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確固たる思い~最愛の家族を守るため~②

【私の前世…実際今からいくつ前かは忘れてしまったけれど、私華那はナータンのある貧しい家で生を受けた。


 父は日雇いで稼ぎ、母は朝から晩まで、近くの工場の食堂で調理の仕事をしていた。工場主が理解のある人で、今でいう託児所を併設し、母は乳飲み子の私を連れてこの工場で働いていた。その託児所のおかげで私は10歳くらいまで、同じ環境のたくさんの子供たちと寂しい思いをせずに、遊んだり、勉強したりすることができた。


 家は貧しいながらも両親の愛情は深く、私は満たされていた。


 しかしある日、この工場主の娘で私と同い年くらいの子が託児所に現れる。見たこともないような素敵な洋服や靴、そしてボディーガードも引き連れ、その女の子は託児所に足を踏み入れたのだった。


【お姫様みたい!!!】


 周りの子供たちはまるでおとぎ話の主人公でも見ているかのような羨望の目で彼女を見ている。私も言うまでもなく、そのうちの1人だった。


 彼女の周りだけ流れる空気が違っているように感じる。彼女はにこっと笑い、


「ごきげんよう。」とにこっと笑い、一礼だけして、部屋を出て行った。


 その後の私たちの興奮は例えようがないほど…。特に女子は彼女が来ていた洋服、持っていたバッグ、そして履いていた靴、髪型まで全てに関して、可愛い!素敵!うらやましいね!と騒いでいる。


 そんな状況の中、確かに私も彼女の全てが素敵だったことは認めていた。しかし、


【私の家にも彼女の両親が持つ財力があったら、彼女以上にもっと素敵になれるに違いない。なんで私はこんなに貧乏で、みじめで、哀れな生活をしているんだろう…。悔しい、彼女が羨ましい、全てを持っている彼女が憎い】と腹の底では嫉妬と妬みの感情が渦巻き始めていた。


 そんな感情に吞まれている私は、友達の輪には入れるはずもなく、1人悶々と自分はなぜこの家に生まれてきたのだろう、お金がたくさんある家に生まれたかったと考えていた…。


 家に帰ってからも、その思いを引きずり、お金は無いながらに幸せだと感じていた家に、何とも言えない嫌気を感じ始めた。


【私の家はなんでこんなに貧乏なんだろう。もし私が彼女の家に生まれていたら、なんでも手に入る、夢みたいな素晴らしい生活を送っていたに違いない。そうに決まっている。】


 彼女の訪問以降、ずっとそんなことを考えていた。


 そんな中、私の誕生日がやってきた。今までの誕生日は、両親が一生懸命汗水たらして働いて、自分の為に買ってくれたプレゼントに、ただそれだけで満足していた。


 しかし、私はあの日、上を知ってしまった…。


 私の両親は私にこんなものしか用意できないのか…と、



「こんな安もんいらない!もっと素敵なものが良い!」


もらったプレゼントを床に投げつけ、家を出ようとドアを開ける。すると、目の前に、スーツを着た男たちが4.5人立っていた。私は驚き、そのまま家の中に戻るが、彼らの様子にただならぬ空気を感じ、自室でその様子をのぞくことにした。


「こちらの交換の希望は変わっておりません。」スーツの男が言う。父はそれに対し、


「この年齢まで家族として育ててきたんだ。そう簡単に、はいそうですか。とは言えない問題だろう。」


怒りに満ちた顔で答える。


部屋で息をひそめながら状況を見ている私の目の前で何かとんでもないことが起こっていることは理解できる。だが、何の話か分からない。ただその緊迫した状況に鼓動が速くなっていくのだけは分かる。


まさか私が聞いているとも知らない母が、父の言葉に追い打ちをかける。


「あなた方はお金で全て解決できると思っているんでしょうが、私たちにはお金で変えられない、一緒に過ごした大切な時間があるんです。あの子はどうあっても私たちの子です。お引き取りください!」


そう言い放って2人は、家のドアをピシャっと閉める。


 男たちを家から追い出した2人はため息をつき、その場に肩を落として座りこんでしまう。


「どうしたものか…。」ため息交じりに父がぼそっと呟く。


私には、その時何となく自分の考えが核心をついているような気がしていた。




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