなんて…。でも、受け止めてほしい。これは紛れもない事実だから…。」
私は突然告げられた衝撃の事実に面食らって、しばらく言葉を発することが出来なかった。そんな私を母と凱が、心配そうに見ていたことは言うまでもない。
10分程経ったのだろうか、それでもなお、言葉を発さない私の様子を見かねた凱が、先ほどの話をまとめたメモ書きを私に差し出す。おそらくこんな事態になるだろうと予測していたのだろう。そこには分かりやすく、話された全ての事が書かれていた。私はそれを読み終えるとゆっくりと顔を上げて、
「話は理解できるところは理解したよ。でも…、なんで私が神遣士だって思うの?何か証拠でもあるの?さっきも言ったけど、私、神様の声を聞いたことなんて一度もないけど…。」私は自分が神遣士であることを、そう簡単には受け入れることが出来ずにすがるように聞く。
「そうよね…。信じられない話よね…。だいぶ話が飛んでしまったし、大事なところが抜けていたわね。」母は何から話すべきか少し考えてから、
「お母さんはあなたを生んだその時から、前世の記憶を少しずつ思い出し始めたの。でもその時はまだ、あなたが神遣士であるとはわからなかった。それが分かったのは、お母さんとまだ小さかったあなた達2人で川遊びに行ったときなの。莉羽は覚えてる?」
「何となく…。」私はボソッと答える。
「その日はとても暑い日だった。近所のプールに遊びに行く予定だったけれど、その地域一帯の突然の断水に、その予定を変更して、川遊びに行くことにしたの。雲一つ無い快晴の中、私たちは昼過ぎまで遊んでいたわ。
それが…、突然のゲリラ豪雨で上流付近に降った大雨が、下流で遊んでいた私たちに、激流となって襲い掛かり、私たちはその濁流に一気に飲みこまれてしまった…。お母さんは近くにいた人たちに助けられたんだけど…、あなたたち2人の姿は、どこを探しても見つからなかった…。
ところが、捜索を始めて5時間後、あなたたち2人は何事もなかったように帰ってきた。お母さんは激流に飲まれたあなたたちを見たのに、衣服の乱れも、怪我もなく戻ってきた。だから、そこにいた人たちはみんな驚いて、2人にいろいろ聞いたのだけど、何も覚えていないって…。
でもお母さんには思い当たる節があった。激流に飲まれたとき、さらに下流の方でとてつもない力が解放されているのを感じたの。体を突き抜けるような…。すごく気になってはいたけれど、その時はまだ気づかなかった。でも無傷で帰ってきたあなたたちの姿を見て気づいたの…。お母さんはそれを確かめるために、凱に聞いたわ。2人に何があったのかを。
それに凱はこう答えたわ…




