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不倫~超えてはならない一線を…~

ラルスは自分以外に全く興味のない人だった。自分の世界でのみ生きているような人。


 結婚前に何回かデートをしたが、彼は私の目を見ることなど一切なく、自分から言葉を発することもなかった。


そして、その行動が女性に慣れていない、不器用な人の行動とは違い、興味のない人への素の行動であるかのように見えたこと、一方自分以外への行動は自信に満ち溢れた振舞いのように感じられたので、ラルスという人言は自分に興味のかけらもない、自分との結婚を望んでいないのだと確信し、私は失望したのだ。


それに加えて、私にそう思わせたのには、ラルスの美しい容姿が拍車をかけていたのは言うまでもない。


こんな美しい男に限って、女性経験が無いとは思えない。そんな男が、ここまで自分に対して素っ気ない態度をとるのは、自分に興味が無い…ただそれだけの事なのだと…。


しかし私はその事実を知りながらも…、彼との結婚を選ぶことを決めた。


ただ生まれてからずっと大切に育ててくれた愛する両親を喜ばせるためだけに…。


だがそれから数か月経って、私は衝撃の事実を知る事となる。


この結婚を両親が彼の意向、私の意志を無視し、何が何でもとゴリ押ししてまで取り決めたというのだ…。知らされていなかった我が家の返済不可能なまでに膨れ上がった借金の為に、私は両親の単なる駒に化したことを思い知らされたのだった。


私はさらに絶望のどん底に落とされたような気持ちになっていた。


「愛の無い結婚」を無償の愛を与えてくれていると思っていた両親から強要された私の心が壊れていくのにそう時間はかからなかった…。


政略結婚とは割り切ってはいたが…。愛する両親から裏切られたと感じた私はこの世から消えたいとまで思うようになっていった。


※※※


そしてその直後に事は起きた。


幼馴染が家に尋ねてきたのだ…。


私と彼は家が隣で小さいころからずっと一緒だった。そんな彼と、思い出話や昔の恋バナで盛り上がるのはごく自然な事だった。


 それが…、そのうち、お互いの結婚生活について不満を言い合うようになり…、虚無感の塊のようになっていた私が超えてはならない一線を越えるのは、いとも簡単な事だった。


彼と禁断の一夜を共にしてしまったのだ…。


とは言え、私に後悔はなかった。自暴自棄になった私はそれでいいとさえ思っていた。


 夫は自分に全く興味がなく、家にもなかなか帰ってこない。話しかけても返ってくる言葉は、せいぜい一言。両親も顔を合わせれば、そんな相手との子供を早く作れとプレッシャーをかけてくる。


 私を本当に理解してくれるのは、幼馴染しかいないと…。


不倫は人の道にあらずと、不倫をする人を有り得ないと思って生きてきた自分がどっぷりその沼に落ちていく事を簡単に許してしまったのだった。


私と彼はその禁断の密会を心から楽しんだ。秘密の共有は世の倫理感という正義から私たちを解放し、そしてその緊張感とスリルを超えた甘美な時間は、背徳感すら無きものにした。


しかし、悪行はいつかは露見するもの…。


彼の妻の清い思いが私たちの悪を両断する。


私たちは現実という狭く、息苦しい世界に引き戻され、その罪を償わなければならなかった。


しかしそれは至極当然の事…。そうであることは分かっている。


しかしながら、2人だけの禁断の世界が正義に見えている歪んだ精神状態では、それが悪に見えてしまう…。なぜ私だけがこんな目に合わなければならないのだと…。私は罪悪感に苛まれながらも、心の底では自分は悪くない、自分は単なる犠牲者に過ぎないのだと自分を正当化する事で自分の心を何とか保っていた。


それからというもの、廃人に化した私の時は、私の心と体を確実に壊していった。


※※※


しかし、否定、非難ばかりを受けている人に、思いやりや優しさという心のカンフル剤が投与されると人は劇的に変わるもので、私にはそれがラルスの一言だった。


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