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【この世の理とは】

 

回生は、発動が間近に迫ると、それまで記憶を消されていた各惑星の王たちの記憶が戻されて、彼らは自分の星の状況を確認し、それぞれの星の回生が滞りなく行われるよう準備を始めるのだけれど、経過報告という形で天空界エデンに集まる機会があったわ。


 その時初めてお母さんは、その男性の正体を知ったの。彼はこのアースフィアの王だった…。もちろんその席にいた彼も、私が遣士であることを同時に知ったわけだけれど…、私たちが絶望したのは言うまでもないわね。お互いを思う気持ちだけは変わらない。でも、それが許されない恋だと知っていたから…。


 それまでこの世界の、回生による「平和維持」について、少なからず疑問を抱き、私とアースフィア国王の関係を黙認してくれていた凱は、お母さんと彼の関係を知られないように、密かに守っていてくれていたんだけど、その会合で知られることになってしまって…、各星の王、神使途、神士教たちは激怒して、その場で私たちは拘束されたわ。


 それが回生直前であったため、禁忌を犯したことについての私と彼の断罪裁判は、早急に行われた…。その裁判で、私はなぜ神遣士が特定の人に、特別な感情を持ってはいけないのか…、衝撃的な事実を始めて知ることになったの。


『この世の(ことわり)に反して私たちが結ばれると、世界が破滅する恐れがある』


『神遣士はこの世の全ての物に、その愛を平等に与えなければならない。そこに偏りが生まれた時、人々の幸福度に不均衡が生じ、そこから平和が崩れていく』と。


 あくまでも世界を統べる神遣士による平等な愛が、この世界の平和を実現するための前提条件だった。だから、神遣士の「個別の愛」は理で禁じられ、その感情も元々与えられていないはずだった…。でも、お母さんにはその気持ちが生まれた。お母さんはここ数年で徐々に、神遣士であったことの記憶を取り戻してきたんだけど、なぜ生まれるはずのないその気持ちが生まれたのか、ずっと考えていたわ。


 行き着いた答えは…、


『「神遣士」とは、神の言葉を人々に伝えるためにあらゆる力を授けられただけの、ただの人間であるということじゃないのか…。この世に生を受けてから、人間として元々持ち合わせている感情は、何者にも消すことはできないからその感情が生まれた…。』と。


まあでも、人間ではあり得ない特殊な力をたくさん持っていたし、その考えは自分の中ですぐに却下されちゃったけどね…。


それがお母さんの出した結論。これが正解かどうかは分からないけどね…。

 でも、その時の私たちは、そんなことを考える余裕なんてなかった。この事実を告げられたあと、お母さんも彼も悩みに悩んだ。そして最終的に出した答えが…。


『人が人として当然持ち合わせている「自由に生きる権利」が、回生至上主義の理によって妨げられる現状を、どうにか打破しようと考えていたけれど、世界で今まさに戦争が始まろうとしている中、自分たちが結ばれることによって、世界を崩壊させ、人々の魂まで消滅させてしまうのであるならその選択肢を選ぶことはできない。人々の魂を守るためにも、自分たちの「想い」を捨て、回生を行うしかない…』と。


そこでお母さんは最期の回生を行った。


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