【第16夜⑥ ~愛されるということ~】
【前回より】
「あっ、はい。」凱は咳払いをして、
「本日の段取りですが、もう一度確認されますか?」
「いや、もう大丈夫だよ。それより…、分かるよね?」エルフィー皇子はにこにこしながら凱に目配せする。すると、
「はっ。申し訳ございません。気が利きませんで…。時間になりましたら、また参ります。」と言って、ヴァランティーヌとともに部屋を出る。
2人が出て行くや否や、エルフィー皇子は、優しく、そして強く私を抱き寄せ、
「本当に…、美しい。」幸せいっぱいの表情で私に語りかける。私も端正な顔立ち、気品のあるいで立ち、きらびやかな雰囲気を纏った皇子の礼装姿に、
「いつも素敵ですけど…、今日は格段と素敵です。皇子。」と答える。
「この日をどれほど待ち望んでいたか…。私の一生をかけてあなたを幸せにします。」
私は皇子のぬくもりに心地よさを感じ、愛されることがどれほど幸せなことなのかを実感する。ただ脳裏に、もしこれが凱だったら…、と思ってしまう自分もいて後ろめたさも感じるが、私は自分の決断に間違いはなかったと、この腕の中で生きていくことを改めて誓う。
しばらくすると皇子は私を抱きしめていた腕を緩め、私の目を見つめて囁く。
「心から愛している、わが姫。」
私は嬉しさと恥ずかしさとで胸の高まりを抑えることができず、皇子の顔を見ることができない。そんな初々しい反応をする私を見ながら、愛しさ全開の笑顔で、
「たまらなくかわいい人だ。」とまた再び抱きしめる。
すると、ドアをノックする音が聞こえ、凱が、
「お時間です。」と声をかける。
私たちはいよいよ式の会場へと向かう。




