確固たる思い~最愛の家族を守るため~①
いつものように出勤する際、通勤バッグを置いて靴を履こうとしたその時、バッグが倒れ、中に入っていた手帳や書類が雪崩出てしまった。私は手伝おうと手帳を持った時に彼の手と触れ、それに驚いた彼がその手帳を離してまた床に落としてしまう。その際、中に入っていた写真が一枚、床にはらりと落ちる。
私がそれを拾おうとするが、その写真の人物に気付き手を止める。彼は私がそれに気づいたのを知り、慌てて私の手から奪って鞄の中に入れる。私はすかさず、
「その写真…。」と言いかけると、彼は真っ赤になった顔を隠すようにして黙って家を出てしまった。
私は玄関にしゃがみ込む。
私の顔もおそらく真っ赤だっただろう。
なぜなら、その写真は私たちの結婚式の写真だったのだ。ウェディングドレスを身に纏い、穏やかに微笑んでいる私の姿がおさめられ、友達がくれたアルバムの中に確かに一枚抜けている箇所があったのは覚えているが、おそらくそれはこの写真だったのだろう。
それに気づいてからの1日は夢と地獄の往復列車に乗っている気持ちだった。
実際の所、私は結婚当初から彼に大事に思われていたのかもしれない…。そう思うと夢心地でいられる。
しかし、私は彼の塩対応から、何1つ彼に歩み寄ることなく、勝手に卑屈になって、絶望すら感じ、他の男と不倫の日々を過ごしていた。
こんな私が幸せになって良いはずはない。
百歩譲って、もし彼が不器用で、私への歩み寄りに戸惑っていたとしても、私も歩み寄らなかったのだから、私はそこを責めることなどできない。でも、正直ドキドキしている自分もいる。私は1日中考え、そして決心する。
【今夜彼に拒まれたら、私はここを出ようと。】
翌日の朝、私は結婚して初めて夫の隣で目覚める。彼はすでに起きていたようで、目を開けると優しく私に微笑みながら、
「おはよう。」と言って、恥ずかしそうに笑いながらも慣れない手つきで私の頭を撫でながら私の唇に不器用なキスをする。
私はこの日、初めてこの家での自分の居場所を感じることができた。
それからは夢のような日々を過ごした。もちろん、幼馴染との裏切りの日々は償おうにも償いきれない。だからこそ、私はラルスの為にできる事はなんでもしようと思った。
ラルスが私の元に帰ってきたくなるように、私の誠心誠意を込めて…。私の態度が変わってから、ラルスの態度も激変した。
これでもかというほどの私への溺愛ぶりを見せ、私はこの上なく幸せだった。
私は空白の時間を埋めるかのように、お互いを思いあう時間を過ごし、毎晩のようにお互いを求め合った。
それから半年経ってからの事、私たちに天使が舞い降りる。
そうそれがティアナだ。
そんな最愛の娘を救出すべく、今、私は戦おうとしている。
絶対に負けない…。なぜなら、私にはラルスとティアナへの愛があるから…。愛する者の存在が私を強くする。どんなことがあっても、必ず守り抜く。
過去を振り返り、最愛の家族を守るため、私は全身全霊をもって華那と戦う。
そして再び質問を始める。
「あなたは前回の戦いから、自分のしてきた事に対する心からの謝罪をしていないわよね?
その場を収めるため、ただ頭を下げた…。それは本当の謝罪って言えるのかしら?
まさか自分の子供たちに復讐されるなんて思ってなかったから、それはそれは焦ったでしょうけど…。
でもだからと言って許されることではないわ。今この場で心からの謝罪をしなさい。
でないと、もう話す機会もなくなるかもしれないから…。この後絶命するあなたの運命から考えるとね…。」
そう言うとレティシアは、臨戦態勢を取る。
華那は、その言葉に一瞬ひるんだものの、
「言わせておけば、知ったような口を…、私がどんな思いでここまで生きてきたのか、何も知らないあんたが偉そうに…、私はあんたみたいな、世間知らずお嬢様みたいなのが一番世の中で嫌いなんだよ!
ぬくぬくと何の不自由も無く生きてきて、それで人に対してマウントとるみたいな。
こっちこそ、あんたのその口、2度と開かないようにしてやるわ。覚悟しな。」
華那はそう言うと目の前に闇を作り出し、その中にレティシアを吸い込もうと唱えはじめる。
しかし、私の石を持ったレティシアは、それくらいの攻撃ではびくともしない。軽くその闇に手をかざし、念じただけで撃破し、一瞬で華那の懐に入り、頭を抑える。そして、
「さあ、ここで自分の犯した数々の罪を皆さんにもしっかりと見てもらいましょう。」レティシアはニヤッと笑って続ける。
「そして…、その非道な行いの1つ1つ全てを、あなたの子供たち閃と朔に謝罪しなさい!」そう言い放った彼女の表情はさっきとは打って変わって、怒りに満ち溢れ険しいものになり、すぐさまレティシアはさらに術を唱え始める。
すると、華那の過去が、この戦場にいる者、アースフィアにいる私と凱、そして別の戦場で戦う仲間たち、そしてラーニーと朔の脳内にも流れていく。
その間華那は気を失っているのか、ピクリとも動かない。




