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【第16夜⑤ ~挙式直前~】


 結婚式当日。その日は澄み渡る青空に雲一つない快晴で、まるで私たちの結婚を祝っているかのように思えた。


 私は緊張で、なかなか寝付くことができず、気づいたら朝を迎えていた。


「姫。姫。」と私を叩き起こそうとする侍女のヴァランティーヌの声が近づいてくる。


「おはよう。ヴァランティーヌ。」いつもなら、起こすのに一苦労する私が、すでにベッドから出て窓の外を眺めていることに驚き、そして私の覚悟を悟る。


「姫。本日はおめでとうございます。」深々と頭を下げるヴァランティーヌ。私は振り向き彼女に近づく。そして、抱きしめ、


「ヴァランティーヌ。今まで尽くしてくれてありがとう。」


「姫様…。(わたくし)は本当にうれしいです。あなた様が幼いころからその成長を見守ってきましたが、とうとうこの日を迎えることができて…。しかもあのような立派な方と…。」と言いかけたところで涙があふれるヴァランティーヌ。それを見た私も我慢していた涙が大粒の雫となって頬を流れる。


「ヴァランティーヌ。わたし…、幸せになるね。だからこれからも近くで見守ってね。大好きよ。ヴァランティーヌ。」


「姫様。当たり前です!私以外に誰が姫を起こすことができましょう。誰が肌ボロボロ、クマ全開、毛穴開きっぱなしのダメ顔に、完璧メイクを施すことができましょう。そう、私しかおりません!」どや顔でそう言い放った彼女の顔を、私は無言、真顔でしばらく見つめる。そこから数秒、見つめ合った私たちは大笑いをして抱き合う。


「馬鹿にし過ぎ。ヴァランティーヌ。」


「すみません。一度言ってみたかったんです。お許しください、姫。」


「許すわけないじゃない。一生かけて償って!」私が小悪魔的な笑顔で言うと、


「はい、もちろんでございます。一生お仕えさせていただきます。」そう言ったヴァランティーヌの目から大粒の涙が零れ落ちる。


「本当に、本当におめでとうございます…。」


私たち2人は、それからしばらく大声を出しながら泣き、抱き合って幸せに浸った。そして私は、このかけがえのない姉のような存在の侍女、ヴァランティーヌと出会ってから今日までの出来事を思い出した。

 その後、私はウェディングドレスに着替え、全ての準備を終える。するとドアを叩く音が聞こえ、皇子と凱が入ってくる。


 皇子は私の姿にしばらく見とれていたのか、身動きが取れなかった。そしてその後ろの凱も顔を少し赤くして、私を直視できないでいるようだ。


「姫、おはようございます…。」私のウェディング姿に胸がいっぱいの皇子は、その後の言葉が続かない。私は優しくほほ笑みながら、


「エルフィー様、今日はお天気も良く結婚式日和ですね。実は…、緊張してなかなか眠れなくて…。ちょっとクマが出来てしまって…。」


「いや全然見えませんよ、姫。そんな…、全然美しい…。」2人のやり取りにヴァランティーヌは微笑んで、


「凱様。」と促す。


「あっ、はい。」凱は咳払いをして、


「本日の段取りですが、もう一度確認されますか?」


「いや、もう大丈夫だよ。それより…、分かるよね?」エルフィー皇子はにこにこしながら凱に目配せする。すると、


「はっ。申し訳ございません。気が利きませんで…。時間になりましたら、また参ります。」と言って、ヴァランティーヌとともに部屋を出る。




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