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【第14夜⑤ ~怪しい女と倒れこむ男~】

 私と凱はフィンの計画通り、村を日の出前に発ち、次の目的地『ノルンの滝』に向かう。


 フィンの次の指令が来るポイントは、必ず『ノルンの滝』、ここに来るはずだ。と確信にも近い思いがあるのも、この間築き上げてきたフィンとの関係があっての事だった。フィンの人となりを入団から今までで、心で感じ、頭で理解し、そして信じてきた私たち。その私たちが知るフィンだからこそ、次は『ノルンの滝』と自信を持って言える。

 私たちが移動している北東地域にポイントとなり得る候補は7個ある。今考えると、この非常時行動計画は、フィンによる私と凱への配慮が感じられるものだった。北東方面にある私と凱の村を拠点に考えてくれたもので、『ノルンの滝』は家から一番近いポイントだった。その為、私と凱は迷わずそこを目指したのた。他の仲間のポイントも、相当な非常時でない限り、実家なり縁のある方面に配置してくれていた、そんな記憶がある。

 常に死と隣り合わせにある騎士団であるからこそ、フィンは家族を仲間を第一に考えてくれる、そんな心優しく、思いやりのある人物だ。


 団員のほとんどが、この計画を発動させる事態になるような事はないと甘く考えていたが、フィンは先の先を考えていたようだ。彼の普段のキャラから考えると、この練り上げられた綿密な計画が、フィンによるものだとは、おそらく誰も考えつかないだろう。それほど事細かに、熟考されているものだった。


「なあ、莉羽。」突然凱が口を開く。


「何?どうしたの?」昨日の父の話を思い出していた私は、突然話しかけられて驚く。


「俺、昨日夢を見たよ。」


「どんな夢?」凱の夢の話は聞いたことがなかったので興味がわく。


「俺の推測が当たっていたら、敵は予想よりかなり多くなる。ここだけの話、俺はロイ団長が黒幕と思っていた…。でも団長はコマの1人にすぎないかもしれない。」不安げな顔で話す凱。


「どういうこと?」私には訳が分からない。


「昨日見たのは…、ハルトムートの姉さんが連れ去られた時の夢だった。ハルトムートの話では、黒いローブの男が連れ去ったってことだったけど…、その後ろに女がいたんだ。」


「女?」


「ああ…。」話すのをためらうような凱の姿に、


「待って!凱。もしかして、それが誰だかわかってるの?」


「後ろ姿だけしか見ていない。でも、よく見慣れた後ろ姿だ…。」


「見慣れたって…。」しばらく考えるが私には思いつかない。しかし、私と凱の両方が知り得る女性といえば数えるくらいしかいない。私はまさか…という思いで、


「見慣れたって…、限られた人しかいないじゃない…。もしかして…。」取り乱す私を見てうつむく凱。


「…。」凱がそのまま無言でいると、突然、木の陰から私たちの前方に人が倒れこむ。


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