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【第16夜⑦ ~緊張の中、愛にあふれる挙式~】

 式は王宮の隣に構える神殿の中で執り行われる。奥行きは優に100mは超え、高さは50mほどあり、築千年は経っていると思われる、荘厳な雰囲気を漂わせたこの星最大の神殿である。入って一番奥の壁に高さが20mほどはあるであろう巨大な肖像画が飾られており、その前で私と皇子は神に永遠の愛を誓うことになっている。


 初めてここに入り、この肖像画を見た時、その大きさにはもちろん、描かれている神、バーレイと思われる人物の圧倒的存在感に目を奪われた。建物内部の装飾も、他の星のものと比べて、細部まで職人の技が施されており、趣のある印象で、この国始まって以来、平和を追求する諸王の安定した治世で国が栄えた結果なのだろうと思った。


 そこで1つ、気になったのは、この星の神バーレイが、他の星の神様と容姿が酷似している事。夢では、「あるある」なんだろうなと思いながら見過ごしいていたが、この壁画のあまりの大きさに気になっていた。


※※※ 


この国の王族の結婚式は、花嫁が神殿に入る前に、まず神殿前にある洗礼の泉で身を清める。とはいえ、それは昔の話で、今はその泉を渡る橋の上に花嫁が立ち、その脇に立つ聖女の像の上げた手から泉に降り注ぐ、聖水のミストを浴びることで洗礼を行うことになっている。


 私は泉にかかる橋を渡り、その中央までゆっくりと歩く。小鳥のさえずりがまるで、この日を祝うかのように美しく響き、私の歩みもより軽やかになる。この日は初夏のような陽気で顔に降り注ぐミストがとても心地よく、私は祈りながら、体いっぱいに聖水のミストを浴びる。


 そして、聖水で清められた私の誕生石と、皇子の誕生石を乗せた台を、准神仕教から受け取り、そこから皇子の待つ神殿内に入る。そこには跪いた大勢の人々が私を迎え、私は静かに歩みを進める。


 それまで神の肖像画の前で祈りを捧げていた皇子は、私が神殿の中央まで進むところで私を出迎える。皇子は跪き、手の甲にキスをして、私の手を引き神殿の一番奥の肖像画の前までエスコートする。そして私たちは横に並び、神の前で跪き、准神仕教に神の教えを説かれ、続いて夫婦としての儀式、次期国王、王妃の継承儀式を行うことになっている。


 准神士教による説教が終わると私たちは立ち上がり、先ほど渡された自分の誕生石を受け取る。そして、予めこの石をはめ込むための枠が作られた懐中時計に、お互いの誕生石をはめ込む。そしてそれを相手に渡す。私の手が極度の緊張で震え、なかなかはめ込むことが出来ないのを見た皇子は、微笑みながら、

「大丈夫。」と言って、手を添え手伝ってくれる。石を無事はめ込んだ私は、ほっとして皇子の顔を見ると、皇子は私の頭にキスをする。その仲睦まじい様子に、場内がどよめき、皆の顔に笑顔が溢れる。


特にこの儀式には、


『あなたとともに時を刻む』


という意味がある為、余計に私たちの様子は、参列者の心に幸せな気持ちを与えたようだった。ちなみに、この儀式はこの国ならではのもので、今ではそれに憧れた庶民も同じように行っているとの事である。

 

 儀式を終えた私たちは、先ほどまで跪いていた大勢の人々の祝福の拍手を浴び、そのまま神殿を出る。


 次に向かうのは、王宮の正面城壁の頂上にある巨大広場。高さ30mほどある城壁の下には、私たちの結婚を祝うために、ファータとジークの各地からやってきた何百万という人々が待つ。

私と皇子はこの後、この結婚にあたり、両国の未来への思いをそれぞれ自らの言葉で話すことになっている。そして式のクライマックスである、大勢の民の前で行う永遠の愛を誓うキスにより、この結婚が成立するのだ。


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