【第10夜② ~黒幕発覚と容疑者~】
現場に直行する私と凱。クラウディスは国王に呼ばれていてそこにはいない。狭い部屋に血を流して倒れている老人。昨日、笑顔で会話したことを思い出し、胸がいっぱいになる。
「朝食を届けに来た時にはもうすでに…。」団員が肩を落として報告する。
「そうですか…。彼の遺品はありますか?」
「いや、これといって何も残されてはいませんでした。」
「そう…。」部屋全体を見回す。日の光が時間とともに角度をかえ、さっきまで暗かった場所を明るく照らしていく。床も壁もクローゼットも、くまなくチェックして何もないことを確認し、また部屋を見回す。すると日の光のわずかな移動によって、さっきまで光の反射が見られなかった場所が、キラキラと光っていることに気づく。
『何だろう?』近づいてみてみると何かがある。私はそれをそっとポケットに入れて、
「確認終わったので、私は出ますね。この後皇子が来られるでしょうから、今後のことよろしくお願いします。」そう衛兵に告げて、彼の遺体の前でお祈りをして部屋を出る。
私と凱は、すぐさま部屋に戻り、さっきのものを取り出す。それは、真っ黒な石の埋め込まれたロケットペンダントだった。
「あれ?このペンダント、お父様のペンダントだけど…、なぜこの人が持ってるんだろう。」私が疑問に思って言うと、
「何か間違いじゃないのか?」凱もそんな事あるわけがないと、冷めた感じで言うので、
「だって、これ素敵だなと思って、そのうちもらおうと思っていたものなんだもん。」私が少しムキになって言うと、
「そう…なのか?まあ、中を見てからだな。」と開閉部分を静かに開けてみると1枚のメモが入っている。まさか!と思い開いてみると…、
『昨日はお話しできて嬉しかったです。少しだけ思い出したので書いておきます。
[特徴:騎士団の甲冑で武装 長髪 切れ長の目 濃い紫の瞳 長身 ベージュの髪 目元のほくろ]』
はっと顔を見合わせる私と凱。これは睨んでいた人物の特徴そのものだった。
「これ…。」
「ああ、予想通りだ。」冷静な凱。
「でも…、そうであってほしくなかった…。」その紙を見ながら自然に涙があふれる。
1つ1つの特徴を確かめながら、今まで一緒に過ごしてきた『騎士団長ロイ』との思い出にふける。妹のように可愛がってくれたロイ。どんな時も私の話に耳を傾けてくれた。どんな時も守ってくれた。どんな時も民を優先としてきた。そんな彼がなぜ…。
この事実を簡単に受け止めることができず、動揺している私たちのもとに、体調を崩して寝込んでいたはずの莉奈がやってくる。
「あら、2人で何をやってるのかしら?」泣いている私の顔を、莉奈は疑いの目で見ながら続ける。
「ねえ、凱?王宮から盗まれた魔導書の件なんだけれど…、見つかったって知ってる?」
「え?魔導書が?」凱が隠したはずの魔導書だとしたら…、と急に不安になる私。
「そう。それもどこから見つかったと思う?」莉奈は、にやっと笑って言う。
「…。」凱は何も答えない。その様子を見ながら、
「話せないわよねえ…。話せる訳がないわよね。だって…、あなたの部屋から見つかったんですもの。国王とクラウディスは、今までの拉致事件も魔導書紛失も…、今回の異国の老人の殺人も、何もかもあなたの仕業じゃないかと疑ってるわ。」
「え?なにそれ?」私はあまりの出来事に声が裏返り、それ以上声を出すことができない。
凱は小声で呟く。
「はめられたか…。」




