【第14夜⑦ ~私の使命とは…~】
【前回より】
フィンの伝令の鳥が洞窟内に入って来る。
【明後日夕刻、ポイントで】
そこには騎士団幹部のみが知る暗号で、メッセージと地図が書かれていた。
「明後日か…、マグヌス隊長、それまでに目を覚ませばいいけど…。」私はあれから目覚めないマグヌスを見る。
「そうだな…。とりあえずこのまま動かないほうがいいな。」
「そうだね…。これから戦いが始まるっていうのに…。なんか最近、いろいろ起こりすぎて…、ジェットコースターみたいな毎日だよね…。ほんとに気が滅入るわ…。」私は洞窟の壁に寄りかかる。
「予想外のことばかりだからな…。」
「ははは。メルゼブルクで凱が捕まったり、ファータで結婚することになったり…、私の夢ってスケール大きいよね?」苦笑いする私に、
「確かに…。でもお前、どこでも前向きだよな。普通の女子ならもう気持ち折れてると思う。」
「私もそう思う。でもどんなこともちゃんとやりたい。守れる命は守りたいし、国の平和は守りたいし、何より、与えらえた使命はちゃんと果たしたい。って言いながら、私の使命って、未だになんだかよく分からないけど…。毎日神様にお祈りしてるし、いざという時は何かしら力をもらえるって…、ダメじゃん、神頼みじゃあね。」と笑いながら言って、ハッと思い出す。
「ねえ、お父さんが言ってたことだけど…。」私が凱の顔色をうかがいながら話すと、
「ああ、あれは…。お前が「宿世石」と共にある限り、それは何かしらの意味を持つのだと思う。その強大な力を生かすも殺すもお前次第だけれど、俺はお前がどう選択しようと守るという使命がある…。ってことだけしか分からない。だから、お前がその石を持つ意味までは、今の俺では分からない…。でもこの状況だし、きっとお前はものすごい使命をもって生まれたんだろうな。」半分茶化しながら話す凱の言葉に驚きと、なんとも言えないプレッシャーを感じながらも、ふと凱との関係性を考えてしまう自分がいる。
『凱にとって私の存在はシュバリエでは妹、現実では彼女の妹?メルゼブルクでは兄の婚約者、ファータでは主君の婚約者。私の気持ちの軸はどこに置けばいい?…。しばし考えるも、どの場所においても私の気持ちは実らない…。なら、もう吹っ切るしかないのかもしれない。』
私は、思いっきりの笑顔で、
「バートラルさん、よろしくね!」と返す。凱は一瞬戸惑った表情を見せたが、直ぐにまじめな顔になって、
「俺が守るから心配するな。」と言って、私の頭に手をポンポンと置く。
「吹っ切る!」と心の中で宣言した私だったが、そんな凱のポンポンは、もう私だけのものではなくなるんだというさみしさが押し寄せてくるのを否定できるわけはなかった。