【第14夜⑥ ~明らかになる黒幕の正体と主の計画~】
【前回より】
「…。」凱がそのまま無言でいると、突然、木の陰から私たちの前方に人が倒れこむ。
「誰?」私は慄きつつもその顔を見る。
「マグヌス!」私と凱は同時に声を出す。
マグヌスは、体中のありとあらゆる場所から流血が見られる大怪我を負いながら、この大地を彷徨い歩き、ようやくこの滝までたどり着いたようだ。
「莉羽…、凱。」か細い声で話すマグヌス。
「マグヌス隊長!大丈夫ですか?今、止血します。」私は持っていた薬草を取り出し、その場で煎じ、布を巻いて止血の処置をする。
「莉羽。ここは危ない。この奥に小さな洞窟がある…。そこに…、うっ。」マグヌスは内臓もやられているようだ。
「わかりました。もうしゃべらないで、マグヌス隊長。」凱はマグヌスを抱え、洞窟まで連れていく。
その洞窟は入り口こそ狭いものの、中に入ると、がらんとした空洞になっていて、大人3人が余裕で入れる程度の広さはあった。凱は羽織っていたマントを敷き、そこにマグヌスを寝かせると、持ってきた水をマグヌスの口に当てる。残った力を何とか振り絞ってそれを飲むマグヌス。
「莉羽…。簡潔に言う。俺と部下をやったのは…、ロイだ。」マグヌスは早く伝えなければと思ったのか、息切れして苦しい中、声を振り絞って伝える。
私と凱は目を合わせ、
「やっぱり…。」舌打ちをして、やりきれない表情の凱。
「ロイは…、黒だ…。あいつが、魔物を…、操る姿も見た…。以前のロイとは…、別人…、のようだった。なぜこんなことをする…、と聞いたが…、全ては「主の計画」…、とだけ答えた…。その後…、俺たちが全滅…、したと思って…、そのまま姿を消した…。」
「主の計画…?」
「主?って誰?計画?」私の頭は混乱の渦。
「すまん…。俺にも、それ以上のことは…。」マグヌスは力尽き、そのまま気を失う。
それから火を焚き、できる限りの薬草を集め、マグヌスの回復とフィンからの伝令を待つ。
「やっぱり…、ロイ団長…、だったね。」私が重い口を開く。
「ああ。でもやっぱり敵がロイ1人じゃないということは、俺たちが思っている以上に事は大きいということだな。」凱は焚火の火を見ながら話す。
「そうか…。私が夢で見ている星々が、ファータで言ったように、もしほんとに全部つながってるとしたら…、想像以上の陰謀が渦巻いているってこと…?主?って人が、全てを操ってるのかな?」
「可能性はあるな…。」凱は変わらず火を見続ける。
「そんな…、私は何をしたらいいんだろう…。」考えてみるものの答えは出ない。
「今はこのシュバリエの問題を考えよう。マグヌスの回復を待って、フィン団長の指示に従うしかない。ただ、ロイ団長の事は、みんなに言うタイミングについてマグヌス隊長にも話しておいた方がいいだろうな…。いろいろありすぎてショックが大き過ぎる。士気にも関わるしな…。」そう言って、凱は顎に手を当てて考える。
「うん、そうだね。でも夢の女の人が…。」と私が言いかけたところに、フィンの伝令の鳥が洞窟内に入って来る。




