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【第14夜② ~宿命の赤い石~】

 それから3時間後、私と凱は何とか自分たちの村にたどり着くが、村の掲示板にはすでに私たちの拘束命令が貼りだされており、深夜とは言えど、堂々と村に入れる状況ではなかった。私たちは身を隠し、木を伝い、2階の窓から家に入る。静かに入ったつもりでいたが、その物音に気付いた父が、部屋の様子を確認しに、階段を上がってくる。


「誰かいるのか?」父は警戒しながら、恐る恐る部屋に入る。その声で私と凱は父だとわかり、


「父さん。」凱が声を落として呼ぶ。


「ん?凱か?」


私と凱は久々に父の前に姿を現す。


「凱、莉羽!」私たちの名前を呼び、部屋のもっと奥に入るよう手招きすると、父の後をついてきた母は、私たちの姿を見るなり涙を流して無事を喜び、強く抱きしめる。


「拘束命令の知らせを聞いて心配していたの。でも無事でよかった。」母は安堵して優しく私の頭をなでる。


「いったい何があったんだ?騎士団解散といい、騎士団幹部が全員指名手配だなんて…。」父は外から見えないようカーテンを引き、私たちに座るよう促す。


「おそらくこれは、この世界で起きている事件の真相を調べてる俺たちの存在を邪魔に思ってる奴らが企てたものだと思う…。でもその首謀者が…。」下を向きながら凱は続ける。


「ロイ騎士団長の可能性が高いんだ…。」衝撃の凱の発言に、父と母は絶句している。


「目的も何もかもがはっきりしない状況下で、推測の域を出ないんだけど〈石〉の紛失と、拉致事件はつながっているということ。そしてそれにロイ団長が関わっているのかもしれないという事だけしか言えない状況なんだ。」


「そう…。」母は心配そうに、


「このまま家にいることはできないの?お母さん、あなたたちの事が心配。」


「いや、まだやらなくちゃいけないことがあるんだ。明日早朝には出ないと…。」凱が答える。


「どこに向かうんだ?」父が問う。


「…最終的に魔の山に…。」


「えっ?」母は悲鳴にも似た声を出す。


「魔の山…、踏み入れた者は二度と戻ってこれないという不吉な山でしょ?やめて、母さん2人がいなくなったら…。」再び涙が溢れ出しそうな母の肩を抱き、父は、


「そこに行けば真相を解明できるんだな?」静かに話す。


「ああ。おそらく…。」凱は言葉を濁す。


「そうか…。」父は深く息を吸って、


「母さん、あれを持ってきてくれないか?」母は一瞬はっとして父の顔を見る。父のその思いを確認すると一度目を瞑って、そのあと決心したかのように再び目を開け、


「はい。」と言って、部屋を出て行く。


「父さん、何?」私は気になって父に聞く。


「見ればわかるさ。莉羽。お前を助けてくれるものだよ。」父がそう言うと、母がきれいに装飾された小さな箱を持って入ってくる。


「莉羽。これを開けて。」その箱を渡された私は、


「うん。」と頷いて静かにその蓋を開ける。


「これは…。」私はそれを取り出そうと手を近づける。


「石…?」凱が呟く。


それは直径5センチほどの大きさの楕円形の真っ赤な石だった。


「この国の〈石〉は全部取られてしまったと思っていたけど、この石は…?」


「そうなの。祭りのときに盗まれたかと思って急いで確認して…、これだけはどうしてか分からないけれど無事だったの。」私はそのまま手に取ろうとするが、


「待って。」母が私の手を持って、触れる直前で止める。


「何?」私は少し驚いて、


「その〈石〉を手に取る前に少し聞いて。」母は胸に手を当てて、自分を落ち着かせながら話し始める。


「あなたがこの家に来た時の話は覚えてる?」


「うん。」


「うちの玄関前、まだ生まれたばかりのあなたのすぐ横に、この〈石〉が置いてあったの。〈石〉はその箱に入っていたんだけど、私が開けようとすると、そこから光が漏れ出したの。びっくりしてよく見たら〈石〉の中央部分が光り輝いていた。きっとこれは特別な力を持つ〈石〉だとその時、直感したわ。でも〈石〉の力は人を幸せにもするし、不幸をももたらすことがあることを知っていたから…。あなたが成長するまで、そのまま閉まっておこうと父さんと決めていたの。

 それがね、あなたが3歳になったころ、凱と2人で納戸に入って、その〈石〉を見つけてしまったの。その〈石〉はまだあの時と同じように光っていたわ。不安に思ってその〈石〉を預かろうとしたら、あなたの手がその〈石〉に触れて…。」言葉に詰まる母。


「どうなったの?」私は嫌な予感がして尋ねる。


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