確固たる思い~最愛の家族を守るため~⑤
そしてようやくたどり着いた元我が家から聞こえてきたのは…
【ハッピーバースデー!!!】
私と取り違えられた元社長令嬢の誕生日を祝う楽しそうな笑い声だった…。
私は力が抜け、膝をつき、呆然とする。
【緊張感に満ち、常に監視の目に怯えていた今日私の誕生日パーティー。そして悪夢のような父親の性的暴行…。
舌なめずりしながら、私の衣服をはがし、ネックレスを胸元において今にも私を我が物にしようとした父親の、あのいやらしい目つき、興奮した息遣い、脂ぎった額の汗。思い出すだけで吐き気が止まらない。
同じ誕生日なのにこの雲泥の差。
この愛情に満ちた元我が家の温かい雰囲気を目の当たりにし、絶望に打ちひしがられ声を殺してをすすり泣いていると、さらに私をどん底に突き落とすような、妹を始めとする元家族の言葉が聞こえてくるのだった。
「お姉ちゃんが本当のお姉ちゃんで良かった。前お姉ちゃんだった人は、私の話も全然聞いてくれなかったし、遊んでもくれなかった。お母さんには内緒だよって、私がもらったお年玉もっていっちゃったこともあるし…。」
「えっ!!何だって?」
妹の突然の告白に驚いていた両親だったが、
「嫌な事はもう忘れよう。あの子はもうここにはいないし、戻ってくることもない。お前には、今のお姉ちゃんがいれば幸せだろう?」そう言う父に妹は元気よく、
「うん!前のお姉ちゃんの事は忘れるね!
改めて…お姉ちゃん、我が家に来てくれてありがとう!大好き!!!ほんとにうれしい!」答える。
「そうだぞ。そんな意地悪な奴の事はもう忘れるのが一番!お父さんも、お母さんもあの子がまさかそこまでお前に酷い事をしていたなんて…。気付いてあげられなくて…本当にすまなかった…。
さあ、せっかくの新しいお姉ちゃんの誕生パーティーが台無しだ。あいつの事は忘れて、これからも家族4人で仲良く生きていこうな。
気を取り直してもう一度乾杯だ!」
「かんぱーい!」
父の、この私の事をなかったことにしようとの言葉に、私の心はずたずたになっていた。
全て自業自得。
私の事を最優先に、愛情をもって育ててくれた両親への感謝の気持ちが微塵もない上に、恩着せがましく私が社長の家にいく事で家に大金が入ると言い放った自分が恥ずかしくて…、惨めで…、情けなくて…、申し訳なくて…。
どうにもならない気持ちで、身も心もぼろぼろになりながら、私はどこをともなく、呆然自失の状態で元の家を離れ、歩いていった。
顔も涙でぐちゃぐちゃ、洋服もぼろぼろでふらふらになりながら歩いていると、私は1人の男性に声を掛けられる。




