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【第13夜① ~囚われた従者、凱~】

【これまでのメルゼブルク】


「ねえ、凱?王宮から盗まれた魔導書の件なんだけれど…、見つかったって知ってる?」


「え?魔導書が?」凱が隠したはずの魔導書だとしたら…、と急に不安になる私。


「そう。それもどこから見つかったと思う?」莉奈は、にやっと笑って言う。


「…。」凱は何も答えない。その様子を見ながら、


「話せないわよねえ…。話せる訳がないわよね。だって…、あなたの部屋から見つかったんですもの。国王とクラウディスは、今までの拉致事件も魔導書紛失も…、今回の異国の老人の殺人も、何もかもあなたの仕業じゃないかと疑ってるわ。」


「え?なにそれ?」私はあまりの出来事に声が裏返り、それ以上声を出すことができない。


凱は小声で呟く。

「はめられたか…。」




 莉奈の突然の知らせに驚き、困惑しているところに大勢の憲兵が押し寄せる。


「国王陛下の命により、メルゼブルク第二皇子である凱殿を拘束させていただきます。」その声の直後、2人の憲兵が凱の腕を魔法錠で拘束する。私は目の前の出来事が信じられず、


「無礼者。凱を放しなさい!」私はこの予想だにしなかった事態に、体中の血液が煮えたぎるかのような感覚をおぼえ、声を張り上げて憲兵に言い放つ。そんな激高する私を制して、


「莉羽。俺は必ず戻る。だから信じて待て!俺が今までお前に言ってきた言葉、それが全てだ。迷うな。俺だけを信じろ。」憲兵に連行されながら凱はそう必死に叫ぶ。


 私は憲兵に両腕を抑えられ、振りほどこうとするも、国王の力による魔法鎖でそこから動くことを許されない。


「凱!凱!」私は必死で呼び続ける。しかし、未熟な私たちの力では、今の国王の魔法を前に、どうすることもできない。そのまま凱は王宮の地下深く、全く光の届かない暗黒牢に連行された。


 暗黒牢に投獄されて何時間位経ったのだろうか。凱はその香りを2分嗅ぐと3日は起きないというカマーリの葉を乾燥させ作られた、お香のような睡眠導入香により眠らされていた。


「光がないから時間の感覚も鈍ってるな…。」そう言いながらゆっくり起き出す凱。すると何も見えない暗黒の世界に、コツコツコツとこちらに向かって歩いてくる音が聞こえる。その音は次第に大きくなり凱の手前で止まる。


「ふっ。お前の命運もここまでだな。従者だか何だか知らないが、手こずらせやがって。」吐き捨てるように話す声。その人物はゆっくりと持っていたろうそくを自分の顔に近づける。


「…。」凱はその人物の顔を見るも微動だにしない。


「何の言葉も出ないか?ふふ。自分の使命が果たせず、ここで朽ち果てようとしている自分に…、絶望でもしているのか?はははははは。なあ、馬鹿な弟よ…。ああ、違ったな、…凱。」そう、その人物はこの国での凱の兄、クラウディスその人だった。しかし、何か違和感を覚える。


「なんだ、クラウディス…。ん?違うな…お前何者だ?俺の使命?お前、どこまで知っている?」凱はクラウディスの中に別人格を感じる。


「ふふふ。状況が飲み込めていないらしいな…。それも仕方ないか…、お前たちは何も知らぬものな…。俺は選ばれし者だ。」クラウディスは答える。


「選ばれし?」凱は聞き返す。


「そうだ。ははは。無知ほど哀れなことはないな…、滑稽だ。何のために戦うかもわからずにお前たちは我々に挑もうとしているのか?」


「…。」凱は黙っている。


「まあいい。どうせ我々の目的の為に捨てられるような命だ。お前たちとこの世界の運命…、冥土の土産に教えてやろう。」


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