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【第15夜② ~処刑、さらば第二皇子~】

 処刑当日、王宮は朝から落ち着かない雰囲気で、そこにいる者は全て、緊張の渦の中にいた。まさかこの国の第二皇子が処刑されるなど、この国の歴史ではまずあり得なかった話が今、現実に起きようとしているからだ。


 私は衛兵に連れられ、処刑場を見下ろせる塔の最上階に向かう。塔は処刑場である中庭を囲むように4棟立っており、私が連れてこられた塔は、その中でも一番高い。魔法錠で繋がれているとはいえ、私の力を恐れての対処なのだろう。一切の手出しができないように処刑場から一番遠いこの場所が選ばれたようだ。


 私は凱の指示通り、衛兵に見つからないように魔導書をドレスの中に隠し、この塔の高さ、向きを計算し、初動の位置を確認し、時を待つ。緊張で心拍数が上がり、無意識に握った手汗、額ににじむ汗も尋常ではない。一歩間違えれば2人とも死ぬ。すべては私の手にかかっている。


『時間だ…。』


 強力な魔法錠で繋がれた凱が、衛兵に連れられ広場に姿を現す。広場に集まった人々、王宮に従事する者たちは、不安そうな面持ちでその様子を見ている。凱が処刑台に立たされた直後、国王とクラウディスが処刑台の前に立ち、


「ここに集いし、わがメルゼブルクの民よ。今からこの国の第二皇子である、わが息子、凱の処刑を執行する。昨今、この国で起こっている拉致事件の首謀者であり、この国最高の宝物でもある魔導書の盗難、そしてわが国を乗っ取ろうと画策した罪は万死に値する。王族であってもこの罪は消えることはない。命を以って償わせる。」そう言うと、王はちらっと凱に目をやり、


「何か弁明は?」と悪意に満ちた表情で聞く。凱は一切反応しない。その様子に王とクラウディスは目を合わせ、ニヤッとすると、王が手を振り下ろし執行の合図をする。そこにいる者全てが息を飲む。


 クラウディスは、凱の前に立ち一瞥してから、天に向かって大げさに祈りを捧げる。そして、凱に何かを話しかける。凱は下を向き応じる気配はない。クラウディスはその凱の様子にイラついたのか、凱の脇腹を思いっきり蹴とばし、倒れこんだ凱を見下ろすと、その体に唾を吐き捨て、狂ったように笑いながら握りしめた聖剣に魔力を注ぎ込む。


私はこの時を待っていた。


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